ドクターにインタビュー

vol.07

酸化ストレスと男性不妊〜男性不妊のセルフケアを考える

辻 祐治 先生(恵比寿つじクリニック院長)

辻 祐治

【1】酸化ストレスとは?

細川)
男性不妊には酸化ストレスの増加が関与しているとの報告が、数多くなされています。 まず、そもそも、酸化ストレスとは?というところからお聞きしたいと思います。
Dr.)
「酸化」とは、実はとても身近に起こっている化学反応なのです。 たとえば、リンゴを切ったままにしておくと色が変わったり、鉄が錆びついたり、 油が古くなると黒ずんだりしますが、すべて「酸化」現象で、 いずれも、空気中の酸素に触れることで起こります。 リンゴが変色するのはリンゴに含まれるポリフェノールが、 鉄が錆びるのは鉄が、油が変色するのは油の中の不飽和脂肪酸が、 それぞれ、酸素と触れて、反応する※ことで起こります。

※酸化反応:ある原子や分子から電子が1個なくなる(奪われる)ことを酸化といい、反対に電子を1個もらうことを還元と言う。

細川)
酸素と反応するので、「酸化」というのですね。
Dr.)
そうです。 酸素は物質を酸化させる力があるのですが、体内で発生する「活性酸素※」は、 空気中の酸素よりもはるかに強い力で体(細胞)を酸化させます。 その結果、さまざまな障害を引き起こすのです。 酸化による細胞の損傷は、老化の主な原因※であると考えられています。

※活性酸素:毒性の強い4種類の不体電子を持つ原子または分子(フリーラジカル)のこと。不安定な状態で他の原子や分子と反応して電子を奪い取る、すなわち、酸化する力が強い。

※老化の原因:老化の原因と考えられているのは、遺伝子プログラム説や分子障害説があって、分子障害説で最も有力なのがフリーラジカル説。体内の活性酸素が酸化ストレスを生み出し、体を酸化させてしまうことが老化の原因とする説です。

細川)
酸化が老化を招き、その犯人が活性酸素であると。 ところで、活性酸素はどのようにして発生するのでしょうか?
Dr.)
私たちは、細胞内のミトコンドリアで、 食べて取り入れた炭水化物や脂質から、酸素を使って、 生きていくうえで必要なエネルギーを取り出しています。 まずは、このエネルギー産生プロセスで活性酸素が発生します。
細川)
体内では常に活性酸素が発生しているということですね。
Dr.)
そうです。ただし、活性酸素が発生するのは、 エネルギー産生プロセスからだけではありません。 たとえば、ストレスをはじめとして、紫外線や電磁波、放射線、大量の飲酒、喫煙、高温、 大気汚染物質、除草剤、食品添加物、激しい運動、睡眠不足、病原菌が侵入したときなどに、 大量の活性酸素が発生します。
細川)
活性酸素の発生源は多岐に渡るのですね。
Dr.)
その一方で、常に発生する活性酸素を すぐに無毒化する仕組みも、私たちには備わっています。 その中心は抗酸化酵素で、スーパーオキシト・ジスムターゼやカタラーゼ、 グルタチオン・ペルオキシダーゼの3つが代表的です。 また、抗酸化作用のある物質が数多く存在します。 たとえば、ビタミンCやビタミンE、グルタチオン、リポ酸、カロテン類、 コエンザイムQ10、ポリフェノールなどがあります。
細川)
活性酸素の攻撃から身を守る、抗酸化システムというわけですね。
Dr.)
酸化ストレスとは、活性酸素の酸化する力と身体に備わった抗酸化力とのバランスが 崩れた状態を言うのです。 活性酸素が大量に発生してしまったため、或いは、抗酸化力が低下してしまったため、 その結果、活性酸素の害を消去しきれなくなってしまった状態です。 つまり、活性酸素の酸化力が抗酸化力を上回った状態のことを言います。
細川)
よく分かりました。

ドクターに訊く

ドクターにインタビュー