編集長コラム

細川 忠宏

"待つチカラ"を養いたい

2010年08月19日

ストレスと妊娠率の関係を調べた最新の論文が、アメリカ生殖医学会の学術誌に掲載されています。

妊娠を希望する274名の女性を対象に、月経周期6日目の唾液中のストレスマーカーを調べたところ、ストレスを強く受けている周期ほど、妊娠する確率が低くなることが確かめられたとのこと。

このように、ストレスはよくないと盛んに言われるものの、実際のところ、ストレスに足を引っ張られないようにするには、何を、どうすればいいのか、当事者にとっては、決して、簡単に対処できるものではありません。

さて、結婚されて8年目、5年間の不妊治療で5回目の体外受精で妊娠され、現在は、安定期に入ったというIさんと、ストレスについて、いろいろと話す機会がありました。

振り返ってみると、通院を始めた最初の頃は、ずいぶん、ストレスに悩まされたようです。

とにかく、結果が出ることが待ちきれなかったと言います。

その時々の状況に一喜一憂しては、心身ともに振り回されていたようだった、そして、そんなときには治療成績も芳しくなかったとのこと。

ところが、自分であれこれ考え、どうこうしようとしても仕方ないと思えるようになると、次第に、待つということができるようになった、そうなると、受精率や胚盤胞到達率も目に見えてよくなったと。

Iさんは、そんな心境の変化について、"待つチカラ"がもたらしてくれたように思うと言うのです。

待つチカラ、、、なるほどと腑に落ちました。

誤解のないように断っておきたいのですが、単なる辛抱強さや我慢強さが要るとか、不安や迷いなんかを気にしない鈍感力が必要だとか、そんなことを言いたいわけではありません。

心配したり、悩みながらも、明るい未来を信じて待つことのできる、しなやかさみたいな強さとでも言えばいいでしょうか。

そんな、待つチカラを養うためのヒントにしてもらえそうな、3つの「大切にしたい」ことについて考えてみたいと思います。

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"今"を大切にするということ。

押しつぶされるような不安や心配は、すべて、この先どうなるか分からないことからくるものです。

ストレスの源は、不確定な未来だと言ってしまっても過言ではないと思います。

だからこそ、どうなるか分からない、"先のこと"を、あれこれ思案するのではなく、自分がどうにかできる、"今のこと"に、全力投球したいものです。

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"納得感"を大切にするということ。

いつになったら、どうすれば、確実に望みが叶えられるのかは誰にも分かりません。

予め用意された正解は存在しないということですね。

だからこそ、今のやり方、進め方で、納得できているのかどうか、どんなやり方、進め方であれば、より、納得できるのか、判断基準はふたりの納得感をこそ最も大切にしたいものです。

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"調和"を大切にするということ。

決して、無理をしてはいけないということです。

ココロとカラダとの調和、パートナーと自分との調和、お互いの家族と自分たちとの調和、医療スタッフと自分たちとの調和、治療費と経済力との調和など。

くれぐれも、無理は禁物です。