ドクターにインタビュー

vol.21

[6]サポーティングファティリティ

松林秀彦 先生(リプロダクションクリニック大阪院長)

松林秀彦

[6]サポーティングファティリティ

細川)
リプロダクションクリニック大阪では、「不妊治療」ではなく、「妊娠治療」と言われている意味がよくわかりました。男性不妊と女性不妊が同時に診療できるだけでなく、女性におけるひとつながりの診療、すなわち、不妊症、着床障害、不育症と、全てカバーし、妊娠、出産を目指しましょうということなのですね。
Dr.)
その通りです。不妊症でこられた患者さんに不育症検査で異常がみつかると、「私は不妊症だけでなく、不育症もあるのですね。」と落胆されることがありますが、決して、別々の疾患があるわけではなく、健康な赤ちゃんの出産に至るひとつづきの流れの中で、途中で障害になり得る要因がみつかったということでしょう。
細川)
そうですね。
Dr.)
妊娠、出産できるか、できないかは、男性側、女性側のさまざまな条件や要因によります。100組のご夫婦がいれば、100組とも、要因やその程度が異なるのが普通です。
細川)
そうですね。それらの要因の内容や程度によって、妊娠できるかどうか、そして、妊娠がどこまで続くかどうかが、決まってくるというわけですね。
Dr.)
そうです。そして、悩ましいのは、最先端の医学でも、まだまだ、わからないことだらけだということです。
細川)
はい。
Dr.)
ですから、それぞれのご夫婦の考えられ得る要因はすべて潰していくしかないわけです。
細川)
なるほど!
Dr.)
そんな中で、私たちを信頼して、頼ってこられるご夫婦に、1日も早く、確実に妊娠、出産してもらうには、女性しか診療できませんとか、あるいは、不妊のことしかわかりませんとか、不育のことしかわかりませんとは言えないわけです。
細川)
はい。
Dr.)
もっと言えば、私たちが心がけているのは、一つの方法、一つのことに固執しないということです。もしも、その方法がふさわしい患者さんであれば妊娠、出産できますが、あわない患者さんは、いくらチャレンジしても救えないからです。
細川)
そうですね。
Dr.)
たとえば、自然周期しかやらないとか、刺激しかやらない、全て胚盤胞まで培養するとなると、救える患者さんと救えない患者さんが出てきます。
細川)
はい。
Dr.)
よくエビデンスがあるからと言われますが、それは特定の条件のもとで統計学的に最も確率が高いという意味であって、決して、一人一人の患者さんにとっての最適な治療であるとは限りません。
細川)
はい。
Dr.)
また、それらの要因には肥満や喫煙、栄養素の欠乏などの生活習慣も含まれますから、医療提供者側の努力だけでなく、ご夫婦の努力や互いの協力も大切です。
細川)
先生が最新の情報をブログで発信されていらっしゃるのもそのためなのですね。
Dr.)
そうです。ただし、患者さんにも、われわれ、生殖医療に携わる者にも、できることは限られています。卵子や精子をよくしたり、つくりだしたりすることができないからです。
細川)
はい。
Dr.)
であればこそ、取り出した大切な卵子と精子を最大限有効に使って、一番良い状態で一緒に妊娠を目指していきたいと考えています。
細川)
それが、考えられ得るすべてのリスクに対応するということですね。
Dr.)
「サポーティングファティリティ」は当院のキャッチコピーですが、私たち医療者には「妊娠へのお手伝い」しかできないのです。だからこそ、医療者とご夫婦が全員で協力していくことが大切になります。
細川)
よくわかりました。本日は、貴重なお話をお伺いできて本当によかったです。ありがとうございました。

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