早産は新生児予後に影響する代表的な周産期合併症であることが知られています。日本の単胎児の早産率は4.47%(2009年〜2014年)で、上昇傾向にあり、早産予防は重要な課題となっています。一方、食物繊維は腸内細菌叢の構成と活動に大きな影響を及ぼし、特に、水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなり、善玉菌を増やし、短鎖脂肪酸を生成することで腸内環境を改善することが知られています。
早産のあった女性と早産のなかった女性では腸内微生物叢が異なるとの報告がなされており、腸内細菌叢の改善が早産予防に有効である可能性が示唆されています。
そこで、福島県立医科大学の研究グループは、妊娠前の食物繊維摂取量と早産リスクの関連について、エコチル調査データを用いて調べました。
2011年から2014年までにエコチル調査に参加し単胎児を出産された85,116例を対象とし、妊娠前に食物摂取頻度票を用いて食物繊維摂取量を調査しました。食物繊維の摂取量で5つの群(最小:Q1~ 最大:Q5)に分類し、妊娠前の食物繊維摂取量と早産の関連性を分析しました。
各群の食物摂取量の中央値(1日あたり)は以下の通りとなりました。
Q1:5.5g、Q2:8.0g、Q3:10.1g、Q4:12.8g、Q5:18.4g
その結果、34週以前に早産を発症するリスクは、食物繊維摂取量の少ないQ1群に比べて摂取量の多いQ3、Q4、Q5群において有意に低かったことが明らかになりました。妊娠前の食物繊維摂取量が増加するほど、34週以内の早産リスクが低下する傾向が認められ、妊娠中の食物繊維や他の主要栄養素の摂取量を交絡因子として調整した後もこの傾向は維持され、妊娠前の食生活の重要性が示されました。
*環境省によって実施されている、母親の生活習慣と出生児の健康の関係を調べる研究
コメント
妊娠前からの妊娠初期までの食物繊維の摂取量は、34週以内の早産リスクと負の関連を示しました。
これは、腸内および膣内の細菌叢の変化と短鎖脂肪酸の抗炎症作用に起因する可能性があり、妊娠前の食物繊維摂取の重要性を示唆しています。
因みに厚労省の国民健康・栄養調査(令和5年)によりますと、30代女性の食物繊維摂取量は15.4g、40代女性で15.9gで、Q5群の中央値である18.4gを目安に増やすことが望ましいと考えられます。