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VOL.741 男性の精子の数が減っているという研究報告から

2017年08月27日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.741 2017/8/27
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:男性の精子の数が減っているという研究報告から
・イベント&セミナー情報
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Aug.2017__________________________________________

 男性の精子の数が減っているという研究報告から
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ヨーロッパやアメリカでは男性の精子数がこの数十年で約半分に減っている、そして、トレンドは続いているというショッキングな研究結果がイスラエルのヘブライ大学の研究者を中心とした国際研究チームによる研究(1)で明らかになりました。

研究はメタアナリシスという研究手法で、1973年から2011年までに健康な(男性不妊ではない)男性の精子濃度や総精子数を測定した7,500編の論文から解析の対象なり得る185編の論文(被験者男性総数42,935名)を抽出し、結果を統合し、解析しています。

その結果、ヨーロッパや北米、オーストラリア、ニュージーランドの男性では精子濃度が52.4%、総精子数が59.3%、それぞれ減少していたというもの。

それに対して、アジアや南米、アフリカの男性では解析対象となるデータが少ないものの、統計的に有意な差ではなかったとのこと。

また、欧米の男性の精子数の減少傾向は止まることなく、続いていることも明らかになっています。

男性の精子の数は減っているという研究結果は、今回が初めてではなく、1992年にデンマークのコペンハーゲン大学が発表して以来、いくつかもの論文が出てはいます。

ただし、今回の研究は被験者数がこれまでで最も多く、禁欲期間や精子測定方法、被験者年齢などの検査結果に影響を及ぼす因子も調整し、これまでの研究に比べると結果に対する信憑性は高いとしています。

■欧米型ライフスタイルが原因?

精子数の減少傾向はヨーロッパや北米、オーストラリア、ニュージーランドの男性にみられ、アジアや南米、アフリカの男性にはみられなかったことから、論文の筆者は先進国に特有のライフスタイル、特に、化学物質に曝されていることが原因ではないかと推測しています。

これまでの研究でも、今回の研究でも、測定した結果であって、その原因まで調べられてはいません。

そのため、原因については推測の域は出ません。

いずれにしても、これまで精子数の減少と関連が確かめらたものは、殺虫剤や喫煙、熱、ストレス、酸化ストレス、食生活(栄養不良)、BMI、運動不足、睡眠不良などが直接的、間接的に影響を及ぼしています。

つまり、精子は環境の変化の影響をとても受けやすく、そして、その関係は複雑で、複合的なようです。

■精子数と男性の健康の関係

精子数は、もちろん、男性の生殖能力の目安の一つですが、それだけでなく、男性の長期的な健康状態の目安の一つでもあると考えられています。

無精子症の男性は精巣がんの発症リスクが高かったり(2)、精液検査結果が基準値を下回る男性は、そうでない男性に比べてその後のさまざまな病気にかかるリスクが高い(3)という研究報告があるからです。

であれば、男性の精子数の減少が意味するところはもっと大きなことなのかもしれません。

■不妊治療はカップルで受けることはとても大切

不妊原因は、男性側、女性側、半々の割合であるということはよく知られるようになったようですが、男性不妊に対して男性不妊を専門とする泌尿器科医の診察を受け、適切な治療、もしくは、対策やケアが施されているとは言い難い状況にあると聞きます。

男性側で可能な治療が施されるだけでなく、禁欲期間の短縮、酸化ストレス対策など、ライフスタイル面の改善で精子の状態が改善することができれば、女性への治療の負担の軽減になるかもしれません。

それだけでなく、適切な診察を受けることで、隠れていた病気の早期発見になったり、健康に対する意識が高まり、将来の病気の発症リスクの低下につながる可能性が高まるかもしれません。

今回の研究は欧米の男性であって、日本の男性があてはまるものではありませんが、先進国に特有のライフスタイルが関係しているとなれば、日本の男性も無関係ではなくなってきます。

いずれにしても、不妊治療を受けるカップルは、精液検査の結果にかかわらず、男性も診察を受けるべき時代なのかもしれません。

文献)
1)Hum Reprod Update Advance Article 25 July 2017
2)Fertil Steril 2013; 100: 681.
3)Hum Reprod. 2014; 29: 1567.

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編集後記____________________________________________________________

第6回日本DoHAD学会学術集会が、昨日と今日の2日間、早稲田大学で開催され、ドクターに訊くで、インタビューさせていただいた早稲田大学の福岡先生が学会長をつとめられたこともあって、参加して、勉強してまいりました。
http://www.akanbou.com/doctor/interview12/

DoHADとはDevelopmental Origins of Health and Diseaseの略であり、「将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される」という概念です。

要するに、妊娠前からの母親になる女性の栄養環境が妊娠後の赤ちゃんの成育だけでなく、出生後、それも成人後の体質にまで影響を及ぼすのではないかとうもので、それを示唆する研究結果が、どんどん、蓄積されていると聞きます。

そんな最新、かつ、最先端の研究は、とても刺激的で、赤ちゃんを迎える環境を整えることは、とても、大切であることを痛感させられます。

栄養環境を決定するのは適切な食生活に尽きます。

このメルマガをご覧になっている皆さんにとっては、まずは、妊娠すること、そのものに集中されているかもしれませんが、妊娠は一通過点であり、ゴールではありません。また、妊娠する力は、すなわち、育む力です。

そういう意味では、みつめるべきは、新しい命のための栄養環境であり、自らの健康のための栄養摂取であるはずです。

そのためには、朝、昼、夜、主食、主菜、副菜がそろったバランスのよい食事を食することです。このベースをないがしろにしたまま、妊活に取り組んでも、それほどの効果は期待できません。

最新の研究動向を勉強すれば、するほど、当たり前な食を徹底することの大切さが際立ってきます。

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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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