妊娠初期の母体の葉酸及びビタミンB12濃度と胎盤成長との関係

生活習慣・食事・サプリメント

2025年09月19日

Human Reproduction, Volume 40, Issue 8, August 2025, Pages 1485–1494

妊娠前からの葉酸サプリメントの摂取は、妊娠後からの摂取と比較して、妊娠初期の胎盤の大きさに良い影響を与えることがわかりました。

葉酸とビタミンB12は、DNA合成などの細胞の増殖や維持といったプロセスに不可欠な役割を果たしており、血中の葉酸やビタミンB12濃度は胎児と胎盤の発達に影響を及ぼすと考えられています。

正常に機能する胎盤は胎児の成長と発達に不可欠であり、これまで複数の研究で葉酸およびビタミンB12濃度との関係性が報告されています。

オランダの産婦人科医 M M van Vlietらは、妊娠初期における、母体の血液中の葉酸濃度*や血清ビタミンB12濃度と胎盤成長との関連性を調査しました。
*赤血球(RBC)葉酸(2~4ヶ月間の長期的な葉酸状態の指標)


2010年1月から2020年12月迄、妊娠初期に葉酸やビタミンB12の血中濃度を測定した480名の妊婦と、聞き取り調査により葉酸サプリメントの開始時期が判明した875名の妊婦を対象に調査が行われました。
血中葉酸濃度と血清ビタミンB12濃度は、妊娠初期の母体血液から測定され、葉酸サプリメントの使用開始時期は質問票を用いて調査されました。そして、胎盤体積(胎盤の大きさ)は、妊娠7週、9週、11週に3D超音波検査により測定されました。

その結果、最も小さな胎盤体積だったのは赤血球葉酸濃度が低かった下位25%のデータ群に属する女性において観察され、赤血球葉酸濃度の高い上位25%の女性との差が最も大きくなりました。これは妊娠7週目と11週目においてそれぞれ1.79 cm³と6.99 cm³、比較すると妊娠7週目では−18.7%、11週目では−9.9%の胎盤体積の差に相当しました。

さらに、妊娠前にではなく妊娠後に葉酸サプリメントを開始した女性では、妊娠前から開始していた女性と比較して胎盤体積が有意に小さく、妊娠7週目と11週目においてそれぞれ1.69 cm³と6.62 cm³、比較すると妊娠7週目では−16.9%、11週目では−8.9%の胎盤体積の差に相当しました。なお、母体の血清ビタミンB12濃度と胎盤体積との間には有意な関連性は認められませんでした。

本研究では適切な母体赤血球葉酸濃度を得るために妊娠前からの葉酸サプリメントを開始することの重要性が示されました。それにより妊娠初期の胎盤の最適な成長を促進し、神経管欠損症やその他の妊娠中のリスク低減に寄与する可能性が示唆されました。

コメント

妊娠初期の胎盤成長は、母体の十分な葉酸レベルと妊娠前からの葉酸サプリ開始により促進される可能性があります。さらに、受胎前後の葉酸サプリメントの使用は、神経管閉鎖障害の発生率を低下させるため、妊娠前から少なくとも妊娠初期まで、妊娠を希望する女性に推奨されています。