IVM(未熟卵体外成熟)によって先天性異常等のリスクが高まることはない

不妊治療のリスク

2007年10月24日

Obstetrics and Gynecology 2007;110:885-891

未熟卵を体外で成熟させた後に体外受精させ、胚移植する治療では、未熟卵体外成熟によって、新たなリスクが発生することはないと、カナダの大学の研究チームの実施した試験によって確かめられました。

カナダのモントリオールのMcGill UniversityのWilliam Buckettらは、344の妊娠で出生したIVM-IVF児(55人)、IVF児(217人)、ICSI児(160)を、自然妊娠出生児の対照群と比較しました。

その結果、出産時に帝王切開を要した割合は、IVM-IVF、IVF、ICSI、そして、対照群(自然妊娠)で、それぞれ、39、36、36、そして、26%で、ARTによる出生児の間では差は見られませんでした。

また、多胎妊娠率でもART間による差はありませんでした。

そして、先天性異常の発症率では、対照群に比べて、ARTによる出生児は、多少高かったものの、有意な差ではなく、ART間による差は見られませんでした。

これらの結果から、未成熟卵を体外で培養、成熟させることで、出生児へのリスクが高まることはないと考えられるとしています。

コメント

IVM-IVFとは、未熟卵体外成熟後の体外受精のことで、卵巣刺激を実施しないで、卵巣から未成熟卵を採りだして、体外培養することで成熟した卵子を、体外受精(または顕微授精)後の受精卵を胚移植する治療法です。

卵巣を刺激することで、主に、卵巣刺激症候群が発症しやすいPCO(多嚢胞性卵巣)に適応されるようです。

今回の研究報告は、未熟な卵子を体外で培養し、成熟させることで、何らかのリスクが発生するのかを確かめたものですが、特に、そのようなことはなかったようです。

ただし、この治療法は、どこの医療機関でも受けられるわけではなく、一部の施設に限られます。

■関連ページ
・未熟卵子体外培養(IVM)(IVF大阪クリニック)