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VOL.965 女性の長時間勤務と不妊症

2021年12月19日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.965         2021/12/19
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・最新ニュース解説:女性の長時間勤務と不妊症
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

 サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2021年12月16日 曇り時々雨、のち晴れますように
不妊治療の保険適用は43歳未満
https://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20211216.html
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最新ニュース解説 Dec.2021___________________________________________

 女性の長時間勤務と不妊症
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長時間(週に52時間以上)働く女性は、そうでない(週52時間未満)女性に比べて、不妊症になりやすいことが、韓国国民健康福祉調査で明らかになりました(1)。

週に52時間以上ということは週に5日働くとして、1日に10時間以上ということになります。

◎どんな研究だったのか?
韓国国立保健社会研究院が、2018年に韓国の11,200名の既婚女性を対象に実施した妊娠や家族の健康に関して調査で、15から49歳の仕事をもつ妊娠希望の女性、5,909名に週の平均労働時間と妊娠するまでに要した期間を調査しました。

週に52時間以上を長時間労働とし、長時間労働が不妊症リスクにどのように影響するのは年齢が40歳以上と40歳未満にわけて解析しました。

◎どんな結果だったのか?
40歳未満の女性では長時間働く女性のほうがそうでない女性に比べて不妊症リスクが有意に高くなることがわかりました。

ところが、40歳以上になると長時間働く女性とそうでない女性の不妊症リスクの差はありませんでした。

◎勤務時間と妊娠するまでにかかった期間の関係
これまで、ハーバード大学は、勤務時間や勤務中の力仕事と妊娠しやすさの関係を看護師を対象にした大規模の疫学調査「Nureses' Health Study3(看護師健康調査3)」のデータを解析し、報告しています(2)。

それによりますと、勤務時間が週40時間以上の女性看護師は週21〜40時間の女性看護師に比べて妊娠するまでに20%長くかかったとのこと。

また、重いもの(約11kg以上)を1日に15回以上、移動させたり持ち上げたりする女性看護師は、そうでない女性看護師に比べて妊娠するまでに1.5倍長くかかったそうです。

勤務時間の長さや仕事内容は妊娠しやすさに関係するようです。

◎ホルモンバランスや睡眠障害、性交回数
この論文の筆者は、長時間の勤務が不妊症リスクに関連するのは、ホルモンバランスや睡眠障害、さらには、性交回数の少なさが関与しているのではないかとしています。

勤務時間が長くなると、生活リズムにマイナスの影響を及ぼし、体内時計が障害を受け、ホルモンの分泌バランスが乱れたり、睡眠時間が短くなったり、睡眠の質が低下したりして、妊娠する力の低下につながるというのです。

実際、睡眠と妊娠する力は密接に関連していて、睡眠時間や睡眠の質が妊娠しやすさに影響するという研究報告が多くなされています。

その代表的な研究に北米の妊娠希望の女性を対象にした研究があります(3)。

妊娠希望の21~45歳の女性6,873名の女性の26,339周期の平均睡眠時間と妊娠率の関係を調べてみると、過去1ヶ月間の平均睡眠時間が8時間の女性の妊娠率を100とした場合、7時間で99ですが、6時間に短くなると95になり、さらに、6時間未満では89まで下がったとのこと。

また、睡眠の質と妊娠率も関係していて、12ヶ月累積妊娠率で睡眠障害のない女性で76%だったのに対して、睡眠障害が半分以上ある女性では64%まで低下しています。

このように6時間未満の睡眠時間や睡眠の質の低下は、妊娠しにくくさせることがわかります。

また、睡眠は体外受精の成績にも影響するという研究報告もなされています。


体外受精女性患者48名に治療開始の1-2週間前から手首に時計型加速度センサーを装着してもらい、睡眠や覚醒時刻を記録してもらい、睡眠時間や睡眠中央時刻(眠りに落ちた時刻と朝起きた時刻の中間時刻)、就寝時刻と胚移植キャンセルとの関係を年齢やAMHなどの影響を調べています(4)。


48名中、10名が移植に適した胚を得られず、胚移植に進むことが出来ず、治療をキャンセルせざるを得ませんでしたが、胚移植をキャンセルした女性患者は、胚移植に進んだ女性患者に比べて睡眠時間が短く、夜更かしで、睡眠効率(実際の睡眠時間÷ベッドにいた時間×100)が低く、睡眠時間帯が遅いことがわかりました。

胚移植に進んだ女性のほとんどの睡眠時間は7-9時間で、睡眠時間が7時間未満だった女性は7時間以上だった女性に比べて胚移植キャンセルのリスクが有意に高いことがわかりました。

また、睡眠時間が長いほど胚移植キャンセルのリスクが低く、20分長くなると12%低下しました。

さらに、睡眠中央時刻や就寝時刻が遅いほど胚移植キャンセルのリスクが高く、睡眠中央時刻が20分遅くなると胚移植キャンセル率が24%、就寝時刻が20分遅くなると33%、それぞれ高くなりました。

胚移植に進んだ女性の平均の就寝時刻は23時11分、キャンセルした女性は23時23分、平均睡眠中央時刻は午前3時29分だったのに対して午前3時43分でした。

また、性交回数も強く妊娠率に関連するとの報告がなされています。

初めての子どもの妊娠を希望する不妊症でない20-34歳の日本人女性80名を対象に実施された「ベビ待ち研究」です(5)。

妊娠出産歴や生活習慣について質問票に回答してもらい、採血し、AMHを測定、その後、24週間、もしくは、妊娠に至るまで、排卵日検査薬で判定した排卵日や月経、性交、妊娠検査薬の結果を記録してもらいました。

その結果、24週間で44%(35名)、2年間で74%(59名)が出産(妊娠継続中)に至りました。内訳は、50%(40名)は自然妊娠、24%(19名)は不妊治療(タイミング指導や人工授精)を受けての妊娠でした。


周期中の性交回数の中央値は3回で、24週間の追跡期間中に記録された319周期中で18%(58周期)が妊娠可能な時期に性交がありませんでしたが、妊娠可能時期の性交回数だけでなく、周期に関わらず、性交回数が多いほど周期あたりの妊娠率も高いことがわかりました。

◎長時間勤務対策について
長時間勤務によって睡眠時間が短くなり、睡眠の質が下がり、性交回数も少なくなることで妊娠しにくくなるようです。

長時間勤務はあくまで、間接的であって、生活リズムや性交回数が直接的な影響を及ぼすというわけです。

長時間の勤務に従事している場合、長時間勤務を解消することが、もちろん、理想的ではありますが、仕事ですから、なかなか、簡単ではないかもしれません。

そのため、その中で生活リズムを整え、十分な睡眠時間や睡眠の質を確保したり、性交回数を増やすことで、妊娠に近づける可能性が十分にあります。

◎年齢の影響について
今回の研究では長時間の勤務による不妊症リスクの上昇が認められたのは、40歳未満の女性だけで、40歳以上では関連しませんでした。

筆者は、年齢による影響が長時間勤務の影響を打ち消したからではないかとしています。

だからと言って、40歳以上になると長時間勤務のマイナスの影響がなくなるわけではありません。

40歳以上になるとトータルで身体や心の状態を整えることが大切だということになります。

文献
1)Saf Health Work 2021; 12: 517
2)Occup Environ Med 2015; 72: 777
3)Fertili Steril 2019; 111: 1201.
4)J Assist Reprod Genet 2021; 38: 2687
5)Int J Environ Res Public Health 2020; 17: 4985.

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・BABY&ME~新しい命のための環境づくり
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・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________

1年のうちで最も昼間が短い時期になります。日照時間も短くなると、必然的にビタミンDの産生量が少なくなります。対策は鮭などの魚をしっかり食べること、そして、サプリメントによる補充です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.965
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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