不妊治療施設、学会の施設基準クリアは17.3%

不妊改善・生殖医療関連

2006年08月14日

毎日新聞

体外受精や顕微授精の実施施設として、日本産婦人科学会に登録している不妊治療施設のうち、同学会が「備えることが望ましい」としている施設や人員をすべて備えている施設は、2割に満たないことが、厚生労働省研究班の調査で分かりました。

この調査は、2004年末から2005年3月にかけて、全国の584の登録施設に、各施設が基準を満たしているかや体外受精の妊娠率などを聴き、287施設から回答を得たもの。

その結果、学会が望ましいとする基準のうち、受精卵培養室の清浄度については、「準無菌室レベル」を満たさないとみられる施設が55%。培養室に入る時にスタッフが着替えない施設が54%、手を洗わない施設も15%あったとしています。

人員面では受精卵を扱う技術者(胚(はい)培養士)がいない施設が3割弱、不妊カウンセラー不在が6割。

卵子を採取する部屋の清浄度や温度管理の条件なども合わせ、基準をすべて満たす施設は17.3%に過ぎなかったとのこと。

回答施設では年間延べ5万5000回余りの採卵が実施されたが、全基準を満たす施設での採卵は2万5000回弱だったようです。

一方、体外受精による採卵1回あたりの妊娠率は、0~75%(平均26%)と施設によって大きくばらついっています。
妊娠率と、基準を満たすことの関係は不明とのことです。

コメント

今回の調査結果は、日本の不妊治療を実施する病院の設備や人員体制には、大変なバラツキがあるということを示しています。

このことは、これから病院やクリニックを選ぶ患者によっては、くれぐれも、肝に銘じておくべきことです。

ただし、だから、どのようなところに注意して選べばよいのか、肝心の情報は、全く開示されていません。

患者として、最も気になる施設の技術レベルに関しては、驚くべきことに、大雑把で、誤解を招きかねない見解が紹介されています。

それは、その設備や人員体制の充実度と妊娠率の相関関係は不明とし、この調査を実施した厚労省の研究班班長の吉村慶応大学教授は、妊娠率のばらつきは治療技術の差でなく、治療を受ける男女の状態の違いが原因だと考えている。妊娠率が極端に高い施設は、必要ない人に体外受精をしている可能性もあると説明されているのです。

不妊治療の特殊性を理解している方であれば、理解可能ですが、そうでない方には、大変、不親切な内容となっています。

設備や人員体制レベルと妊娠率の関係は定かではないだけでなく、妊娠率は、治療技術の差ではなく、患者の状態次第だというのです。

さらには、施設の中には、必要のない高度な生殖医療を施している可能性のあるところがあると言います。

それにしても、この調査結果は、患者にとって、どのような意味があるのか、全く、理解に苦しむところです。

このような状態だから、せいぜい、注意しなさいといでも言いたいのでしょうか?

意味があるどころか、混乱を招くだけではないでしょうか。

施設の設備や人員体制、さらには、治療技術レベルも、妊娠率には影響しないとなれば、いったい、何を目安に施設を選べばよいのでしょうか?

アメリカやイギリスのように、全ての施設の治療成績を統一基準のもとに公表し、法的な拘束力をもって、施設を監視していることと比べれば、日本の行政は、全く、野放し状態で、ただでさえ、精神的なプレッシャーのかかった弱い立場の患者を守るという発想は、微塵も感じられません。

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