地中海ダイエットで妊娠しやすいカラダをつくる

2014年02月17日

「妊娠しやすい食生活」の翻訳出版に際して、食と妊娠する力、食と自分の健康、食と生まれくる子どもの健康、について、あらためて、調べたり、考えたりしました。

食と健康について、いろいろな研究がはじまったのは意外に新しく、ここ数十年なんですね。

そもそも、人類が誕生して以来、食についての最大の関心事は食べ物を「確保する」ことであったわけです、生きていくために。

そして、十分な量の食べ物が苦労なく手に入るようになって、また、いろいろな種類の食材が出回るようになってはじめて、より「美味しく」、そして、より「健康的」に食べることに関心が移っていきました。

そういう意味では人類史上、かつてはあり得ないような、ぜいたくな話なわけです。

さて、美味しいかどうかは、食すればすぐにわかりますが、健康的かどうかはすぐには答えは出ません。場合によっては数十年経たなければわからないこともあります。

そこで、疫学調査、すなわち、ある特定の集団を対象にして、食生活と健康状態を長期に渡って追跡して、その関連を調べることでどんな食材やどんな食べ方がより健康的なのかを明らかにする研究がはじまりました。それがこの数十年のことだというわけです。

「妊娠しやすい食生活」はアメリカのハーバード大学が女性の食と健康について実施している、世界的に有名な疫学調査である「看護師健康調査」の中の食と妊娠する力のついての研究結果を一般向けに解説した本、「ファティリティダイエット」を翻訳したものでした。

ハーバード大学は、食と健康についての疫学調査や臨床試験を世界で最も積極的に行っている研究機関の一つです。おそらく、アメリカの食生活がそれだけ不健康だということの裏返しなのかもしれません。

ハーバードメディカルスクールの栄養学の権威であるウォルターウィレット教授は、食と健康の研究では、どんな食材がいいのか、つまり、何を食べるべきかということよりも、どんな食べ方がいいのか、つまり、どのように食べるべきかが重要であることがわかってきたと指摘しています。

そして、ウィレット教授の弟子で、食と妊娠する力が専門のジョージチャバロ先生は、「地中海ダイエット(料理)」が、妊娠する力を高める食べ方のほぼ理想型に近いと言います。

そこで、今月のトピックスでは地中海ダイエットをご紹介します。

地中海ダイエットと妊娠する力についての研究報告

実際に地中海ダイエットと妊娠する力については多くの調査研究が実施されています。

まずは、地中海ダイエットと妊娠しやすさとの関係について。

スペインのナバラ大学の研究チームは、2万人以上のスペインの大学卒業生を食生活の傾向をパターン別に分けたところ、地中海ダイエットに最も近い食生活のパターンの女性は、最も遠い食生活のパターンの女性に比べて、不妊症のリスクが44%も低かったといいます。

次に、地中海ダイエットと体外受精の治療成績の関係です。

オランダのエラスムス大学の大学病院で、体外受精や顕微授精を受けている161組の夫婦に、採卵か精液採取時に、食物摂取頻度調査のアンケートを渡し、過去4週間に食べた食品とその摂取頻度について回答してもらい、胚移植の日に提出してもらいました。

そして、食生活のパターンと治療成績との関係を統計学的に解析したところ、地中海ダイエットの近いスタイルの食生活の夫婦は、そうでない夫婦に比べて、体外受精の妊娠率が40%も高かったと言います。

また、その効果は妊娠する力だけでなく、子どものアレルギーリスクにまで関連するようです。

ギリシャのクレタ大学の研究チームは、468人の妊婦を対象に食生活に関するアンケート調査を実施、出産後の子どもの健康状態を追跡調査しました。

その結果、妊娠中に地中海ダイエットの食生活の母親の子どもは、そうでない母親の子どもに比べて、ぜんそくにかかるリスクが80%低く、その他のアレルギーにかかるリスクが45%低かったと言います。

地中海ダイエットとは?

地中海ダイエットとは、1960年初めのギリシャのクレタ島や南イタリアの伝統的な食事法のことをさしているそうです。

オリーブ油・ナッツ類、野菜、果物をふんだんに使うのが特徴で、地中海ダイエットのさまざまな疾患のリスク低減効果については、これまでフランスのボルドー大学を中心に、アメリカのコロンビア大学やハーバード大学も多くの疫学調査を実施しています。

特に、最近は認知症の予防効果に関心が高まっているようです。

地中海ダイエットの食事パターンを、東京大学大学院新領域創成科学研究科の久恒辰博准教授は著書の中で次のように説明しています。

比較的たくさん摂る →→→ 果物、野菜、豆
中くらいに摂る   →→→ 魚
中から少なめに摂る →→→ 乳製品
少なめに摂る    →→→ 肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)

そして、ワインとオリーブオイルは中程度を毎日摂るとしています。

毎日、野菜や果物、精製していない全粒穀物、乳製品、オリーブ油を食べるます。特に、野菜や果物はできるだけたくさん食べます。全粒穀物は、米では玄米、パンでは全粒粉パン、パスタでは全粒粉パスタになります。乳製品は低脂肪タイプです。

週に数回、卵、魚介類および鶏肉などの家禽類、豆類、ナッツ類や種子類、イモ類を食べ、最近の研究によれば、魚はたくさん食べたほうが良いとされています。

一方、豚や牛のような赤肉料理は、月に1、2回程度、特別な日にだけ食べますが、通常、ソース、豆やパスタ料理に、より美味しくする目的で少量の肉を加えることはあるとのこと。

赤ワインを適度に、食事と一緒に。もちろん、必須要素ではありません。

そして、精製された砂糖や穀物、オリーブ油以外の脂肪はほとんど食べません。

地中海ダイエットと運動の組み合わせが最強なのは

コロンビア大学は国立加齢研究所の支援を受けて、地中海ダイエットについての研究を行っているそうですが、地中海ダイエットと運動を組み合わせた場合にアルツハイマー病のリスクが最も下がることを突き止めています。

地中海ダイエットと運動から連想されるのは、青い海に青い空という大自然のもと、新鮮な野菜と果物、豆類、そして、新鮮な魚を、たっぷりのオリーブオイルで食すというものでしょうか。

なんか、美味しそうで、楽しそうです。

妊娠しやすいカラダをつくる生活とは、大自然の恵を、そのまま、美味しく味わい、楽しむということに集約されるのかもしれません。

実際に、新鮮な野菜や豆、魚をあっさりした味付けで食するのは、伝統的な和食に通じるところがあります。

普段の食に、地中海ダイエットのエッセンスを取り入れるのがいいのかもしれません。

その際に「生活を楽しむ」という地中海スタイルのエッセンスを忘れないようにしないことも大切ではないでしょうか。

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