精子DNA断片化率(DFI)は、原因不明の繰り返す流産に関連があるという報告は今までもあり、今回イタリアでも、その関連についてさらなる調査が行われました。
今回の研究は、2020年7月から2022年3月にかけて、イタリアのローマとミラノにある2つの大学病院で実施されました。
以下の3グループに属する合計211名の男性を対象とし、それぞれDFIを測定し、流産との関係が分析されました。
【症例群:37名】原因不明の早期流産を2回以上経験している女性の男性パートナー
【対照群A:100名】パートナーを妊娠させる能力のある男性(少なくとも過去2回、女性パートナーが正常な期間の妊娠を経験)
【対照群B:74名】パートナーを妊娠させる能力の低下した男性(12ヶ月以上避妊せずに性交を行っても妊娠に至らない)
結果として、DFIの値は対照群Aがもっとも低く(DNAが損傷している割合が少ない)、症例群と対照群Bでは明らかに高くなっていることがわかりました。
同様に、DFIが30%を超える男性の割合は、対照群Aには一人もいなかったのに対し、症例群では28%、対照群Bでは26%の男性でDFIが30%を超えていたとのことです。
以上により、流産を繰り返す女性の男性パートナーは、妊娠させる能力のある男性と比べ、DFIが高いことが示されました。
*精子DNA断片化率(DFI):精液中にDNAの損傷した精子が含まれる割合
コメント
この研究は、DFIの高い男性は、そうでない男性に比べて早期流産のリスクが高くなる可能性を示しています。
DFIとは、精液中に存在するDNAの損傷した精子の割合で、精子の質をはかる指標となります。
精子の質は卵子の質と同じように重要であり、DNAの損傷した精子は、胚の正常な生育にマイナスの影響があることがわかっています。
またDFIは通常の精液検査では調べることができないため、精液検査に問題がなくても、DFIが高くなっている場合があります。
精子のDNAが損傷する原因はさまざまあり、加齢のほか、酸化ストレス、精索静脈瘤、肥満、喫煙や飲酒といったライフスタイルなどの要因によって精子DFIが上昇することがわかっています。
男性の精子は卵子と違って毎日作り続けられるため、質の改善が可能です。
年齢や生活習慣に不安のある男性は、生活習慣の改善からはじめてみると良いかもしれません。