排卵誘発剤が効きにくいのはエストロゲン受容体βの遺伝子変異の可能性

不妊改善・生殖医療関連

2005年07月23日

August issue of Endocrinology

不妊治療で使う排卵誘発剤は、エストロゲン受容体β遺伝子に変異のある女性には効きにくい可能性のあることが、マウスによる実験で明らかになりました。

アメリカの国立衛生研究所(NIH)の下部機関である国立環境健康科学研究所(NIEHS)が、研究を実施、内分泌学の専門雑誌「Endocrinology」の8月号に掲載されました。

遺伝子操作されたマウスは、排卵誘発剤を投与されても排卵が起きませんでした。

人間の場合でも同様のことが起こっているのであれば、不妊治療で排卵誘発剤が効きにくい女性がいることの説明がつきます。そして、 効果の乏しい治療を見直す目安にもなるはずです。

これまで、エストロゲン受容体βは、どのような働きを起こすのか、明らかになっていませんでしたが、今回の研究によって、エストロゲンが受容体βと 結合することによって、卵巣で卵子が発育、成熟し、排卵はすることが確認されました。

NIEHSは、この受容体の欠損が、遺伝によるものなのか、或いは、食品のような環境的な要因によるものなのか、突き止めようとしています。

エストロゲン受容体βは、環境ホルモンや大豆に含まれる植物性エストロゲンのゲニステインと結合することでも知られています。

コメント

エストロゲンの受容体には、α受容体と今回、問題になっているβ受容体があります。

薬の効き具合には、個人差があって、それは、体質によるものと教えられていますが、排卵にかかわるのが受容体βであることが判明したことで、不妊治療で排卵誘発剤を使っても卵巣が反応しない女性にとって、血液検査によって、この受容体βの機能の有無を確認することで、その原因を突き止めることが可能になるかもしれません。

多少なりとも、有効な治療を受けるための手がかりになればよいのですが。