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VOL.466 生活習慣病胎児期発症説が意味するもの

2012年05月20日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第466号  2012年5月20日発行

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 お子さんを望まれるカップルを応援します。

 なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
 ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
 い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
 視点で、毎週末、配信しています。


━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼今月の特集
生活習慣病胎児期発症説が意味するもの

▼ヤングのコーナー
カラダ、動かしてますか?

▼編集後記


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 今 月 の 特 集
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 生活習慣病胎児期発症説が意味するもの
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先週、「生活習慣病、胎児から調査・・・早大などが今月から」との見出し
で、妊婦の栄養状態と生まれた子どもの生活習慣病のなりやすさの関係を検
証するため、国立国際医療研究センターと早稲田大学総合研究機構は200
人の妊婦を対象とする調査を始めるとの報道がありました。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120509-OYT1T01478.htm

国立国際医療研究センターに通院する妊婦さんに、出産までの3回の血液検
査と食生活についてのアンケートで妊娠中の栄養状態を調べ、出産後、子ど
もの健康状態を成人するまで追跡調査し、子どもの生活習慣病へのかかりや
すさとの関係を調べるというものです。


◎生活習慣病胎児期発症説

このような大がかりな調査をを行い、妊娠中の栄養状態と子の出生後の健康
状態の関係を調べるのは、「生活習慣病胎児期発症説」を裏付けるためです。

生活習慣病胎児期発症説というのは、その名の通り、生活習慣病にかかりや
すい体質は胎児期、すなわち、生まれる前につくられるという考え方です。

日本では厚生労働省が、糖尿病や肥満、高血圧、高脂血症などの成人病を生
活習慣病と名付けました。そのため、これらの病気は「毎日のよくない生活
習慣の積み重ね」によって引き起こされるものと理解されています。つまり、
病気にかかるのは、本人の責任、すなわち、自業自得だということですね。

ところが、今から20数年も前にイギリスの疫学者、ディビット・バーガー
は、「胎内の栄養状態が悪いと、子どもが大人になってから生活習慣病にか
かりやすくなる」という生活習慣病胎児期発症説を唱え、その後、多くの疫
学調査によって確かめられ、今や世界的に受け入れられつつあるのです。

母親の妊娠前からの栄養状態、つまり、本人の全くあずかり知らないところ
で、生活習慣病になりやすい体質になってしまうというわけです。

一方、日本では赤ちゃんの出生時の平均体重が減り続け、2500グラム未
満で生まれる低出生体重児の割合が増え続けています。

その原因として、日本人女性に占めるやせ過ぎの割合は先進国の中でダント
ツで高く、そのことによる胎内の栄養状態の悪化による影響が大きいのでは
ないかと考えられています。

飽食とまで言われている豊かな現代日本にあって、なんとも皮肉なことです
が、生活習慣病胎児期発症説に照らしてみると、生活習慣病予備軍が、年々、
増えているということになります。

そこで、そのことを検証し、次世代の健康のための対策を講じることを目的
に調査が始められるというわけです。


◎胎内の環境がなぜ大人になってからの体質にまで影響を及ぼすのか

さて、子宮内の栄養状態が悪かったために、他の赤ちゃんよりも小さかった
り、病気がちだったりすることはよくわかります。

ところが、生まれた後、十分な栄養を与えられ、体格も「人並み」になった
としても、大人になってからの病気のリスクが高くなってしまうというので
す。

この、一見、理解しがたい「生活習慣病胎児期発症説」は何を意味するので
しょうか?

それは、胎児期の一時的な栄養環境は、その時の代謝に影響を及ぼすだけで
なく、長期的な遺伝子のオン、オフをもコントロールしているということに
他なりません。

このことは「エピジェネティック」な変化と呼ばれていて、DNAの配列は
変化しないまま、DNAの性質が長期的に変化してしまうことを言います。

つまり、子どもの「先天的な遺伝的性質」は持って生まれたものとして変わ
ることがありませんが、「後天的な遺伝的性質」は子宮内の栄養環境によっ
て変化してしまうことがあるというわけです。

そして、その変化は、どのようにして起きるかと言うと、さまざまなメカニ
ズムがあるようですが、最も一般的なのは、遺伝性の実体であるDNAには、
その周囲にさまざまな有機分子の集まりがくっついていて、それらの結合の
度合いが遺伝子のオン、オフをコントロールするというものです。

つまり、DNAの周りにくっついている有機分子の集まりの量が多ければ、
遺伝子の発現が抑制され、少なければ発現が活性されるという仕組みです。

さらに、栄養環境との関連で言えば、遺伝子の発現を調節する有機分子の集
まりの材料を提供するのが葉酸で、葉酸が材料を提供するのに関わっている
のがアミノ酸であり、ビタミンB6やビタミンB12、さらには、亜鉛とい
うわけです。


◎妊娠前の食生活がとても大切なわけ

「葉酸」と聞けば思い当たることがありますね。

妊娠前に葉酸が不足すれば、神経管がうまく形成されない無脳症や脊椎二分
症などの先天異常の子が生まれるリスクが高くなり、反対に葉酸の摂取が多
過ぎれば小児ぜんそくの子が生まれるリスクが高くなることがよく知られて
います。

妊娠前、妊娠中の葉酸の摂取量は少な過ぎても、多過ぎてもよくないのです。

その理由は、葉酸が後天的な遺伝子発現を調節する有機分子の集まりの材料
を提供しているからなのです。

ですから、葉酸をはじめとして、アミノ酸やビタミンB群、ミネラルなどの
バランスは、先天異常だけではなく、受精卵や胚の成育、さらには、流産や
早産などのリスクにも深く関わっているというわけです。

つまり、妊娠前の栄養状態は、エピジェネティックな変化を通して、妊娠し
やすさや先天異常のリスクだけでなく、子どもの将来に渡る体質までをも左
右しかねないのです。

先天的な遺伝的性質による体質は誰にもコントロールすることは出来ません。

そして、成人してからの生活習慣は本人の責任です。

ところが、子宮内で遺伝的性質が後天的に変化することによる胎児の出生後、
一生に渡る体質や健康状態は母親の責任だと言えるわけです。

妊娠前からバランスのよい食生活を心がけること、そして、不足しがちなビ
タミンやミネラルのサプリメントを摂ることが重要である本質的な理由です。


◎不妊経験を「福」に転ずることこそが

日本では、赤ちゃんの体重が減り続けていることは、既に、お話した通りで
す。

そして、その原因として、女性の「やせ願望」による間違った食生活、また、
「出来ちゃった」、つまり、予期せぬ妊娠の増加が挙げられています。

繰り返しますが、この食材が有り余る、豊かな現代日本において、本当に皮
肉なことです。

つまり、子宮内の栄養環境の問題は、食べ物が足りているかどうかというこ
とではなく、自分や未だ見ぬ我が子の健康にプラスになる食生活を送ってい
るのかどうかということでしょう。

もしも、不妊という経験にプラスの面があるとすれば、自分や未だ見ぬお子
さんのために、何が大切なのかについて気づかせてくれることが真っ先に挙
げられるのかもしれえません。

▼参考にした文献
◎臨床栄養 2011年8月号「妊娠前からはじめる妊婦の栄養ケア」
◎臨床婦人科産科 2011年5月号「母体と胎児の栄養学」

▼もっと知りたい方のためにお勧めする本
◎「胎内で成人病は始まっている」ディビット・バーガー著
◎「エピジェネティクス 操られる遺伝子」リチャード・フランシス著
それぞれ、ソニーマガジンズ、ダイヤモンド社から出ています。

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記事ついての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
news-master@akanbou.com


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 ヤングのコーナー 〜 カラダ、動かしてますか?
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こんにちは、ヤングです。

皆さん、運動したり、意識して体を動かしている事ってありますか?

妊娠しやすいカラダづくりを目指すには、「適度な運動」を取り入れた方が
良いというのは、妊カラ読者の皆さんであれば、ご承知のことと思います。

ただ、忙しい日常では、決して、簡単ではありませんね。

私も負担にならずに続けられ、かつ、効果が期待できるもの何かないかなー
と、暗中模索しておりました。

最初は、妊娠が目的ではなく、ストレス解消を目的に、ホットヨガを5年程
続けていました。週3日は行くようにしていたのですが、不妊治療中はやは
り行けないことが多くなってしまい、徐々に足が遠のいてしまったものです。

当時の運動は、ホットヨガだけでしたので、家で毎日できる運動をしようと、
運動系のDVDも色々と購入しては、試してみたものの、続くものが何一つ
ありませんでした(基本3日坊主な性分なもので、、、)。

そんな中で、続いたのが「ウォーキング」と「ストレッチ」です。

「ウォーキング」については、今までも触れてきたり、また妊カラサイト内
でも生体リズムが整い、ホルモンの分泌を正常化させる「究極の運動」とい
うことで紹介していますが、朝のウォーキングは私にとって体調の変化がて
き面に出て、気持ちも良かったので、続ける事ができました。

また、「ストレッチ」ですが、これは、「赤ちゃんができる!ファータイル
ストレッチ」という本を参考に就寝前に行いました。

本で紹介しているファータイルストレッチは24ポーズあり、各30秒から
1分間を1セットとして行います。

全ポーズを確認しながら行うと私の場合40分ぐらい掛かってしまうのです
が、このストレッチ、全ポーズを行うと、コリがほぐれてお腹のあたりがポ
カポカして、血行が良くなっているのを実感できると思います。

また夫婦で実践できるペア・マッサージも掲載しているので、興味がある方
は手に取ってみてはいかがでしょうか?

皆さんの日頃 取り組んでいる事がありましたら、お聞かせ下さい。

■「運動」に関する記事をPickUp!

・運動も正しく取り組むことが大切です。
http://www.akanbou.com/5step/step1/exercise.html

・ウォーキングを始めてみませんか?
http://www.akanbou.com/topics/topics/003.html

・運動で好循環スパイラルをつくる
http://www.akanbou.com/topics/topics/021.html

■ 本:「赤ちゃんができる!ファータイルストレッチ(DVD付)」

■ 本:「赤ちゃんができる!ファータイルストレッチ(DVDなし)

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でもない研究報告やトピックなども紹介しています。よければフォローくだ
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 編 集 後 記
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バランスよく食べることの大切さは、誰もが理解していることだと思います
が、なぜ大切なのか、カラダのメカニズムを知ると、モチベーションは、俄
然、高くなると思います。

生活習慣病というネーミングは、成人病の本質を見誤らせかねないと、つく
づく思いました。

同じ生活習慣でも、成人病が発症する人もいれば、しない人もいます。

その原因が先天的な遺伝的体質だけであればどうすることも出来ません。

ところが、もしも、後天的に変化した遺伝的体質のせいであれば、防ぐこと
が出来たかもしれないわけです。

自分の健康を守ることは、すなわち、未だ見ぬ我が子の健康を守ることでも
あるのですね。

そして、本文では全く触れていませんが、男性も子の後天的な遺伝的性質の
変化に関与しているとの説もあります。

まずは、自分やパートナーを大切にすることから始めたいものです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.466
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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◎配信部数:5,202部(5月20日現在)
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