ドクターにインタビュー

vol.15

オーダーメイドの不妊治療とは? ~ あるべき不妊治療を考える

安部 裕司 先生(CMポートクリニック院長)

安部 裕司

【1】同じドクターが患者さんを診るということ

細川)
安部先生は、信頼して来てくれる患者さんに先生ご自身の目が行き届く治療を提供するということを最も大切にし、すべての患者さんを院長先生が診ておられるとお聞きしています。不妊治療では「ひとりのドクターの目が行き届く」ということがとても大切だということですね。
Dr)
そう思います。それぞれの患者さんの状況にあったオーダーメイド治療を行うのが当院の治療方針なのですが、オーダーメイド治療というのは、マニュアル化された治療ではなく、その患者さんのためだけの治療、言い替えると、その患者さんにベストと考えられる治療を提供することですね。
細川)
治療を提供する側ではなく、治療を受ける側にとってベストと考えられる治療だと。
Dr)
そうです。私が考える患者さんにとって何がベストかを考えられる治療とは、高い技術レベルで、最新の生殖医療であることは、もちろん大前提としてあり、かつ、患者さんの身体や心、そして、経済的に負担をかけずに、出来るだけ早く妊娠を目指す治療です。フレンドリーARTと呼んでいます。
細川)
患者さんの身体や心、そして、経済的に負担のかけない治療。
Dr)
そうです。そして、そんな治療を提供するためには、同じドクターが患者さんを診る必要があると、私は考えているのです。
細川)
なるほど。
Dr)
まず、患者さん、一人一人の状況を"よく知る"必要があります。患者さんについての情報が多ければ多いほど、情報の質が高ければ高いほど、治療の精度も高くなるからです。また、患者さんのことをよく知るということは、患者さんとの良好な関係を築くうえで、なによりも必須のことですからね。
細川)
そうですね。
Dr)
当然、患者さんの状況はカルテを見ればわかるわけですが、患者さんの状態は常に変化したり、デリケートなところがあったりして、検査結果の数値やカルテの記載だけでは伝えきれないことが、多々、あります。
細川)
なるほど。担当医がその都度変わってしまうと、患者さんについての情報の量や質が低下してしまうということですね。
Dr)
そうです。たとえば、超音波検査で卵胞の大きさをチェックする場合、卵胞の大きさが18ミリとか、20ミリとか言いますが、卵胞は実際には立体的な球形なのですが、超音波検査では断面を平面として観察することになります。また、卵胞の形は常に一定ではありません。そのため、その時々の卵胞の形や観察する角度によっては、卵胞の大きさが違って見えることがあるのです。そうすると、卵胞の大きさが前回の検査よりも小さく診断されることがあるのですね。
細川)
はい。
Dr)
担当医が変わると、超音波で観察された卵胞の大きさしか伝えられませんので、患者さんは、小さくなったかのように受け止めてしまい、混乱してしまうかもしれません。些細なことかもしれませんがとても大切なことだと思います。
細川)
実際、ドクターによって言うことが違うと、不安にかられた患者さんからの相談をいただくことがよくよくありあます。
Dr)
そうでしょうね。ところが、ひとりのドクターであれば、なぜ前回の検査時よりも卵胞の大きさが小さくなった(見えた)のかも含めて説明できます。
細川)
患者さんにとっては自分のことをよくわかってくれているというのは大きな安心材料になりますね。
Dr)
一事が万事、少しの行き違いで疑心暗鬼になると、不要な不安や心配を抱くことになってしまいかねません。
細川)
よくわかりました。

ドクターに訊く

ドクターにインタビュー