メカニズムを理解して、心地よさを追求しよう
妊娠しやすいカラダをつくるには、何をどうすればいいのか、いろいろな情報が氾濫しています。
そんな情報を集めれば集めるほど、"あれも、これもやらないと・・・"と、ちょっとした混乱状態に陥ってしまうことがあるように思います。
そうなると、中途半端になってしまい、せっかくの頑張りが空回りになってしまいかねません。
なぜそんなことになってしまうのでしょうか?意志が弱いからなのでしょうか?妊娠を目指すにはもっと強い意志が必要なのでしょうか?
決して、そうではありません。意志が強いか弱いかではなく、取り組み方の問題だと思います。
冷えは妊娠によくないからといって、無闇にあたためさえすればいいというわけではありませんし、ストレスは発散しさえすればいいというものでもありません。
単に、方法論を集めて、それをこなすというやり方ではなく、身体のメカニズムを理解して、自分にふさわしい方法を試行錯誤して、みつけていくことが大切です。
追求すべきは"ストイックさ"ではなく、"心地よさ"だと思います。
最重要テーマは「血流をよくすること」
それでは、妊娠に近づくためにセルフケアで実践すべきテーマとして、最も重要なものは何でしょうか?
それは、「血流をよくする」ことになると思います。不妊治療医の先生方は、口を揃えておっしゃることです。
実際に、冷えやストレスが、直接、妊娠しづらくさせることはありません。
冷えやストレスが血流を悪くすることで、妊娠する力が低下してしまうわけです。
どのようなメカニズムになっているのでしょうか?
血流は、全ての臓器に、酸素や栄養素、ホルモン、免疫物質を運び、二酸化炭素や老廃物を運ぶ出しています。
つまり、血流は子宮や卵巣の唯一の"ライフライン"で、子宮や卵巣が働くために不可欠な物質を供給し、不要で有害な物質を排泄するという役割を血流が担っているというわけです。
ですから、血流が悪くなれば、当然のごとく、生殖器官の働きが低下し、その結果、妊娠しづらくなってしまうのです。
また、子宮や卵巣は全ての臓器の末端に位置するために血流が悪くなると、その影響を最も受けやすいという宿命にあります。
身体の末端に位置する手足の先端が冷えやすいのと同じことです。
さらに、卵巣の血流量が多いほど、卵胞の発育がよくなったり、排卵誘発剤の効き目がよくなること、子宮の血流量が多いほど、着床環境がよくなることは、多くの文献が報告するところです。
このように最重要テーマは「血流をよくすること」です。
血流をよくするための2つのキーワード
それでは、血流をよくするには何をどうすればいいのかについて考えてみましょう。
まず、知っておかなければならないのは、これさえやっておけば大丈夫!という世界はないということです。
なぜなら、血液の流れをよくしたり、悪くする要因はいくつもあって、それぞれが、複合的に絡み合っているからです。
前述の通り、冷えやストレスは血流障害の原因にも、結果にもなる得ます。
つまり、冷えやストレスは、血流障害のマイナスのスパイラルにはまらせてしまいかねない、やっかいなものだということです。
ですから、身体だけでなく、心の状態も含め、全体のバランスを整える戦略が必要なのです。
キーワードは「あたためる」と「リラックス」です。
血流をよくするためのセルフケアの3つのテーマ
次にそのための方策を3つのテーマに分類してみました。
「どんどん燃やすこと」、「中からあたためること」、そして、「自律神経のバランスを整えること」です。
それぞれのテーマを説明します。
1)どんどん燃やす
私たちの体内では、食事から取り入れた栄養素を呼吸から取り入れた酸素で燃やし、エネルギーを産生しています。
この時に熱が発生することから、不完全燃焼はエネルギーや熱の産生効率が悪くなり、疲れやすくなるとともに、体温が低くなります。
「低代謝」や「低体温」が招く、冷えにより、血流が悪化してしまう仕組みです。
この状態を解消するには、どんどん燃やし、体温を上げることです。
2)中からあたためる
食べたり、飲んだりしたものが身体を冷やし、血流が悪化してしまうという、とても単純ですが、大切な仕組みです。
寒い季節には、外からあたためることは、当たり前のようにやりますが、中からあたためることは、それほど意識されていないかもしれません。
3)自律神経
自律神経は、本人の意志とは関係なく、身体のさまざまな機能をコントロールしています。
交感神経と副交感神経はなっていて、ひとつの臓器に対して、お互いに相反する働きを担うことでコントロールするという仕組みです。
交換神経が優位になると血管を収縮させ、副交感神経が優位になると血管を拡張させるので、交換神経が優位な状態が続くと、血流が悪くなってしまいます。
この状態を解消するには、自律神経のバランスを整えることです。
血流をよくし、妊娠しやすいカラダをつくるためのヒント
それぞれの仕組みを知ったうえで、どのように取り組めばいいのかについてのヒントを挙げてみます。
1)どんどん燃やし、体温を上げるために
体内の燃焼効率を高め、体温を上げます。
◎運動する
ウォーキングのような有酸素運動は燃焼を促進します。また、筋肉は最も代謝が大きい臓器で、筋肉を増やすことで基礎代謝が上がります。
このようにウォーキング(有酸素運動)と筋力トレーニング(無酸素運動)の組み合わせで代謝を高めると体温が高くなります。
◎ビタミンB群を十分に摂る
ビタミンB群は、炭水化物やタンパク質、脂質の代謝に不可欠なビタミンです。もしも、不足するとエネルギー産生の効率が低下し、低代謝、低体温を招きます。
◎鉄を十分に摂る
鉄が不足すると貧血を招くことはよく知られていますが、エネルギー産生にも不可欠なミネラルであることはさほど知られていません。
◎良質のたんぱく質を十分に摂る
たんぱく質不足が低体温を招くこともそれほど知られていないようです。たンパク質は本来は体をつくるための栄養素ですが、胃で消化するとき、また、その後、排泄のためにアミノ酸が肝臓で分解されるときに大量の熱が発生します。そのため、たんぱく質の摂取が不十分だと低体温を招きやすくなりま
す。
◎料理にはスパイスを使う
スパイスもまた燃焼効率を高めてくれ、体温を上げてくれます。
2)中からあたためるために
あたたかいもの、あたためてくれるものを食べたり、飲むようにします。
◎あたためて食べる
身体をあたためてくれる食材と冷やす食材があるそうです。ただし、神経質になると楽しくないし、いろいろな野菜を食べることを優先し、できるだけあたたかい状態で食べることを心がけます。
◎白湯を常飲する
冷たい水は身体を冷やします。水分補給は沸騰した水をさました白湯がベストです。朝一番の水分補給は血液をサラサラにしてくれ血流をよくしてくれますが、白湯を飲むことで、睡眠中に体温の下がった身体をあたためてくれ
ます。
◎コーヒーなどのカフェイン入り飲料は摂り過ぎない
カフェインの利尿作用や交換神経を優位にする働きは身体冷やしやすくします。1日に1、2杯程度にし、ハーブティーなどにします。
◎ショウガを使う
ショウガをすりおろして紅茶に入れたショウガ紅茶は身体をあたためてくれます。
◎半身浴
ぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、身体を中からあたためます。38~40度くらいのお湯に、みぞおちから下の部分だけを30~40分くらいが目安です。
◎血糖値を急上昇、急降下させない食べ方
血糖値と体温は比例します。そのため血糖値が上がったり、下がったりするような食べ方は低体温を招きます。空腹時の甘いもの(白砂糖)は控え、できるだけ精製度、加工度の低い食品、また、食事の順番は野菜や汁もの、肉や魚、豆類などのたんぱく質、そして、ご飯などのたんぱく質を食べることです。
3)自律神経のバランスを整えるために
ポイントはストレス対策です。
◎腹式呼吸法を取り入れる
ゆっくりと吸って、ゆっくりと吐く呼吸法は自律神経を整えます。
◎規則正しい生活リズムと十分な睡眠
早寝早起きが理想ですが、最低でも毎日、12時迄にはベッドに入り、同じ時間に寝て、同じ時間に起きることです。
◎ウォーキングでストレスを緩和する
ウォーキングなどの有酸素運動はストレスを解消します。特に、朝食前は太陽の光を浴び、体温の上昇をスムースにし、一石何鳥にもなります。
◎ストレッチ
朝と夜のストレッチ習慣は血流をよくします。
◎鉄を十分に摂る
鉄は脳内でセロトニンという神経伝達物質がつくられるのに不可欠です。鉄不足はセロトニン不足を招き、うつになったり、脳内の興奮が抑えきれず、筋肉が緊張状態におかれ、血行障害を起こします。
調子のよさ、心地よさを実感してライフスタイルを楽しむ
いかがでしょうか?
ストイックなやり方をしなくても、私たちの生活はいろいろな都合や事情に満ちています。
血流を改善するためのライフスタイルを常に優先させることは困難なことでしょう。
だからと言って、あきらめなければならないわけではありません。
メカニズムを理解して、何がよくて、何が悪いのかを知っておくことで、自分の生活、つまりは、好みや嗜好にあい、事情や都合に応じた、スタイルを試行錯誤しながら、開発することで克服できるのではないでしょうか?
その際のポイントは、調子のよさや気持ちよさ、心地よさを追求することです。
血行をよくすることは、妊娠を近づけてくれるだけでなく、日常の生活で、身体の調子よさや気持ちよさ、心地よさをもたらせてくれるからです。
そのことを実感し、生活を楽しむことで、習慣化し、いつのまにか妊娠しやすいカラダになっていることと思います。