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 妊娠しやすいカラダづくり No.1099               2024/7/21
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:男性の電子タバコ使用はパートナーの正常胚率を低下させる
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Jul. 2024___________________________________________

男性の電子タバコ使用はパートナーの正常胚率を低下させる
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男性の電子タバコ使用は、通常のタバコと同様に男性の生殖能力に悪影響を及ぼし、PGT-Aによる正常胚率を下げ、妊娠に悪影響を及ぼすことがヨーロッパ生殖医学会で発表されました。

電子タバコよりも紙巻きタバコのほうが、タールやニコチンなどの有害物質が多く含まれていることから、電子タバコは紙巻きタバコに比べて害は少ないのではないかとの意見があります。

そのため、電子タバコを通常のタバコの代替品として使用されるケースが増えているようです。

ところが、妊娠する力に関して言えば、電子タバコのほうが有害かもしれません。

◎どんな研究だったのか?
韓国の大学病院(CHA University ilsan Medical Center)で、2022年1月から2023年12月迄、PGT-Aを実施した体外受精患者の1,725周期の結果と男性パートナーの喫煙状況(禁煙、紙巻きタバコ、電子タバコ)の関係が調べられました。

男性と女性の平均年齢は、それぞれ40歳、38.7歳、合計4,796個の胚にPGT-Aが実施されました。

男性パートナーが禁煙していたのは1061周期、紙巻きタバコを使用していたのは370周期、電子タバコを使用していたのは294周期でした。

◎どんな結果だったのか?
全体では、男性が非喫煙者の正常胚率は27.3%、男性が紙巻きのタバコを喫煙している場合は23.6%、そして、男性が電子タバコを使用している場合は18.8%と、紙巻きタバコよりも電子タバコのほうが正常胚率が低いことがわかりました。

女性の年齢層別にみてみると、38歳未満の女性では、非喫煙者が38.2%、紙巻きタバコが37.4%,
電子タバコが29.9%でした。

38歳以上の女性では、非喫煙者が18.9%、紙巻きタバコが17.7%、電子タバコが11.6%と、電子タバコによる低減が顕著に明確になっています。

男性の年齢層を加味すると女性が38歳未満の場合、39歳未満の男性の胚の正常核率は、非喫煙者で39.0%、紙巻きタバコで38.3%、そして、電子タバコで31.7%でした。一方、40歳以上の男性では、非喫煙者で35.0%、紙巻タバコで32.6%、電子タバコで27.7%と、男性の加齢も正常胚率に悪影響を及ぼしていることがわかります。

これらのことから、胚の正常胚率を維持するためには、男性の禁煙が必須であり、電子タバコは紙巻タバコよりも妊娠に悪影響を及ぼす可能性があることがわかりました。

◎電子タバコも精子の質を低下させる
これまでの研究でも電子タバコが精子の質を低下させることが報告されています。

2012年から2018年にデンマークで徴兵検査を受けた男性に研究への参加を呼びかけ、登録した2008名の男性に喫煙習慣について、タバコ(従来型燃焼式)、電子タバコ、かぎタバコ(スナッフ)、マリファナ)の4種類の使用と頻度(毎日、時々、使用しない)を調査し、それぞれのタバコ別の使用頻度と精液所見(総精子数、精子濃度)、生殖ホルモンの関係を解析しています。

その結果、タバコを毎日吸う男性は吸わない男性に比べて、総精子数(140百万 vs 106百万)、精子濃度(44百万 vs 38百万)ともに有意に少なく、電子タバコでも、毎日吸う男性は吸わない男性に比べて、総精子数(137百万 vs 91百万)、精子濃度(43百万 vs 39百万)ともに有意に少ないという結果でした。

電子タバコも従来のタバコと同様、精巣機能に悪影響を及ぼし、精子の質を低下させる可能性があることを検証しています。

◎タバコから電子タバコに変えても無意味
電子タバコとは、これまでのタバコのようにタバコの葉を燃やして、煙を吸引するのではなく、タバコの葉や液体を加熱し、発生した気体を吸引するものです。

加熱による気体は、従来の燃焼による煙に比べて有害物質の種類や量が異なること、また、煙が見えにくいことから、健康への悪影響が軽いのではないかという認識が一部にあり、喫煙者に対して健康のために電子タバコに変えることを推奨するような風潮もあるようです。

ところが、電子タバコも従来のタバコと同じように健康への悪影響があることを示すデータが蓄積されてきているようです。

一方、電子タバコの精子への影響については、これまで動物実験で悪影響が示されているだけで、ヒトの精巣の働きへの影響については不明でした。

ただし、日本呼吸器学会は以下の見解を示し、非燃焼式・加熱式タバコも燃焼式タバコを同じように健康に悪影響を及ぼすことを示すデータが蓄積されてきていることを伝えています。
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/photos/hikanetsu_kenkai.pdf

電子タバコ使用の精子の質については、紙巻きタバコよりも害が大きい可能性があることが今回の研究で示されました。

禁煙が難しいことから電子タバコに変えても無意味で、パートナーの妊娠率をもっと下げることになるかもしれません。

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

電子タバコはタバコの害を低減するどころか、悪化させるかもしれません。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1099
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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◎発行部数
・自社配信: 1,579部
・まぐまぐ: 2,003部
・合計部数: 3,582部(7月21日現在)
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