ドクターにインタビュー

vol.23

[6]"卒院証"が意味すること

林 伸旨 先生(岡山二人クリニック理事長)

林 伸旨

[6]"卒院証"が意味すること

細川)
林先生が中心になって取り組んでこられたシステム構築の真意について、私なりに理解できました。
Dr.)
現在では、スタッフも情報だけでなく、仕事に対する高いモチベーションも共有できるようになったと自負しています。
細川)
はい。
Dr.)
妊娠率・生産率から逃げているわけではなくて、やはり、高い妊娠率を目指すには、そこに結びつくプロセスを大切にしようということです。
細川)
高い妊娠率はきちんとしたプロセスがあればこそだと。
Dr.)
妊娠して卒院される患者さんもいれば、妊娠できないままに通院をやめられる患者さんもいます。私たちは、そういう人たちにも"卒院証"をお渡ししています。
細川)
"卒院証"ですか?
Dr.)
はい。患者さんはそれまで望妊治療を頑張って続けてこられた。たとえ、妊娠出産という結果が出なかったとしても、なんていうか、それは、「負け」や「失敗」といったものではないし、ましてや、無駄な時間や経験だったわけでもないと思うのです。
細川)
はい。
Dr.)
そうではなく、お互いに同じ目標をもって頑張ってきた、それまでの患者さんの努力に対しての敬意、そして、私たちの医療が残念ながら成果に結びつかなくて申し訳ないという気持ちとして、"卒院証"をお渡ししています。
細川)
あー、なるほど。
Dr.)
もちろん、養子縁組や卵子提供といった考えもありますよといった情報提供もしてはいますが、やっぱり、治療はもうここで区切りをつけたいと思いますと言っていただける関係はとても大切だと思うのです。
細川)
もしかしたら、"卒院証"によって患者カップルも次のステップに目をむけやすくなりますよね。
Dr.)
職員にとっても患者さんに妊娠出産してもらいたいという思いで、医療を提供してきたわけですから、区切りをつけることは同じように大切なことだと思います。そのため、"卒院証"という形にしてあらわそうということなのです。
細川)
患者さんにとっても、スタッフの方々にとっても意味のあるものになるわけですね。
もちつき1-1.jpg
Dr.)
私はそれも「私たちが提供した医療に対しての信頼」の一つの表現だと思っているのです。もちろん、患者さんにとっては満足ということにはならないと思います。ただ、そういった医療提供でありたいと、私は思っています。(右の写真は、毎年、通院&卒院カップルや子供たちと行っているもちつき大会の風景)
細川)
満足よりも信頼、ですね。
Dr.)
情報共有化システムや診療支援システムというのは信頼いただける医療を提供するためのものであって、それは運用されてはじめて意味があるし、そして、それはその時々で常に変わっていくものであって、導入したらそれでお終いというわけではないのですね。
細川)
いろいろと貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。

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