顕微授精による出生児の8才時点での健康状態追跡調査

不妊治療のリスク

2006年06月24日

the 22nd annual conference of the European Society of Human Reproduction and Embryoligy

ベルギーの研究チームは、顕微授精による出生児への長期に渡る影響を調査するため、顕微受精によって生まれた子どもの8才の時点の健康状態の調査を実施したところ、概ね問題のないことが判明したと、チェコのプラハで開催中のヨーロッパ生殖医学会で発表しました。

調査結果は、顕微受精による子供への影響について、8才の時点においては、これまでに報告されている追跡調査の結果同様に、さほど 心配するようなものはないことを示しているものの、顕微授精による出生児には、わずかに先天性障害のリスクが増大することが明らかになりました。

ただし、それは、顕微授精による影響以外の遺伝的な要因によるものと考えられるとしています。

ベルギーのVrije Universiteit のthe Centre for Medical Geneticsの小児科医のDr. Belvaらは、1991年に顕微授精による体外受精法が開発、成功して以来、長期に渡る出生児の健康状態への影響が懸念されてきたことから、出生児の8才の時点の追跡調査を実施しました。

因みにこれまでの最年長の調査は、5才時点でした。

調査は顕微授精によって出生した150名(男子が76名、女性が74名)と、自然妊娠で出生した147名(男子が76名、女性が71名)を対象に、肉体的、神経的な試験を実施しました。

その結果、いずれのグループにも、大きな医学的な問題はなく、体重や身長、頭囲、BMI(体格指数)においても差は見られませんでした。また、 先天性障害は顕微授精グループでは10%、自然妊娠グループでは3.3%、機能的な欠損はなく、外科的な治療を必要としない先天性障害は、顕微授精グループでは24.1%、自然妊娠グループでは17.2%でした。

結論としては、顕微授精による出生児の8才時点の調査では、心配するような影響がみられなかったとのことです。

先天性障害は、遺伝的な要因で、自然妊娠においても起こりうることで、いずれも簡単な処置で治療可能なものでした。

今後はより大規模かつ、長期的な追跡調査が必要であるとしています。

特に、男性不妊が原因で顕微授精を受けたケースで、出生児が生殖年齢に達した時に、男性不妊の原因が子供に引き継がれていないかとうかが、最も懸念されるところであるとしています。

コメント

体外受精、特に、今回追跡調査の対象となった顕微授精では、受精させる精子を自然な生存競争によるものではなく、人為的に選別することから生じる問題、或いは、不妊症の原因が子供に引き継がれていないかどうか、いずれにしても、それら長期的なリスクについては、現時点では、完全には把握されていません。

高度な生殖医療を受けることを検討する際には、このようなリスクについても知っておくこと、そして、今後の追跡調査の結果に注目することが必要です。