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VOL.774 PCOSの影響は不妊の原因になるだけではない

2018年04月15日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.774 2018/4/15
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・最新ニュース解説: PCOSの影響は不妊の原因になるだけではない
・イベント&セミナー情報
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2018年4月15日 最新ニュース
母親のPCOSと出生児の3歳時点での発達障害リスクの関係
http://www.akanbou.com/news/news.2018041501.html
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2018年4月9日 曇り時々雨、のち晴れますように
70代女性の恋の相談
http://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20180409.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


最新ニュース解説 Apr.2018__________________________________________

 PCOSの影響は不妊の原因になるだけではない
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母親がPCOSの子どもはそうでない子どもに比べて3歳までの発達遅延のリスクが高いという研究結果(1)がヨーロッパ生殖医学会誌電子版に掲載されました。

研究は、不妊治療が出生児の成育に及ぼす影響を調べることを目的に、2008年7月から2010年5月までアメリカのニューヨーク州(ニューヨーク市以外)で生まれた5,388名の赤ちゃんを対象に行われているコホート研究「The Upstate KIDS study」の一環として実施されました。

子どもが 4、8、12、18,、24,、30、そして、36ヶ月の計7回、子どもの運動や問題解決、言語、社会性などの発達状況について母親に回答してもらい、その結果から子どもの各領域の到達度が評価されました。

その結果、母親がPCOSの子どもはPCOSでない子どもに比べて、手や腕を使う微細な運動の発達遅延のリスクが1.7倍と高く、特に女の子で2.2倍と高いことがわかりました。

また、同じPCOSの母親の子どもでも双子のほうが単胎児よりもコミュニケーションで1.94倍、社会性で1.76倍、さらには、PCOSを治療した母親よりも治療していない母親の子どものほうが各領域の発達遅延リスクが高かったとのことです。

■PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは?
超音波検査で小さな卵胞がたくさんみられる卵巣を多嚢胞性卵巣といいます。それに加え、排卵しづらい、あるいは、排卵しないという月経異常を伴うこと、そして、血中男性ホルモン値が高い、または、LH(黄体化ホルモン)値が高いこと、この3つをすべて満たすことが多嚢胞性卵巣症候群の診断基準とされています。

ホルモン異常のため卵胞は発育するものの途中で成熟が阻害され、排卵障害や無排卵を招くことで、不妊の原因になるのが多嚢胞性卵巣症候群ということになります。

症候群ですから、症状は一様ではなく、肥満や内臓脂肪過剰、また、毛深くなるなどの男性化傾向があったり、インスリン抵抗性(インスリンの効き目が悪くなって、糖や脂質の代謝に異常をきたす)や男性ホルモン高値が背景にあることがあり、そのメカニズムは複雑です。

■PCOS女性の子は自閉症発症やADHDリスクが高い
PCOS女性の子どもは自閉症やADHDのリスクが高いという研究報告(2)もなされています。

スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究で、1984年から2007年にスウェーデンで生まれた子どもを対象に母親のPCOSと自閉症の発症リスクの関連を調べたところ、母親がPCOSである子どもはそうでない子どもに比べ、自閉症の発症リスクが59%高かったというのです。

また、同様にADHD(注意欠陥/多動性障害)の発症リスクも42%高かったとのこと。

■胎内環境が子どもの成育に及ぼす影響
PCOS女性の子どもが発達遅延や自閉症、ADHDのリスクが高いことの原因はわかっていません。

ただし、今回の研究では母親が同じPCOSと診断されていても、PCOSの治療を受けた母親と受けなかった母親では、受けなかった母親の子どものほうが発達遅延リスクが高いままだったことから、PCOSがなんらかの影響を及ぼしている可能性が高いと考えられます。

具体的には男性ホルモンやインスリンの濃度が高いことです。

それらが子どもの成育にマイナスの影響を及ぼす可能性があるということです。

■PCOSの女性は将来生活習慣病にかかりやすい
45,000人の日本人女性を対象とした日本ナースヘルス研究で、PCOSの不妊症女性はそうでない女性に比べ、45歳以降に高血圧を発症するリスクが1.7〜1.9倍、45歳未満の糖尿病発症リスクが3倍高くなることが明らかになっています(3)。

PCOSに特有のホルモンや糖代謝異常は、将来の生活習慣病のリスクにもなるというわけです。

■妊娠する前から体内の環境を整える
PCOSであってもなくても、母親になる女性の体内の環境は、妊娠しやすさだけでなく、妊娠や出産の合併症、そして、出生児の心身の発育や健康状態、さらには、本人の将来の生活習慣病のリスクにまで影響を及ぼすことを示す研究データが蓄積されています。

体内の環境を良好に改善し、維持するには、これさえやっておけば大丈夫!というような近道はありません。

日々の食生活や運動、生活リズム、メンタルの状態などの地道な取り組みが、結局は近道になると思います。

文献)
1)Human Reproduction 13 April 2018 Advance article
2)Biol Psychiatry 2017;82:651-659.
3)Maturitas 2013; 75: 227-231.

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◎不妊相談会
5月20日 不妊相談会(クリニック主催)
http://www.akanbou.com/seminar/20180520-4779.html


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・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 http://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

妊活という機会は、単に妊娠することだけでなく、未だ見ぬ子どもを含めた家族全員の生活や健康を考えるきっかけにもなり得ると、つくづく、思います。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.774
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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