汚れた空気が胎児の染色体異常を増加させる

妊孕性に影響する因子

2005年02月16日

アメリカ国立保健研究所

車の排気ガス等で汚染された大気によって、新生児の染色体の異常が発生するリスクが高まることが、アメリカ国立保健研究所の研究によって判明しました。

この研究は、1998年から始まったニューヨークの母と子の健康の研究プロジェクト、都会の大気汚染がどのように妊婦とその胎児の健康に影響するのかを調査するプロジェクト の一環として、コロンビア大学のチームによって実施されたもので、ニューヨークの3つの地区のタバコを吸わない妊婦60人を対象に行われ、空気中の環境汚染物質である、多環式芳香族炭化水素(PAH)という化学物質に曝露している量を測定しました。

その結果、出産後のへその緒の血を白血球を調べたところ、PAHの曝露量が全体の平均の半分以下だった女性の赤ちゃんでは、白血球1000個当たり4.7の染色体異常が見つかったのに対して、PAHの曝露量が平均を超えた女性の赤ちゃんでは、染色体異常が7.2に増加していました。
染色体異常は白血病やいろいろなガンの原因となることが考えられると言います。

コメント

多環芳香族炭化水素という有害物質は聞きなれないかもしれません。
PCBやダイオキシンに比べるとそれほど知られていませんが、ダイオキシンよりも有害性は低いものの、報道にもありますように、生活圏に高濃度に存在することから注意する必要があるようです。

環境中の汚染物質に妊婦が曝露することによって、胎児の奇形,発育不全,流産や死産をおこすリスクが高まることが知られています。
このような胎児発育への影響は母体には障害性を示さない低濃度でおきます。
有害物質によっては、胎盤を通過することで出来ないため、胎児に影響を及ぼすことがないと言われていますが、今回の研究結果は、PAHは胎盤を通過して胎児に到達していることを示しています。

※多環芳香族炭化水素とは?(伊藤忠エネクスのサイトより)
多環芳香族炭化水素(PAHs:Polycyclic Aromatic Hydrocarbons)は、ものが燃える(不完全燃焼)ときに発生する化学物質の総称で約50の化学物質が存在します。
これらの化学物質は、工場や自動車などの排出ガスに含まれており、大気汚染物質として挙げられています。
多環芳香族炭化水素には、強い発癌性を示すものや発癌を促進させるものなどが数多く存在し、ジニトロピレン、ニトロピレンなどのニトロ多環芳香族炭化水素類などが、多環芳香族炭化水素が空気中で二酸化炭素と反応することで生成されます。
これらニトロ多環芳香族炭化水素は、大気中やディーゼル車の排出粉塵から検出されています。

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