体外受精6周期後の年齢層別累積出産率

不妊改善・生殖医療関連

2009年01月17日

the NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

母親になる女性の年齢が若ければ、体外受精によって、大部分の不妊症は克服できるが、年齢による妊娠する力の低下は、体外受精で逆転することはできないことが、アメリカのハーバード大学医学部による試験で明らかになりました。

アメリカの大型不妊専門病院ボストンIVFで、2000年から2005年に、体外受精を受けた6164組のカップルの治療中止、または、子どもの出産まで追跡し、14248周期の治療における6周期後の累積出産率を、楽観的数値と控え目な数値の幅をもたせて算出しています。

楽観的な数値とは、通院をやめたカップルも、継続したカップルと同じ確率で出産に至ったと仮定した場合の数値で、控え目な数とは、通院をやめたカップルは、その後、子どもを出産しなかったと仮定した数値です。

その結果、体外受精を6周期受けて、お子さんを出産する確率は、楽観的数値では72%、控え目な数値では51%でした。

年齢層別にみると、女性が34歳以下のカップルでは、楽観的、控え目、それぞれ、86%、65%で、女性が40歳以上になると、それぞれ、42%、24%でした。

この結果から、体外受精を繰り返し受けることで、母親になる女性の年齢が若ければ(30代前半まで)、大部分の不妊症は克服可能であることが示されたものの、女性の高齢化による妊娠する力の低下に対しては、体外受精の治療効果を望むのは困難であると結論づけています。

コメント

今回の報告がこれまでの(よくある)不妊治療(体外受精)の治療成績と異なる(よい)点は、まずは、お子さんを出産したことをゴールとしていること、もう一つは、治療成績を、6周期の累積の確率として算出していることです。

考えてみれば、治療を受ける(患者)側にすれば、周期あたりの妊娠率を示されても、今ひとつ、参考にはしづらいものがあります。

なぜなら、受ける方にすれば、周期あたりの妊娠率が30%と言われても、体外受精を受けた結果は、ゼロか、100かだからです。

ですから、体外受精という治療を受ければ、結局のところ、わが子を抱いて、家に帰ることができる可能性を知りたいわけです。

このことから、今回報告された、難しい言葉づかいをすれば、6周期の累積生児獲得率は、体外受精を受けること、あるいは、体外受精をどこまで継続するのかを検討されているご夫婦にとって、大変参考になる内容になっていると思われるわけです。

また、もう一つ、大切な観点は、年齢層別成績を算出していることで、体外受精をもってしても、年齢による妊娠する力の低下を逆転させることは出来ないということ。

もちろん、辛い現実ではありますが、このことを正しく認識することが、後悔しない選択をするうえでは必須であると思います。

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