男性の亜鉛&葉酸サプリメント摂取の精子に質や生産率への有効性(RCT)

生活習慣・食事・サプリメント

2020年01月10日

JAMA. 2020;323(1):35-48

不妊治療を受けているカップルの男性の葉酸・亜鉛含有サプリメント服用はプラセボに比べて精子の質やカップルの生産率を改善に寄与しないことが、アメリカで実施された多施設二重盲検無作為比較対照試験で明らかになりました。

不妊治療に臨むカップルの男性に対する葉酸と亜鉛を含むサプリメントの精子の質やパートナーの生産率に対する有効性を検証すべく、多施設二重盲検無作為比較対照試験が実施されました。

アメリカ国立小児保健発達研究所の研究者らは、ソルトレイクシティやアイオワシティ、シカゴ、ミネアポリスの4ヶ所の不妊治療施設で不妊治療に臨むカップルの男性2370名を無作為に2つのグループにわけ、一方のグループ(1185名)には葉酸5mgと亜鉛30mg含有サプリメントを、もう一方のグループにはプラセボ(偽薬)を、それぞれ6ヶ月間摂取してもらい、精液所見やパートナーの女性の生産率を比較しました。

その結果、試験期間中にパートナーが出産に至ったのは葉酸と亜鉛含有サプリメントを摂取したグループで404件(34%)、プラセボ群で416件(35%)と有意な差は認められませんでした(調整済リスク差:-0.9[95% CI, -4.7% to 2.8%])。

また、精液所見(精子濃度、運動率、形態率、精液量、総運動精子数)でも両群で有意な差はみられませんでした。

ただし、精子DNA断片化率のみサプリメント摂取群で29.7%、プラセボ群で27.2%とサプリメント摂取群のほうが有意に高かったことがわかりました(平均差:2.4%[95% CI, 0.5% to 4.4%])。

これらの結果から不妊治療に臨むカップルの男性パートナーにおいて、葉酸と亜鉛含有サプリメントはプラセボに比べて精子の質やパートナーの女性の生産率を改善に寄与しないことがわかりました。

コメント

これまで男性不妊患者に高用量の葉酸と亜鉛のサプリメントの摂取によって精液所見が改善されるという研究報告がいくつかなされていました。

葉酸はDNA合成に関与し、細胞の分裂増殖に不可欠なビタミンであること、精液中の亜鉛濃度は血中の約30倍とされており、男性の生殖機能に重要や役割を担っているのではないかと考えられることから、この組み合わせになったようです。

ただし、それらの研究計画にはばらつきが大きく、エビデンスとしては低いものでした。

そこで、今回の多施設で2370名の男性を対象に無作為比較対照試験が計画、実施されました。

結果は精子の質や治療成績を改善させることにならなかったというものでした。

対象者が不妊治療に臨むカップルの男性パートナーであり、必ずしも男性不妊患者ではありません。また、葉酸の1日の摂取量が5mg(5000μg)と高用量であることがなんらかの影響を及ぼしている可能性があります。因みに厚労省の定める葉酸サプリメントの1日の上限は1000μgです。