ドクターにインタビュー

vol.24

子宮内膜症と不妊治療

桜井 明弘 先生(産婦人科クリニックさくら院長)

桜井 明弘

[5] 子宮内膜症の重症化予防が大事 ドクターからのメッセージ

細川)
子宮内膜症、特にチョコレートのう胞があるような場合、卵巣予備能を考慮しながら、それぞれの患者さんの状況に応じた選択肢を導くことが大切だということがよくわかりました。
Dr.)
不妊治療に限らず、子宮内膜症患者さんへのほとんどの治療法にはメリットとデメリットがあります。そもそも、子宮内膜症の唯一の根治療法、つまり、最も効果が高く、再発の恐れが全くない方法は子宮や卵巣の摘出です。
細川)
なるほど。
Dr.)
ところが、その後の妊娠の可能性もゼロになってしまいます。
細川)
全く相容れない治療法ということになりますね。
Dr.)
そのため、さまざまな観点から最善の方法を検討することが必須なのです。
細川)
よくわかりました。
Dr.)
ただし、一番いいのはチョコレートのう胞ができないことです。
細川)
そうですね。
Dr.)
そのためには内膜症が重症化する前に妊娠することです。現代女性は上の世代の方々と比べると食生活の欧米化などで明らかに栄養状態がよく、初経年齢が早まっています。その上、結婚年齢が上昇し、初産年齢が30歳を超えました。妊娠回数は少なく、出産は多くて3回くらいでしょう。さらに平均的な日本人の閉経年齢は52歳だそうです。これに対し、上の世代の方々は個人差があるものの、初経が遅く、まもなく結婚し、妊娠、出産をしました。出産の後、すぐにまた妊娠、と出産回数が多く、また閉経が早かったです。
細川)
はい。
Dr.)
こう考えてくると、現代女性と上の世代の女性では、最も異なるのが生涯の月経の回数です。「内膜症は生理のたびに悪くなる」が真であれば、現代女性のほうが内膜症にかかりやすい人生を送っている、といっても過言ではありません。
細川)
早く妊娠し、妊娠回数を増やし、月経回数を少なくすることが子宮内膜症の予防につながると。
Dr.)
現実にはいろいろなハードルがあるでしょう。ただ、まだ妊娠を考えていない世代の女性でも、チョコレートのう胞がみつかったらピルを飲んでもらいたいですね。
細川)
重症化予防ですね。
Dr.)
そうです。20代で2〜3センチのチョコレートのう胞だと何もしない、とか漢方だけ処方している産婦人科の先生もたくさんおられますが。
細川)
どのくらいの期間飲めば小さくなるのでしょうか?
Dr.)
2、3年はかかると思いますが、4、5年飲むと5cmくらいあったのう胞がなくなる(見えなくなる)人もいます。いつ結婚し、赤ちゃんを望むか分からないわけですし、治療にはこの様に時間がかかるので、早めに治療に取りかかって欲しいと思います。また、チョコレートのう胞はなくても、生理痛がある女性は、生理痛がない女性に比べて、将来、内膜症になる確率が高いという報告があり、生理痛があるならピルを飲むべきではないか、と言う考えにもなってきています。
細川)
とにかく、子宮内膜症にならない、もしくは、重症化しないように気をつけることが大切だということですね。
Dr.)
はい。
細川)
本日は貴重なお話をいただき本当にありがとうございました。

ドクターに訊く

ドクターにインタビュー