子宮内膜症と偏頭痛の関係

不妊原因になる病気

2004年10月31日

New science 2004/10/28

不妊症の原因となる子宮内膜症と偏頭痛に相関関係が疑われるとの研究発表が、このほど生殖医学誌「Human Reproduction」に発表されました。また、この研究が偏頭痛の原因の理解の一助になるのではないかと考えられているようです。

子宮内膜症の女性は、そうでない女性に比べて2倍以上も偏頭痛持ちが多かったというもので、イタリアのジェノア大学の婦人科医グループによって調べられました。

子宮内膜症とは、子宮の内膜組織が子宮以外の腹腔内に出来る病気で、ホルモンに反応して、月経の度に大量の出血や炎症、そして強い痛みが伴い、不妊の原因にもなることで知られています。

調査に携わった研究者によると、生殖年齢にある女性の約5%が子宮内膜症にかかっており、同じく生殖年齢にある女性の15~19%が偏頭痛に悩まされていて、研究で明らかになったところでは、両方に悩む助成は、100人に2人くらいではないかと考えられるとしています。

イギリスのロンドン市立偏頭痛センターのディレクターは、大変興味深い研究であるとして、偏頭痛の病態の研究の一助になるのではないかと表明しています。

イタリアの研究チームは、133人の子宮内膜症の女性と、166人の子宮内膜症でない対象グループを全てのタイプの頭痛について調査しました。
1970年代に既に子宮内膜症と頭痛の関連性に言及した研究があるのですが、今回の研究では、全てのタイプの頭痛を検証したとのことです。

子宮内膜症の女性で頭痛に悩まされているのは38%であったのに対して、対象グループでは、15%でした。

調査結果は、研究チームを驚かせるものでしたが、前兆を伴う偏頭痛になると、子宮内膜症のグループでは13.5%であるのに比べて、対象グループでは、わずか、1.2%というより明確な差が判明しました。

ロンドンの偏頭痛センターのディレクターは、興味深いことに、これまでの研究でも前兆のある偏頭痛は-それは、閃光が走るというような視覚の障害を伴うものですが-エストロゲン(女性ホルモン)レベルが高いことと関係があり、反対に、前兆のない偏頭痛は、エストロゲンが低レベルであることを示唆していると指摘しています。彼女は、高レベルのエストロゲンは、子宮内膜症と前兆のある偏頭痛の両方の原因になっていると推測しています。

偏頭痛は、脳の血管が拡張することで起こるといわれています。子宮内膜症と偏頭痛のは、血管の拡張を促し、子宮内膜症の病変に過剰に産生される一酸化窒素の調整にかかわっている遺伝的要因によるものとも考えられています。

さらに、同様に子宮内膜症の病変部分や血管にも存在するプログラスタンジンが、原因であるとも考えられています。

コメント

子宮内膜症と前兆のある偏頭痛は、症状としては全く別なものであるにもかかわらず、根本原因の部分で共通項が見られるというものです。

そして、それぞれの症状の進行を左右するのは、エストロゲン(女性ホルモン)、一酸化窒素、プロスタグランジンのバランスの問題、それら、身体の生理的機能をコントロールする調整物質の過多、もしくは過少によって、引き起こされると考えられます。

子宮内膜症も偏頭痛も日常生活に支障をきたすほどの痛みは、鎮痛剤等の薬によって抑えることは可能ですが、それは、一時的な対症療法にしか過ぎないことがよく分かります。

身体の機能をコントロ-ルしているような物質のバランスを本来のバランスに保つことが、根本的な治療と言えます。
そして、それは、日常の食事を始めとする生活習慣を見直し、体質を改善することしかありません。