ドクターにインタビュー
vol.23
[2]治療成績の開示は年齢別の採卵あたりの生産率(生児獲得率)が大切
林 伸旨 先生(岡山二人クリニック理事長)

[2]治療成績の開示は年齢別の採卵あたりの生産率(生児獲得率)が大切
- 細川)
- 医療機関から患者さんへの情報提供ということにおいて、まずは「自施設の治療成績をきちんと開示しなければなけない」というのが林先生の持論ですね。
- Dr.)
- はい。治療成績は、当然、公開すべきです。それも年齢層別の生産率、要するに実際に赤ちゃんが生まれている確率を公開すべきと思っています。
- 細川)
- 治療成績は年齢別の生産率で公表すべきと。
- Dr.)
- 妊娠反応が出たといっても、そもそも妊娠判定基準そのものがあいまいです。超音波で胎嚢確認して初めて妊娠といえますが、その後、流産に終わってしまっているかもしれないわけですから、治療成績は妊娠率だけでは不十分と思います。
- 細川)
- 確かに妊娠率だけでは患者さんには親切とは言えませんね。
- Dr.)
- また体外受精の治療成績の場合、胚移植あたりの妊娠率や生産率だけでなく、採卵あたりでデータを出すことが大事だと思っています。
- 細川)
- 1回の採卵あたりでの妊娠率や生産率を出すべきだと。
- Dr.)
- なぜなら、採卵できなかったり、成熟卵がなかったり、受精しなかったり、受精しても途中で分割が止まったりで、1つも移植できないケースもあります。その反対に、たくさん受精卵が出来て、移植して妊娠出産され、その後に凍結していた胚を融解移植して、妊娠出産されているケースもあるわけです。つまり、採卵したけれども移植までもいけなかったという人もあれば、1回の採卵で2人、3人のお子さんが生まれたという人もいるということです。
- 細川)
- なるほど。そうすると胚移植あたりの妊娠率だけであれば、プロセスの一部しか反映されていない不完全な治療成績になってしまい、患者さんに過大な期待を抱かせてしまいかねないというわけですね。
- Dr.)
- 岡山二人クリニックのホームページには治療成績として、採卵あたりの累積妊娠率、累積生産率を公開しています。
- 細川)
- その場合、1回の採卵で2人以上のお子さんを妊娠、出産された場合はどのようにカウントされているのでしょうか?
- Dr.)
- 2人以上のお子さんを妊娠出産されても、1妊娠、1出産として累積の確率を算出しています。
- 細川)
- 体外受精の治療のスタートであり、かつ、最も身体にかかる負担が大きいのが採卵なので、採卵に臨めば全体でどれくらいの確率で出産できているのか、年齢別にわかると患者さんにとっては最も参考になる治療成績ということになりますね。
- Dr.)
- これが最も重要な指標だと思っています。
- 細川)
- そうですね。
- Dr.)
- このような情報は、年齢と妊娠率や流産率のことも含めて通院をはじめる前に共有されておくべき情報であると思っています。妊娠前から知っておかなければならない情報は葉酸や風疹のことなど一杯ありますね。
ドクターに訊く
ドクターにインタビュー
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- 第24回 子宮内膜症と不妊治療
- 第23回 納得のいく選択や決断のための“情報共有”について考える
- 第22回 老化促進物質AGEをターゲットにした不妊治療
- 第21回 不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き
- 第20回 栄養と妊娠力
- 第19回 40代の不妊治療について考える
- 第18回 不妊治療の終結について考える
- 第17回 栄養と生殖機能の関連研究の第一人者に聞く
- 第15回 オーダーメイドの不妊治療とは?~あるべき不妊治療を考える
- 第14回 30代後半、40代からの不妊治療
- 第13回 不妊治療には、なぜ、“対話と物語”が大切なのか?
- 第12回 妊娠前からの食生活が子どもの一生の体質をつくる
- 第11回 妊娠しやすい思考ってあるのでしょうか?
- 第10回 クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識
- 第09回 ストレスフリーの不妊治療を目指して
- 第08回 体が本来持っている妊娠する力を取り戻す
- 第07回 酸化ストレスと男性不妊
- 第06回 質のよい卵を育むための生活習慣
- 第05回 不妊治療でなかなかよい結果が得られないとき
- 第04回 体外受精の後悔しない病院選びについて
- 第03回 ちゃんと知っておきたい薬のこと
- 第02回 妊娠しやすい夫婦生活とは?
- 第01回 不妊予防という考え方