ドクターにインタビュー

vol.22

[3]老化を促進するAGE(終末糖化産物)

神野正雄 先生(ウィメンズクリニック神野院長)

神野正雄

[3]老化を促進するAGE(終末糖化産物)

細川)
不妊も含めてほとんどの生活習慣病の根本的な背景には、インスリン抵抗性があることがわかりました。
Dr.)
インスリンの効き目が悪くなると、膵臓がインスリンを頑張って分泌しようとするのですが、次第に疲れてくるのですね。そうするとインスリンが十分に分泌されなくなり、まずは、食後の血糖値が上がり出します。
細川)
食後高血糖ですね。
Dr.)
そうです。食後高血糖だけであれば、空腹時の血糖値を測定する検査を受けても異常とは診断されません。
細川)
見逃されてしまうということですね。
Dr.)
はい、ところが、それでもAGEがつくられます。
細川)
老化促進物質と言われているAGEですね。
Dr.)
このAGEがやっかいないのは悪循環を招くところです。たとえば、AGEは活性酸素を増やし、酸化ストレスを増加させますが、そのことがインスリン抵抗性を悪化させ、インスリンの分泌する働きを低下させるのです。
細川)
なるほど。
Dr.)
インスリンの効き目が悪くなるとか、食後高血糖というのは単発的に起こるのですが、そこにAGEがつくられ、臓器や組織に沈着し、蓄積されると、どんどん悪くなっていくという悪循環に陥ってしまう、これがAGEの怖いところなのです。
細川)
老化を促進するメカニズムが理解できました。
Dr.)
AGEとは、まさに老化の本体なのです。つまり、老化とはこのAGEがたまることなのです。
細川)
卵巣が卵子の老化も進めてしまうのですね。
Dr.)
その通りです。全身の細胞では、インスリンの働きによって細胞内に糖を取り込んで、それをミトコンドリアで燃やしてエネルギーをつくっています。
細川)
私たちが生きていくうえで必要なエネルギーは、細胞質のミトコンドリアでつくられていると。
Dr.)
そうです。生殖も全く例外ではありません。たとえば、妊娠に際しては、卵を成熟させる、子宮内膜の着床のお膳立てをするのもこのエネルギーが使われるのです。
細川)
はい。
Dr.)
ところが、インスリンの働きが悪くなるとエネルギーをつくる効率が落ちてしまい、それぞれの細胞は本来の仕事ができなくなってしまいます。たとえば、卵巣であれば質のよい卵子をつくることができなくなるのです。
細川)
そこにAGEがつくられるようになると活性酸素が増え、卵子を悪くしてしまうという悪循環が起こってしまうのですね。
Dr.)
そうです。細胞内には古くなったミトコンドリアやたんぱく質のような、いわゆる細胞内のゴミを掃除する仕組みをもっているのですが、ここにもAGEができてしまうと、細胞内のお掃除機構がやられてしまい、ますます、細胞の老化が進んでしまいます。

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