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VOL.744 男性因子に目を向ける

2017年09月17日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.744 2017/9/17
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・今月のトピックス:男性因子に目を向ける
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2017年9月14日 編集長コラム
栄養素の相互作用について考える
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20170914.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


今月のトピックス Sep.2017___________________________________________
 
 男性因子に目を向ける
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2015年に日本で行われた体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療は42万4151周期で、その結果、5万1001人の赤ちゃんが生まれ、その数はその年に生まれた赤ちゃん全体の約20人に1人に当たるという調査結果を日本産科婦人科学会がまとめたという報道がなされています。

治療周期数や出生数は、過去最大だったようですが、成功率、すなわち、1回の治療で出産に至った確率は11.7%と低調です。

その主な原因は「年齢」で、成功率は30歳で21.5%、35歳で18.4%、40歳で9.1%、42歳では4.5%と年齢ともに低くなる中で、治療を受けた女性の4割が40歳以上だったとのことです。

このデータからは、年齢的な問題は高度生殖補助医療をもってしても克服することはできないということ、それと同時に、成功率の低さを回数でカバーしようと、頑張って治療を続けている方が大勢いるということがうかがえます。

報道でも、必ず、触れられていますが、「もっと若い頃から、すなわち、治療効果の高いうちに不妊治療を受けられるような社会の体制を整えなければならない」のは、全く、その通りと思いますが、現在進行形で治療を続けている方々にとっては、残念ながら何の意味もありません。

そこで、そのようなカップル、それも、治療を繰り返しても、なかなか結果が伴わないという場合、「男性因子」に目を向けることが、多少なりとも成功率の向上につながる可能性があるということをお伝えしたいと思います。

■ICSI(顕微授精)で男性因子は完全に克服できるのか

1990年からはじまった顕微授精は、特に、それまで妊娠、出産が困難だった男性不妊患者にとって、大きな救いとなりました。

数や運動能力が低く、たくさんの数の精子が卵子のところまで到達するのが難しい場合でも、顕微授精によって「卵子の中まで到達する」ということは確実にクリアできるようになったからです。

ただし、妊娠、出産に至るためには、言ってみれば、受精のスイッチが入って、受精卵になってからが「本番」なわけです。

受精後、胚が形成されるためには、卵子の質だけでなく、精子の質も関与していることが、いくつもの研究で明らかになりました。

もしも、精子の細胞質が悪ければ、初期胚の形成が障害され、精子DNAの損傷率が高ければ初期胚から胚盤胞への形成が障害されるリスクが高くなることがわかりました(1)。

そのため、顕微受精で受精が成立しても、精子の質が低ければ、その後の胚の成育がうまくいかなかったり、妊娠しても流産してしまうリスクが高くなるというわけです。

つまり、大雑把に言えば、精子の数や運動能力の低下は、顕微授精でクリアできても、精子の質はクリアできない部分があると言えるかもしれません。

■男性への抗酸化療法が治療成績の向上に寄与するかもしれない

精子の質、すなわち、精子の細胞質の劣化や精子DNAの損傷は、酸化ストレスが深く関与していると考えられています。

男性不妊と酸化ストレスの関係については、サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の特集をご覧いただきたいのですが、酸化ストレス状態、すなわち、活性酸素が過剰になって酸化力が抗酸化力を上回ると、精子の頭部に格納されているDNAを傷つけたり、体部や尾部の細胞膜の脂質を酸化したりし、精子の質を低下させてしまいます。
http://www.akanbou.com/topics/topics/71.html

そのため、酸化ストレス対策として、抗酸化療法が精子の質の低下の予防や改善になり、妊娠率や出産率の改善につながるかもしれないというわけです。

■体外受精を受けているカップルの男性パートナーの抗酸化サプリメント

体外受精や顕微授精を受けているカップルの男性パートナーの抗酸化サプリメント摂取は出産や妊娠に至る確率を増加させるかもしれないというメタアナリシス(複数の研究論文の結果を統合し、解析した研究)のよる報告がなされています(2)。

ただし、研究デザインの信頼性や被験者数などからエビデンスの質は低く、男性パートナーの抗酸化サプリメントの有効性については、確定的な結論を導くことはできないという「但書き」つきです。

その一方で、特定の集団を対象にした臨床研究で男性の抗酸化サプリメントの有効性を示した研究があります。

オーストリアの研究チームは、1回目の治療周期で妊娠に至らなかった92組のカップルに2回目の治療周期の前に男性パートナーに抗酸化サプリメントを3〜6ヶ月摂取してもらい、1回目と2回目の治療成績を比較しました(3)。

その結果、良好胚盤胞の獲得率が有意に改善されたとのこと。

■リスクファクターを見極め、現実的な対策を講じる

くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、体外受精や顕微授精を繰り返しても、なかなか結果が伴わない場合、男性が抗酸化サプリメントを摂取すれば、確実に妊娠、出産に至ることができるということを伝えたいわけではないということです。

そもそも、低い成功率を劇的に改善できる治療法、ましてや、サプリメントなど存在しません。

成功率が低いのは大前提として、どうにもできない「卵子の老化」があるからです。

そして、もしも、それ以外に、どうにかできるファクターが存在しているのであれば、そのファクターに対して、対策を講じることで、少しでも治療成績を向上させることができるのではないかという考え方なわけです。

要するに、原因への治療ではなく、考えられ得る「リスクファクター」をつぶしていくとう作戦です。

同じ治療を漫然と繰り返すよりも、早く妊娠、出産できるようになる可能性にかけるという取り組みです。

リスクファクターは「男性因子」だけではありません。

女性側の脂質や糖の代謝、微量栄養素不足、生活習慣などのファクターが影響しているかもしれません。

いずれにしても、個人差があり、誰にでもあてはまる正解はなく、個別な取り組みになります。

そのためには、自分たちの心身の状態に対する意識を高め、正しい情報に接すること、そして、ドクターや医療従事者との良好な関係を築いて、さらには、自分たちの価値観にも照らしつつ、自分たちの作戦を考えていくことだと、思います。

◎文献
1)Human Reprod. 2004; 19: 611-615
2)Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 12.
3)Androl Gynecol: Curr Res 2014; 2: 4

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・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________

台風が日本列島を縦断しようとして、天候が荒れ模様ですが、よい連休を!

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.744
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com/
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