ナッツの摂取が精子の状態を改善する可能性

男性の妊娠させる力に影響を及ぼすもの

2024年03月12日

Adv Nutr. 2023; 15: 100153.

ナッツを毎日食べることで男性の精子の状態に良い影響を与えることが、オーストラリアのモナシュ大学による調査で示されました。

不妊におけるナッツの関与に関する仮説図
図:Adv Nutr. 2023; 15: 100153. Figure 4 を改変
ナッツに多く含まれるα-リノレン酸とオメガ3脂肪酸は、女性の卵胞液と男性の精子の細胞膜の脂肪酸組成を調節し、また抗炎症、抗酸化力を高めます。セレン、亜鉛、ビタミンE、ポリフェノールも抗酸化力を高めます。女性においては、卵胞液中の抗酸化力が高まることで、良好な卵子の産生や胚の発育にもつながります。男性においては、精子のDNAの損傷を抑えます。さらに、ナッツのタンパク質と食物繊維は、腸内環境を良好に、また血糖値を正常範囲にし、その硬い食感によって満腹信号が伝達され、体重増加を抑えます。ナッツによるインスリン感受性の向上は、女性の良好な卵胞発育や、月経周期の調節とも関連しています。



今までナッツ類には、オメガ3系脂肪酸や食物繊維、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどが豊富に含まれていることから、これらの栄養素が男性や女性の妊孕性(妊娠しやすさ・させやすさ)の向上に役立つ可能性があると報告されています。

そこで、オーストラリアのモナシュ大学の研究チームが男女のナッツ摂取と生殖機能の関係を調査しました。

研究チームは過去のデータベースから、18~49歳の男性や女性を対象とし、ナッツの摂取と妊孕能に及ぼす影響や関連を評価してい研究の文献を収集しました。

そのうち4つの研究から875人(男性646人、女性229人)のデータを抽出し、解析しました。

健康な男性を対象とした2つの試験(合計223人)を解析した結果、1日に60g以上のナッツを摂取すると、精子の運動率や生存率、正常形態率が改善されることが示されました。

また別の研究では、ナッツの摂取と、男性の従来の精子パラメータ、ARTの治療成績との関連は見られませんでした。

この調査では、健康な男性が毎日2回以上ナッツを摂取すると、精子の状態が改善される可能性が示されています。ナッツに含まれる栄養素の組成から、生殖能力の改善に役立つ可能性があることが分かりました。

コメント

今回の報告は、今までになされた研究から、ナッツと男性の妊孕性(妊娠させる力)に関する調査を収集し、解析したものでした。

その結果、多くの研究で、ナッツの摂取が精子の運動率、生存率、正常形態率が改善されることが示されていることがわかりました。
また今回の研究で示されている摂取の目安は毎日2回以上とのことです。

健康的な食事として知られ、男性の精子DFI(精子DNAの損傷率)を低下させるという研究結果も報告されている地中海食でも、ナッツは多く使われています。

朝食にヨーグルトに入れて食べたり、おやつに常備するなど、工夫して習慣的にナッツを摂取できるようにするとよさそうです。

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