不妊治療の効果を最大にするための6つのポイント

2010年03月09日

必要最低限の治療で妊娠を目指すという明確な治療方針を掲げて、年間に1000人を超える初診患者さんが訪れる都内のクリニックでは、初診から2年経過した時点で妊娠に至る患者さんは、だいたい6~7割くらいとのこと。

また、オランダからの最新の研究報告では、2002年1月から2006年12月までの間に、地元のかかりつけ医からの紹介で、大学病院で不妊治療をスタートした1391組のカップルの内、2008年12月時点で妊娠に至ったのは、72%の1001組だったとのこと(※1)。

冒頭からネガティブに受け止められかねない話題ではありますが、意を決して、不妊治療を受けるため通院を始めても、全ての夫婦が妊娠できるとは限りません。

そのような現実があります。

それにもかかわらず、通院を続けるのに要する労力や費用は、決して、小さいものではありません。

であればこそ、なんとなく、漫然と通院を続けるのではなく、出来るだけ早く、また、コストやカラダへの負担の少ない方法で、授かることができるよう、準備や対策を講じることが大切です。

つまり、受け身ではなく、能動的に不妊治療を受けるということです。

そこで、そのためのヒントになるよう、6つのポイントにまとめてみました。

【その1】 正しい情報を得る

 ~こんなはずじゃなかったを避けるために~

11月3日に開催された「Fine祭り2009」のパネルディスカッションで、不妊治療ジャーナリストの池上文尋氏は、治療を始めればすぐに妊娠できると思っている人が多いことから、不妊治療についての啓蒙の必要性を指摘されていました。

不妊治療の1回あたりの成功率は決して高いとは言えません。

そのため、実際に通院を始めてから、"こんなはずじゃなかった"との理由で、ドロップアウトしてしまう人が少なくありません。

つまり、気持ち的なことから、経済的、時間的なものまで、それ相応の準備や用意をしていなかったため、結局、結果を出すために必要な内容や期間の治療を受けることなく、中途半端で終わってしまうケースが多いということです。。

治療の妊娠率のことだけでなく、治療法や治療の進め方、お薬のことなど、予め、必要最低限の知識を得ておくことは、自らの治療環境を整えることになります。

【その2】 自分たちにあった病院や先生を選ぶ

 ~信頼し、安心して、治療を受けるために~

Fine祭り2009では、3名の著名なドクターの講演がありました。

興味深かったのは、「体外受精を繰り返すが妊娠・出産に至らないケースの治療方法」という、共通のテーマにもかかわらず、ドクターの考え方はそれぞれに異なるところがあるということでした。

このことは、納得の行く治療を受けるためには、自分たちにあった病院や先生を選ぶことから、始めなければならないということを意味します。

今や、クリニックのサイトをチェックすれば、それぞれの治療方針を知ることができるようになりました。

【その3】 妊娠しやすいカラダづくりに取り組む

 ~元気な卵子や精子を育むために~

治療成績を高めるには、良好な卵子と精子を得ることであると、どのドクターも異口同音に強調するところです。

ただし、薬は、発育する卵の"数"を増やしますが、卵の"質"そのものを高めるものではありません。

また、体外受精は、精子と卵子を確実に出会わせますが、そのことと、受精卵の質、すなわち、妊娠の成否は別であることを知っておく必要があります。

良好な卵子や精子を育むのは、あくまでも、私たちのカラダです。

ここは、薬や医療に頼ることができない領域です。

その証拠に、体外受精の各治療プロセスでは、年齢をはじめとして、喫煙や体重、アルコール、ストレスなどのライフスタイルが、治療成績に影響を及ぼすことが多くの試験で確かめられています。

生殖細胞が元気になるようなカラダの状態にすること、つまりは、妊娠しやすいカラダをつくることに尽きます。

具体的には、5大栄養素を過不足なく取り入れ、そして、血流をスムースにし、酸素や栄養素を各細胞に行き渡らせ、各細胞の老廃物をスムースに排泄させることによって、卵子や精子は元気になり、
卵子や精子のDNAを損傷させる活性酸素を抑制する力が高まるのです。

取り組むべきは、偏りなく、バランスよく食べること、適度な運動習慣を身につけること、ストレスをうまくマネージメントすること、質のよい睡眠をとることです。

【その4】 "一撃必殺"はないことを肝に銘じておく

 ~妊娠しやすいカラダづくりに失敗しないために~

「これさえやっておけば」とか、「これさえ飲んでおけば」なんていう世界はありません。

元気な卵子や精子を育むのは、特定の成分や特定のカラダの働きによるものではなく、さまざまな栄養成分の協働であり、調和のとれたカラダの働きによるものだからです。

ですから、キーワードは、「バランス」ということになります。

その証拠に、妊娠する力にマイナスの影響を及ぼす生活習慣は、数が増えれば、増えるほど、妊娠する力を低下させることが分かっています(※2)。

・女性が1日に15本以上タバコを吸う
・男性が1日に15本以上タバコを吸う
・男性が週に20ユニット以上お酒を飲む
・女性が1日に7杯以上のコーヒー、紅茶を飲む
・女性の体重が70キロ以上
・社会的な孤立度60以上
・女性の年齢が35歳以上
・男性の年齢が45歳以上

妊娠した女性、2112名を対象に、上記の項目であてはまる数と妊娠までに要した期間を調べたところ、あてはまる項目がゼロのグループ(○)の1年間の累積妊娠率は83.3%、1つのグループ(■)では71.4%、2つ(×)では61.5%、3つ(△)では51.7%、4つ以上(◆)では38.4%と、あてはまる項目が少ないカップルほど早く妊娠しています。

バランスよく取り組むことです。

【その5】 3ヶ月~半年のスパンで計画する

 ~治療効果を最大にするために~

精子がつくられるのに要する期間は72日、卵子が成熟するのに要する期間が3周期とされています。

つまり、元気な卵子や精子を育むためには、予め、3ヶ月から半年程度のスパンで、体質を改善するような計画を立てる必要があるわけです。

中途半端で挫折しないためにも、一朝一夕には結果が出ないということを、予め、知ったうえで、計画を立てて、取り組むことも大切なことです。

【その6】 パートナー(男性)も一緒に取り組む

 ~片手落ちにならないために~

妊娠するだけの力を備えた受精卵を得るためには、卵子の質だけではなく、精子の質も求められるところです。

往々にして、精子については、「十分な量と運動能力さえあればよい」と誤解されがちです。

偏った食生活やストレス、不規則な生活、タバコや大量の飲酒による大量の活性酸素の発生は、精子のDNAを損傷させてしまうリスクが高くなります。

精液検査で問題なくても、DNAに損傷のある精子の割合が増えれば、受精率や妊娠率、妊娠の継続率が低下してしまいます。

つまり、十分の数の精子があっても、その質が悪ければ、妊娠しにくくなり、流産しやすくなってしまいかねないのです。

ですから、卵子の質だけでは"片手落ち"と言わざるを得ません。

パートナーである男性も、質のよい精子を育むようなカラダづくりに取り組むことが大切です。

[文献]

※1)Human Reproduction Advance Access 24.Oct.2009
※2)Fertility and Sterility 81(2) P.384-392 2004