ドクターにインタビュー

vol.21

[5]不妊症と不育症は同時に治療されるべき

松林秀彦 先生(リプロダクションクリニック大阪院長)

松林秀彦

[5]不妊症と不育症は同時に治療されるべき

細川)
これまでのお話で私自身の認識が相当あらたまりました。
Dr.)
患者さんもそうですが、不妊症と不育症の境界、すなわち、本来的な妊娠のはじまりということを説明すれば、たいていは理解してもらえます。
細川)
なるほど。私たちも、良好胚の移植を繰り返しても妊娠に至らない、あるいは、体外受精で化学流産を繰り返しているというケースをよく見聞きしますが、真の不育症という観点で言えば、すくなくとも検査は受けておくべきですね。
Dr.)
はい。漫然と同じ治療を繰り返すだけというのはよくないですね。
細川)
ただし、現実の問題として、患者さんのほうで不育症検査の必要性を感じ、希望されたとしても、たいていの不妊症の先生は不育症に対する理解が乏しいのが現実だと思います。
Dr.)
そうですね。また、体外受精で流産が続いた場合も、不妊症の先生は不育症のことがよくわからないので、普通は不育症の専門医にかかることを勧められることになると思います。
細川)
であれば、化学流産、ましてや、着床後妊娠判定までの「潜在的化学流産」の疑いという段階では、患者さんが希望される場合は、自らが動いて、不育症外来を受診する必要がありますね。
Dr.)
そうせざるを得ないですね。その上、たとえ、不育症の専門医に診てもらっても、不育症の先生は不妊症のことはよくわからないので、不妊治療は、また、不妊症専門クリニックに戻って治療を受けなければなりません。
細川)
それが現実ですね。
Dr.)
ただ、2つの医療機関にかかるという煩わしさ云々よりも、本来、不妊症と不育症はつながっている疾患であるわけですから、連動した治療、すなわち、不妊症と不育症の治療は同時に受けるのが望ましいわけです。
細川)
ただ、現実にはそれが可能な施設はリプロダクションクリニック大阪しかありませんね。
Dr.)
そういうことになります。当院では不育症だけの患者さんも受け入れています。それまで治療を受けていた不妊専門クリニックで凍結胚があるので、当院で不育症治療だけを受けておられるというケースです。凍結胚がなくなってしまった場合には、当院で不妊治療と不育治療を同時にお受けるようになる予定のようです。
細川)
そうなのですね。松林先生のように不妊症の専門家であり、不育症の専門家でもあるという先生がいらっしゃらないということですね。
Dr.)
ドクターにとって両方のトレーニングを受ける環境がありませんからね。
細川)
松林先生は慶応義塾大学の不育症チームにいらっしゃいましたからね。
Dr.)
慶応義塾大学は日本で初の不育症外来を開設しました。そこで、不育症の研究や臨床に携わりました。当時、不育症の年間の新患が1000名くらいこられていました。
細川)
当時はそこしななかったということですね。
Dr.)
そこから、出張先の東京歯科大学市川病院では、早くから体外受精を学ぶことになり、ラッキーにも凍結胚移植の日本で初の出産に立ち会うことができました。
細川)
はい。
Dr.)
そして、アメリカの留学先がIndiana州 Methodist病院の生殖移植免疫センターで、帰国後は東海大学医学部産婦人科で不妊症チームにいました。このように私は大学卒業後25年間を通じ一貫して、不妊症・不育症の診療・研究に携わってきました。
細川)
そもそも、リプロダクションクリニック大阪は、男性不妊と女性不妊が同時に診療できる生殖医療専門クリニックですが、不妊症と不育症が同時に診療できるクリニックでもあるわけですね。
Dr.)
その通りです。男性不妊と女性不妊では、男性と女性の違いがありますが、不妊症と不育症は同じ女性においてつながっている疾患ですから、同時に診療できることの意味合いは大きいと思います。
細川)
よくわかります。
Dr.)
さらに、当院では着床障害を専門とするドクターもいます。
細川)
男性と女性、そして、女性における一連の生殖医療が全てカバーされているということですね。

ドクターに訊く

ドクターにインタビュー