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VOL.475 体外受精や顕微授精の累積の出産率をみる

2012年07月23日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第475号  2012年7月23日発行

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 お子さんを望まれるカップルを応援します。

 なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、悩みを克服する
 ために、"二人で話し合い、考えを整理"して、"自分たちにふさわし
 い答えを出す"上でのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な
 視点で、毎週末、配信しています。


━[今週のテーマ]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼最新ニュース解説
体外受精や顕微授精の累積の出産率をみる

▼ヤングのコーナー
今週の気になる記事

▼編集後記


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 最新ニュース解説
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 体外受精や顕微授精の累積の出産率をみる
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治療成績は、治療方針や治療方法を選択するときの目安の一つになります。

体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療の治療成績については、日本産
婦人科学会が全国のクリニックの治療成績を集計し、解析して、ネット上で
公表してくれています(1)。

治療成績では、総治療(体外受精のために卵巣刺激を開始した周期)あたり
や総ET(胚移植を実施した周期)あたりの妊娠率(胎嚢が確認できたいも
の)や生産率(出産に至ったもの)、また、総妊娠あたりの流産率が、それ
ぞれ、年齢別にグラフであらわされています。

このグラフをみると、妊娠や出産に至る確率は30代前半から徐々に下がり
はじめ、36、37歳頃からその角度が急になり、40歳を過ぎると拍車が
かかるのが一目でわかります。その反対に年齢が高くなるほど流産率も高く
なっています。

一方、卵巣刺激方法別の妊娠率が治療あたり、採卵あたり、移植あたりの3
つにわけてグラフであらわされています。

これをみると、マイルドな刺激法では採卵あたり、治療あたりの妊娠率が低
いことが一目瞭然で、通常の刺激法に比べれば、治療をはじめても採卵でき
なかったり、採卵できても受精できなかったりして、胚移植までいけないこ
とが多くなることがわかります。

そして、最後のページには年齢別の治療成績が一覧になっています。


━ 「妊娠率」よりも「累積生産(出産)率」

日本産婦人科学会の生殖補助医療データブックでは、年齢による治療成績の
推移などの全体の傾向はよくわかります。

ただし、妊娠率だけでは、治療回数を検討する際の目安にはなりづらいとこ
ろがあります。

たとえば、37歳の女性の総治療数あたりの妊娠率は20%です。これを見
ると、5回治療を続ければ、何となく妊娠できそうな感じになるかもしれま
せん。

ところが、妊娠率が20%の治療を5回受けたからといって妊娠率が100
%になるわけではありません。

なぜなら、統計的には初回の妊娠率が最も高く、2回目以降、次第に低下し
ていくからです。

この場合、この治療の5回の累積妊娠率を目安にしなければなりません。

また、治療成績を参考にする場合、何をもって治療の成功とするのかという
観点でみると、"妊娠"の確率よりも、"出産"の確率を目安にするべきで
はないでしょうか。

たとえば、37歳の女性の総治療数あたりの妊娠率は20%ですが、流産率
は25%だと言われても、感じがつかみにくいと思います。

それよりも、総治療数あたりの生産(出産に至る)率は14%と言われたほ
うがわかりやすいのではないでしょうか。


━ 高度生殖補助医療の年齢層別累積生産(出産に至る)率

残念ながら日本産婦人科学会が公表している治療成績には累積生産率があり
ません。ただし、アメリカでは公表されています。

まずは、ハーバード大学が、2000年から2005年に体外受精を受けた、
6164組のカップルの治療中止、または、子どもの出産までを追跡して、
14248周期の治療における6周期後の累積出産率を、楽観的数値と控え
目な数値の幅をもたせて算出しています(2)。

楽観的な数値とは、通院をやめたカップルも、継続したカップルと同じ確率
で出産に至ったと仮定した場合の数値で、控え目な数ととは、通院をやめた
カップルは、その後、子どもを出産しなかったと仮定した数値です。

その結果、体外受精を6周期受けて、お子さんを出産する確率は、楽観的数
値では72%、控え目な数値では51%でした。

年齢層別にみると、女性が34歳以下のカップルでは、楽観的、控え目、そ
れぞれ、86%、65%で、女性が40歳以上になると、それぞれ、42%、
24%でした。

また、最新の研究では、ミシガン州立大学の研究チームは、アメリカ高度生
殖医学会が集計した2004年から2009年に高度生殖補助医療を受けた
246740名の女性の471208治療周期の3周期の累積出産率を楽観
的数値と控え目な数値の幅をもたせて算出しています(3)。

その結果、その結果、3周期受けて、お子さんを出産する確率は、31歳以
下の楽観的数値では74%、控え目な数値では63%でした。41~42歳
では、楽観的、控え目、それぞれ、28%、19%、43歳以上では、それ
ぞれ、11%、6%でした。

また、提供卵子を受けた女性が3周期受けてお子さんを出産する確率は、年
齢に関係なく、楽観的、控え目、それぞれ、80%、60%となっています。


━ 高度生殖補助医療の不妊原因別累積生産(出産に至る)率

最新のミシガン州立大学の研究を不妊治療別の累積出産率からみてみると興
味深い結果が出ています。

不妊原因が「男性不妊」や「卵管障害」の7周期までの累積出産率は、3周
期で45%、6周期で65%と、自然妊娠の累積出産率に限りなく、近づい
ていくのです。

一方、不妊原因が着床障害になると、それを下回り、卵巣機能低下になると、
さらに、下回る結果になっています。

このことは、体外受精や顕微授精は、男性不妊や卵管障害では、妊娠を妨げ
る障害をほぼ排除できているものの、着床障害や卵巣機能低下(卵子の老化)
に対しては、治療効果を得ることが難しいことを物語っています。


━ 最後に

不妊治療を受けるということは、妊娠するまで、どんな治療を、どれくらい
続けるのかを、考え、選択し続けるということでもあります。

それは、決して簡単な作業ではありません。なぜなら、確実に妊娠できる選
択肢を予め知る方法がないからです。

不妊治療を受けるうえで悩ましいことの一つでしょう。

そんなふうに自分たちに起こる未来を予測することが困難な時には、同じよ
うな経験をした他人の過去を参考にするしかありません。

でも、よくある「体験談」の類は、気持ち的に勇気づけられるかもしれませ
んが、あまり参考にはできません。

たまたま、そうなっただけかもしれませんし、そもそも、自分たちと全く同
じカップルはこの世に存在しないからです。

でも、サイコロも、振る回数が少ないときは、たまたま、同じ目が続くこと
がありますが、同一の条件(環境)で、振る回数が多くなればなるほど、そ
ろぞれの目が出る確率は限りなく6分の1に近づいていきます。

つまり、参考にすべきは、出来るだけ同じ条件で、出来るだけ多くのカップ
ルの事例です。


▼文献

1)日本産科婦人科学会2009年高度生殖補助医療データブック
http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2009data_pdf.pdf

2)Cumulative Live-Birth Rates after In Vitro Fertilization
N Engl J Med 2009; 360:236-243
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0803072#t=articleResults

3)Cumulative Birth Rates with Linked Assisted Reproductive Technology Cycles
N Engl J Med 2012; 366:2483-2491
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1110238

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記事ついての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


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 ヤングのコーナー ~ 今週の気になる記事
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こんにちは、ヤングです。

妊カラサイトのリニューアル追い込み作業のお手伝いをしつつ、気になる記
事を見つけたのでご紹介したいと思います。

妊カラサイト内の「Q&A」のコーナーに、「友人からの妊娠報告に接して、
このままだと心が壊れそうです」というご相談があり、不妊治療を口外して
ない状態で、親しい友人からの妊娠報告を受けた時の辛い気持ち、その時の
夫婦間の気持ちのギャップ、そして、誰にも相談できない孤独な思いがひし
ひしと伝わり、あなただけじゃないのよ!と思わず励ましたくなる内容でし
た。

子どもを望んでいる読者の皆さんであれば、他人の妊娠報告が素直に喜べず
辛い思いや心の動揺を隠せない経験があるかと思います。

もちろん私もありました。

「あるあるネタ」ではないですが、誰もが同じ思いをもつこの質問に対して、
セルフサポートグループ、NPО法人Fine代表の松本亜樹子さんが丁寧に回
答くださっています。

また、他にもなかなか思い通りにいかない局面で感じる心の動揺=ストレス
の対処法として編集長コラムの中でこんな内容が書かれてありました。

★なかなか授からないことで感じるストレスに対処するために

【自然体】自分の感情を受け入れ、抑制しない
【回避する】たまには自分をなくしてみる
【向き合う】自分をみつめ、正しい知識や情報に接する
【スキルをもつ】リラックス術をいくつかもっておく
【強くなる】人とのつながり、これに尽きる

箇条書きであげましたが、コラムの中ではそれぞれの対処方法が具体的に記
載されています。

何か1つでも自分なりのストレス対処法をみつけて、ストレスと上手くつき
あっていけたらいいですよね。

ちなみに私の場合は、思いっきり泣くことかもしれませんね。辛い時にはト
イレにこもったり、布団の中でよく泣きます。(苦笑)思いっきり泣くと、
意外とスッキリするんですよね。感動映画をみて号泣するのもスッキリです
よね!

皆さんはストレスとどのように関わっていますか?自分なりの対処方法って
持っていますか?

ストレスとの関わり方についての記事もピックアップしてみましたので、普
段、ストレスを感じている方にとって少しでも参考になればと思います。

■今週の気になる記事をPickUp!

・友人からの妊娠報告に接して、このままだと心が壊れそうです
http://www.akanbou.com/qa/qa.matsumoto-009.html

・なかなか授からないことで感じるストレスとどうつきあう?
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20080518.html

・なかなか授からないことで感じるストレスを味方にするには
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20100510.html

・"待つチカラ"を養いたい
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20100819.html


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ツイッターからもさまざまな情報を発信しています。サイトに紹介するほど
でもない研究報告やトピックなども紹介しています。よければフォローくだ
さい。また、皆さんの声もお聞かせいただければ嬉しいです。

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 編 集 後 記
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メルマガの配信が1日遅れになってしまいました。

よくやく、今週には、サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」をリニューア
ル公開できそうです。

さて、週刊東洋経済で「みんな不妊に悩んでいる」という、ビジネス雑誌と
は思えない特集が組まれています。
http://p.tl/8Ir7

妊活に励むアラフォー世代「卵子老化」と戦う現実は?という特集記事の最
後で、「妊活は今や情報戦」であり、「妊娠・出産の正しい情報を収集して
いくことが、悔いのないライフプランを築く早道」だとのアドバイスがあり
ました。

世間の流れになんとなく乗っていて問題ないこともあれば、後々、後悔して
しまいかねないこともあります。

不妊に悩むカップルが、ただでさえ先の見えない中で、納得のいく赤ちゃん
待ち期間を過ごすために、また、納得のいく不妊治療を受けるためには、正
しい情報を集め、頭の中だけでも、出来るだけあいまいさを排除しておくこ
とが大切ですね。


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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.475
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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◎配信部数:5,202部(7月23日現在)
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