食事パターンと精子の質や生殖ホルモンとの関係

生活習慣・食事・サプリメント

2020年01月11日

Hum Reprod 2019; 34: 1866

高血圧を防ぐ食事法であるDASH食に近い食べ方をしている男性ほど精子数が多いことがスペインの男子大学生を対象にした横断研究で明らかになりました。

3つの食事パターン(AHEI-2010、地中海食、DASH食)と精子の質や生殖ホルモンとの関係を調べるべく、2010年10月から2011年11月にスペインのムルシア大学の男子大学生(18〜23歳)を対象に環境や生活習慣が男性の生殖機能に及ぼす影響を調べることを目的に実施された「ムルシアヤングメンズスタディ」で得られたデータを解析しました。

209名の男性に食物摂取頻度調査票(過去1年間にどんな食品をどれくらいの頻度でどれくらいの量を食べたかを尋ねる質問票)に答えてもらい、AHEI-2010、地中海食、DASH食の3つの食事パターンにどれだけ近いかを指数化し、指数で4つのグループ(Q1〜Q4)にわけ、それぞれ、精液所見や生殖ホルモンレベルとの関係を解析しました。

その結果、高血圧予防食であるDASH食指数が高くなるほど精子濃度や総精子数、総運動精子数が有意に高くなり最も指数が低いQ1グループを基準にした場合、精子濃度ではQ2グループは13.3%、Q3グループは32.7%、そして、最も指数が高いQ4グループは47.3%高いことがわかりました。同様に、総精子数ではQ2が24.5%、Q3で31.7%、Q4で64.7%高く、総運動精子数でもQ2が21.1%、Q3で42.2%、そして、Q4で73.8%高いことがわかりました。

DASH食以外のAHEI-2010や地中海食の指数とは関連しませんでした。また、生殖ホルモンはいずれの食事パターンとも関連しませんでした。

コメント

食と生殖機能の関連研究では、特定の食品や栄養素ではなく、食事パターンとの関連を検討する研究が増えています。これまで地中海食に近い食べ方や良好な精液所見に関連するという報告がいくつかなされています。

今回の研究は健康な若い男性を対象とし、高血圧予防に有効な食べ方であるDASH食に近い食べ方ほど精子数が多いことを明らかにしました。

3つの食事パターンの特徴と食べ方は以下の通りです。

・新健康食(AHEI-2010):米国大規模疫学調査から導かれた生活習慣発症リスクの低い食べ方。野菜(じゃがいもを除く)、果物、全粒穀物、ナッツ類、豆類、オメガ3脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、アルコールを多く、砂糖入り清涼飲料水、果物ジュース、赤身肉、加工肉、トランス脂肪酸、ナトリウム(塩)は少ない食べ方

・地中海食:地中海沿岸地域の伝統的な食事パターンで、さまざまな生活習慣の発症リスク低減に関連するという膨大な研究報告がなされている。野菜、じゃがいも、豆類、果物、全粒穀物、魚、オリーブオイルを多く、高脂肪乳製品、赤肉、鶏肉、アルコールが少ない食べ方。

・DASH食:高血圧を予防する降圧のための食事療法で、緑黄色野菜を中心とした野菜や果物、大豆食品、ナッツ類、低脂肪乳製品、全粒穀物を多く摂取し、総脂肪や飽和脂肪の摂取を減らし、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維の摂取量を増やす食べ方。

DASH食が精子数の多さに関連したのは抗酸化物質を豊富に摂取することで抗酸化能が高まるからではないかとしています。

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