負担の軽い卵巣刺激法の方が不成功による精神的な落ち込みは軽い

ストレス

2007年08月20日

Human Reprocuction Vol.22 No.9 P.2554-2558

体外受精の不成功が何度も続いた場合の精神的な落ち込みは、より身体への負担の軽い方法による治療を受けた人の方が、そうでない人に比べて、精神的な落ち込みは軽いことがオランダの研究によって明らかになりました。

オランダの2つの不妊治療施設で、GnRHアンタゴニストを使用したよりマイルドな卵巣刺激で単一胚移植を受けた197名の女性と、GnRHアゴニストを使用した標準的なロング法で2個胚移植を受けた194名の女性に、治療開始前と妊娠判定の1週間後に、心理テスト(the Hospital Anxuety and Depression Scale)を受けてもらい、治療の不成功がどの程度の精神的な落ち込みに影響しているかを調べました。
尚、治療が不成功に終わり被験者になったのは253名でした。

その結果、標準的なロング法で体外受精を受けて不成功に終わった女性のほうが、より身体への負担がマイルドなアンタゴニスト法で体外受精を受けて不成功に終わった女性よりも、妊娠判定1週間後の精神的落ち込みが大きいという結果が出ました。
スコアにして、それぞれ、10.2と5.4でした。

コメント

体外受精の際に、複数の卵子を育て、採卵するために、排卵誘発剤で卵巣を刺激するのですが、その方法はさまざまな方法があります。

今回の報告で比べられたのは、一般的なロング法とGnRHアンタゴニスト法(セトロタイド法)で、排卵を抑えるために使用する薬が違うのですが、そのために使う薬の量や期間だけでなく、使用する排卵誘発剤の使用量の少なくて済むこと、また、卵巣刺激症候群という副作用の発生リスクも小さいなど、アンタゴニスト法のほうがより身体への負担が軽くなるとされています。

ともすれば、身体にかかる負担が軽い治療法を受けた女性のほうが、もっと強い治療を受けとけばよかったという後悔から、治療不成功による精神的落ち込みは大きいのではないかと思いがちですが、そうではないようです。

卵巣刺激法や移植する受精卵の数は、原則的には、それぞれの女性の身体の状態に応じた方法や個数を採用すべきですが、心理面の影響も考慮に入れた治療方針を立てることも大切ではないでしょうか?