ドクターにインタビュー

vol.10

クラミジア感染症と不妊 ~検査と治療についての正しい知識

高橋敬一 先生(高橋ウイメンズクリニック院長)

高橋敬一

【4】クラミジアと不妊 ~よくある質問とその答え

クラミジア感染と不妊について、編集室に寄せられたご相談でよくあるテーマのものをピックアップして、高橋先生にお答えいただきました。

クラミジア感染の検査

Q)
膣の分泌物を採取した場合と血液検査で、検査法による精度の違いはありますか?
Dr.)
検査の"精度"ではなく、"目的"が違います。膣の分泌物を調べるのは、抗原を調べる検査で、現在、クラミジア菌がそこにいるかどうかを調べることになります。一方、血液検査はクラミジアの抗体を調べる検査で、過去にクラミジアに感染してことがあるかどうかを調べることになり、それぞれの検査の目的が違うのです。

過去のクラミジア感染の影響

Q)
過去にクラミジアにかかったことがありますが、医師には完治したと言われました。妊娠を希望していますが1年間授かりません。過去のクラミジアが影響していることはあり得ますか?
Dr.)
十分にあり得ます。過去のクラミジア感染で卵管に癒着を起こしている可能性があるからです。まずは、子宮卵管造影検査を受けるのがよいでしょう。
Q)
クラミジア抗体検査で陽性がでました。いつ感染したものか分からないので薬を処方されました。子宮卵管造影検査では異常がありませんでしたが不安です。
Dr.)
抗体検査が陽性だったということは過去にクラミジアに感染したことがあるということです。ただし、抗原検査を行わなければ、現在、感染しているかどうかは分かりません。もしも、抗原検査で膣分泌物にクラミジア菌が発見されなくても、卵管にいる可能性は否定できません。そのため、これまでクラミジアの治療をしていなければ、感染している可能性があると考えて、治療しておくのは賢明な判断でしょう。

また、子宮卵管造影検査の結果は必ずしも絶対的なものではありません。子宮卵管造影検査は、造影剤の影を観察するという、とても簡単な検査なので、卵管が詰まっているかどうかや大きな癒着があればわかるのですが、軽度の癒着まではわからないからです。因みに子宮卵管造影検査で異常がなかった人に、なかなか妊娠しないので、腹腔鏡検査を行うと30~40%の人に軽度の癒着や初期の子宮内膜症がみつかるというデータがあります。

ですから、子宮卵管造影検査は、簡単な検査で卵管が通っているかどうかが確認できて、その後の妊娠率も高まるという治療効果もありますので、不妊検査の初期に実施すべき重要な検査ではあるのですが、精度には限界があるということも理解しておくべきです。

たとえ、子宮卵管造影検査で異常がなくても、過去のクラミジア感染の影響が疑われる場合は、腹腔鏡でより精度の高い検査を受け、もしも、癒着がみつかった場合は癒着をはがす治療を施して、妊娠を目指すか、もしくは、体外受精にチャレンジするという選択肢があります。

クラミジア感染と不妊

Q)
クラミジアに感染すれば、どれくらいの確率で不妊の原因になるのでしょうか?
Dr.)
これは難しい質問ですね。まずは、クラミジアの症状にもよります。もしも、下腹痛などの重症の症状があれば1回の感染で50%くらいの確率で不妊の原因になるでしょう。

ただし、一般的には、1回の感染で不妊症になる確率は約20%ずつ高くなっていくと考えてもらってよいと思います。つまり、初めての感染で不妊の原因になることは少なく、感染を繰り返すことで卵管周囲の癒着にまで進行するというわけです。ほとんど症状がでないわけですから、本人も何回かかっているのかがわからないままに進行し、不妊の原因になってしまうのです。

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