食事パターン(AHA食)と流産リスクの関係

生活習慣・食事・サプリメント

2025年12月05日

Front Nutr 2025 Jun 4:12:1565107. doi: 10.3389/fnut.2025.1565107. eCollection 2025.

妊娠前の食事パターンと流産リスクの関連を調査した研究により、米国心臓協会(AHA)食事ガイドラインに近い食事をしている女性ほど、流産やさまざまな妊娠中のトラブルのリスクが低いことが報告されています。

妊娠を望む女性にとって、毎日の食事が妊娠や出産にどのような影響を及ぼすのかについては関心の高いテーマといえます。

中国の上海交通大学医学院附属仁済病院の研究グループが行った調査では、2回以上の流産経験があり、妊娠を希望する女性を対象に、妊娠前の食生活と流産や妊娠中のトラブルとの関係を詳しく分析しました。

研究に参加した600名の女性たちは、初回の診察時に食事内容についてのアンケート調査を受け、米国心臓協会(AHA)食、複数の地中海食パターン(tMED、pMED、aMED)、健康的食事指数(HEI-2015)、高血圧予防食(DASH)の、計6種類の食事パターンにどれだけ近い食べ方をしているかがスコア化されました。その後に妊娠した475名の経過を追跡したところ、381名が出産に至り、94名が残念ながら流産となりました。

分析の結果、妊娠前からAHA食に近い食べ方をしていた女性ほど、流産や妊娠中のさまざまなトラブルのリスクが低いことが明らかになりました。各食事パターンにどれだけ近いかをそれぞれ4つのグループに分けて調べたところ、AHA食のスコアが最も高いグループの女性は、最も低いグループの女性に比べ流産のリスクが約64%減り、妊娠糖尿病の発症リスクは72%低く、妊娠高血圧症候群のリスクは88%と大幅に低下し、早産や低出生体重児といったその他のトラブルは96%減少と、非常に少ない傾向がみられました。

健康的な食生活として知られるHEI食や代替地中海食(aMED)、Trichopoulou式地中海食(tMED)でも同様の良い傾向が示された一方で、Panagiotakos式地中海食(pMED)とDASH食では明確な関連は認められませんでした。

さらに、食事だけでなく、運動習慣との関連についても調査したところ、中強度以上の運動をしている人、または総エネルギー量や脂肪摂取が控えめな人ほど、最終的に無事に出産できる可能性が高いことも示されています。

この研究では6つの食事パターンの特徴も整理されています。6種類の食事パターンとその特徴は以下の通りです。
※(+)は積極的に食べることを推奨する食品、(ー)は避けたほうがよい食品、(±)は適切に摂取することが推奨される食品です。

米国心臓協会食(AHA)
(+)果物や野菜、全粒穀物、魚介類、ナッツや豆類
(ー)砂糖入清涼飲料水、塩分、精製肉、飽和脂肪酸

Trichopoulou地中海食(fMED)
(+)全粒穀物、果物とナッツ、野菜、豆類、魚
(ー)赤身肉や精製肉、内臓肉、 乳製品、脂肪、アルコール

Panagiotakos地中海食(pMED)
(+)全粒穀物、じゃがいも、果物、野菜、豆類、魚、オリーブオイル
(ー)赤身肉や精製肉、鳥肉、全脂肪乳製品
(±)アルコール

代替地中海食(aMED)
(+)全粒穀物、果物、野菜、豆類、魚
(ー)赤身肉や精製肉、脂肪
(±)アルコール

健康的食事指数(HEI-2015)
(+)果物、果物ジュース、野菜、豆類、全粒穀物、乳製品、タンパク質(赤身肉、精製肉、魚介類、大豆食品)、不飽和脂肪酸
(ー)精製穀物、塩分、砂糖、飽和脂肪酸

高血圧予防食(DASH)
(+)果物、野菜、ナッツや豆類、全粒穀物、低脂肪乳製品
(ー)赤身肉や精製肉、砂糖入清涼飲料水、塩分

コメント

妊娠前や妊娠中の食事パターンによる不妊治療成績への影響や妊娠出産、さらには生まれた子供への影響については、さまざまな研究がなされています。

今回の研究で、流産リスクの低下と明らかな関連がみられたのは、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患予防に推奨される、米国心臓協会(AHA)の食事ガイドラインでした。

結果として、果物、野菜、魚介類、ナッツ、豆類といった食品を多く含む食事を多く摂り、砂糖入清涼飲料水、塩分、精製肉、飽和脂肪酸をあまり摂っていなかった女性は、流産や妊娠中のトラブルのリスクが低かったというものです。

流産の原因は不明なものも含めて多岐にわたりますが、妊娠を望む女性は上記の食べ方を参考にしてみるとよいかもしれません。