ドクターにインタビュー

vol.03

ちゃんと知っておきたいお薬のこと

越田光伸 先生(越田クリニック院長)

越田光伸

【3】排卵誘発剤の長期的な副作用って?

★排卵誘発剤を長く使うと卵が早くなくなってしまいませんか?

細川)
まずは、排卵誘発剤を長期間使うと、卵が早くなくなってしまわないかというものです。 排卵誘発剤の長期使用が更年期を早めてしまうなんてことがあるのでしょうか?
Dr.)
結論から言いますと、そのような心配はありません。 その理由を説明しましょう。 まずは、脳(脳下垂体)から卵胞刺激ホルモン(FSH)というホルモンの働きかけを受けて、 卵巣内の未成熟な卵胞(原始卵胞)の中から、数個から数十個の卵胞が成長を始めます。
細川)
はい。
Dr.)
通常、その中の1個(主席卵胞)だけが成熟し、排卵します。 そして、その他は自然に消滅していきます。 排卵誘発剤は、これら主席卵胞以外の消滅してしまう運命にあった卵胞に働きかけて、育てるのです。
細川)
なるほど。 排卵誘発剤は、既に目覚めた卵胞に働きかけ、育てるわけで、 眠っている卵胞を新たに起こしているわけではないのですね。
Dr.)
その通りです。 ですから、いくら排卵誘発剤を長期間使ったとしても、卵胞が早くなくなってしまうことはなく、 不妊治療のせいで、更年期が早くやってくるなんてことはありません。
細川)
なるほど。 でも、消滅してしまうのはよくない卵胞だからということはないのでしょうか?
Dr.)
そんなことはありません。 主席卵胞に選ばれるのは、卵の良し悪しではなく、たまたま、偶然なのです。
細川)
よく分かりました。

★排卵誘発剤とガンの発症リスクとの関係は?

細川)
次の質問は、排卵誘発剤を使うことで、婦人科系のガンとの関係についてです。
Dr.)
エストロゲンが過剰になることでリスクが高くなる可能性があるのは乳がんと子宮体がんです。 ただし、これまでの研究では、不妊治療で排卵誘発剤を使うことで、 それらのガンの発症リスクが高まるというようなデータは出ていません。
細川)
なるほど。
Dr.)
ですから、それほど神経質になることはないと思います。
細川)
分かりました。
Dr.)
乳がんや子宮体がんに限らず、がんの発症は一つの要因によるものではなく、 遺伝や生活習慣など、さまざまな要因が複合的に影響を及ぼすものです。
細川)
はい。
Dr.)
乳がんや子宮体がんは、年齢とともに、発症リスクは高くなりますので、 定期検診を受けるなど、気をつけるに越したことはありません。
細川)
よく分かりました。

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