サプリメントの有効利用について考える

2007年11月30日

妊娠しやすいカラダづくりのために、 サプリメントをどのように活用すればよいのか、読者の皆さんから要望の多いテーマの一つです。 一方、サプリメントの間違った使い方や製品選択によって、 結局は、お金を無駄にすることだけでなしに、 かえって、リスクを抱え込んでしまっているようなケースがよくあります。

サプリメントに関心がある方、 また、サプリメントを使ってみようかなと思っている方に、 サプリメントの摂取が無駄になったり、 皮肉にも、マイナスになったりしないように、 "単なる成分の効能情報"の前に知っておくべきこと、 すなわち、サプリメントを利用する際に、 知っておくべき原則を考えてみたいと思います。

私(細川)は、平日の毎朝一番に、 国内はもちろんのこと、 アメリカやヨーロッパ発の生殖医療やサプリメント、 アンチエイジング関連のニュースや主な論文をチェックして5年になります。 そして、同じくこの5年間、約5000人弱の方々に、 不妊改善を目的とした、 サプリメントの摂取プランを含む生活習慣の改善策を提案させて頂きました。 さらには、この2年間、毎週土曜日に、約200人強の方々と、 妊孕性を高めることを目的に、気功やストレッチ、呼吸法を学んできました。 これらの経験から、私が教えられ、学んだことをお伝えできればと思います。 推奨された摂取量や摂取方法を守るべきであるというような、 分かりきった当たり前なお話はしません。 特に、普段、マスコミ等で、語られることが少ないことを、 お話しできればとも思います。

「バランスのよい食生活」+「サプリメント」はセット

このことは、いくら、強調しても、強調し過ぎることはないと思います。 "偏った食生活で不足しがちな栄養素をサプリメントで補いましょう!" よく聞くキャッチフレーズですが"宣伝文句"にしか過ぎません。 このような"虫のいい考え方"こそが、 サプリメントに対して、間違った、過剰な期待を抱かせている、 一番の原因であることを痛感しています。

なぜなら、偏った食生活で不足した栄養素は、 バランスのとれた食生活によってでしか補えないからです。 例えば、トマトひとつには、 1万をこえる栄養素が含まれていて、 この中には、当然、未だ分離抽出に成功していない "未知の"栄養素も含まれていると言われているのです。

そして、ここが大切なところなんですが、 サプリメントで摂取した成分は、単独で、体内で働くわけではなく、 バランスのとれた栄養環境において、 さまざまな成分とチームになって、初めて、力が発揮できるのです。

イチロー選手がいくら天才バッターだからといって、 彼一人だけでは野球が出来ないのと同じです。 バランスのとれた食生活を通じて初めて、 サプリメントが働く環境がつくられるわけです。

繰り返しますが、 サプリメントによって、 偏った食生活で不足した栄養素を補おうとするのは、 "幻想"であることを知るべきです。 逆に、そのような状態で、 サプリメントによって特定の成分だけを過剰に摂取することは、 かえって、体内の栄養バランスを崩してしまいかねません。「バランスのよい食生活」+「サプリメント」はセットなのです。

「適度な運動と生活リズム」+「サプリメント」もセット

同様に、適度にカラダを動かすことや生活のリズムを整えることは、 サプリメントに力を発揮してもらう大切な要素です。 極端な運動不足や生活リズムの乱れのために、 カラダの機能が低下した状態であれば、 いくらサプリメントを摂取しても、さほど、働けないからです。

例えば、血液の循環をよくすることは、 妊娠する力を高めるためにはとても大切なことですが、 運動によって、血流をスムーズにするカラダの働きを高めながら、 血流をよくするとされている成分を、 サプリメントで摂取することで効果が確実になるわけです。 もちろん、血流をよくするお薬を飲むという方法もありますが、 薬は強制的に血流をよくしますので、 確かな結果を得ることは出来るものの、 強制的な力は、当然、カラダに負担をかけるものですし、 期待しない働きが出てくるリスクも伴うわけです。

適度な運動と生活リズムによって、 カラダの働きを最適化することも、また、 サプリメントで取り込んだ成分を十分に使いこなす必要条件になるのです。

妊娠前のサプリメント摂取では安全性が絶対条件

妊娠前や妊娠中は、女性の一生のうちでも、 最も良質の栄養素を必要とされる時期であるとともに、 最もデリケートな時期でもあります。 いくら、妊娠する力を高めるであろうサプリメントでも、 同時に、胎児にマイナスの影響を及ぼすリスクが伴うものであれば、 摂取すべきではないことは言うまでもありません。 それでは、安全性は何を目安に判断すればよいのでしょうか? 妊娠前や妊娠中に摂取しても安全かどうかについては、 それを確認するために人間を対象として試験を実施することは、 倫理的に許されないことです。 ですから、これまでの人間の歴史から、 安全性が実証されていることでしか判断のしようがありません。

★日頃から食習慣のある食べ物の形態であること

食習慣のある食べ物は安全であることは歴史が証明してくれています。 そして、大切なことは、 この"食習慣のある食べ物の形態"から離れていけばいくほど、 未知のリスクが高くなってしまうということです。 たとえ、同じ栄養素であっても、 栄養素そのものを丸裸で摂取するのと、 日頃から食習慣のある食べ物の形態で摂取するのとでは、 体内での吸収や活用のメカニズムが異なるからです。

たとえば、いくら有用性が知られている成分であっても、 単体で、自然界に存在することはありえないわけですから、 単体で摂取しても、人間の消化器官では"異物"としてしか認識されません。 異物は取り込みたくないものです。 ポイントは、食べ物の形態にどれだけ近いかどうか、です。

★人工の化学合成された添加物は避ける

サプリメントを製造する際には、 錠剤などに加工する工程で、 材料に粘り気をもたせたり、固めたりするため、 また、飲みやすくするために表面をスベスベにするために、 どうしても添加物(摂取する目的の成分以外の成分)を、 使用せざるを得ないことがあります。 この添加物についても、 食習慣のある食べ物の形態に近いかかどうかが大切です。

人工の化学合成した添加物を使用したサプリメントは、 普通にみかけますが、 最もデリケートな時期に摂取することを考えると、 人体実験しようのないことですから、当然、避けるのが賢明です。

ホルモン環境に影響を及ぼす成分は要注意

ご承知の通り、 妊娠が成立するプロセスは、 生殖に関わるホルモンの絶妙なバランスの上に成立するものです。 ですから、いくら有用性があるからといって、 ホルモン環境に、直接、影響を及ぼす可能性のあるものは、 特に、ホルモン療法を受けている時には、避けるべきでしょう。

例えば、大豆イソフラボンを始めとする植物性エストロゲンです。植物性エストロゲンは、 本物のエストロゲンに似た働きをしますが、 その力は1000分の1とも、万分の1とも言われています。 だったら、それほどの影響はないのではと思いがちなのですが、 そう単純なものではありません。 なぜなら、ホルモンがその作用を発揮するのは、 ホルモンそのものが働くわけではなく、 ホルモンが働く場所に、 それぞれのホルモンの受容体が存在していて、 その受容体と結合することで、 スイッチがオンになるというメカニズムであるからです。

ですから、植物性エストロゲンが、 エストロゲンに似た働きをするということは、 とりもなおさず、エストロゲンの受容体を騙して、 結合してしまうということなのです。 ところが、その力は弱いわけですから、 受容体の数は限られていますから、 本物のエストロゲンの代わりに受容体と結合してしまうと、 結果として、エストロゲンの働くがとても弱いものになってしまうのです。 大豆イソフラボンのサプリメントを摂取することで、 卵胞が育ちにくくなってしまうことがあるのは、 このようなメカニズムで、 エストロゲンの力を弱めてしまうからではないかと考えられています。

ただし、大豆イソフラボンも、 大豆食品などの食品として食べると、 そにような不都合は起こり得ないのです。 なぜなら、大豆イソフラボンを大豆食品として食べると、 人間の消化器官の関門の働きで、 イソフラボンの吸収効率をコントロールし、 イソフラボンが悪さを働くようにはならないからです。 人体に本来的に備わった体を守るシステムが働くのです。

繰り返します。 ホルモン環境に、直接、影響を及ぼす植物性エストロゲン、 または、植物性エストロゲンの含有が確認されている、 サプリメントや健康食品は要注意で、 もしも、不妊治療を受けているのであれば、避けるべきです。

サプリメントを摂取する目的を明確にする

何でも、かんでも摂取すればよいというものではありません。 不妊という状態は複雑ですし、 それぞれの夫婦によって、状況は、それぞれに異なるものです。 そして、自分たちの状況は、 自分たちが、一番、よく知っているわけで、 自分たちに相応しい目的は、自分たちにしか決められませんし、 その評価は、自分たちにしか下せません。 そのために正しい客観情報が必要ですし、 私たちも具体的な改善プランを提案させていだいてはいますが、 決定し、実践するのは、お二人です。

不妊を改善することは、ある意味、選択と決断の連続です。 たとえ、サプリメントといえども、 そんな取り組みを大切にしていただきたいものです。

"これさえやっておけば大丈夫"はありえない

不妊を克服する際の"大原則"なのですが、 当然のごとく、サプリメントについても例外ではありません。 妊娠に至るプロセスは、とても複雑、かつ、不確定なところがあります。 そういった複雑で、不確定な世界であればあるほど、 単純明解な法則を求めるのが人情ではあると思うのですが、 私たちが取るべき作戦とは、 リスクになる(妊娠する力を低下させる)とされているものは避けながら、 カラダやココロのバランスを整えて、 そして、ひたすら「待つ」ということだと思うのです。 そして、カラダやココロのバランスを整えるための1つの方法が、 サプリメントということではないでしょうか?

あなたの使い方や選び方、取り組み方次第です。