油は妊娠する力や母子の心身の健康に影響する

2007年11月23日

このサイトでは、妊娠する力を高めるためだけでなく、例えば、健全な妊娠のために、そして、未だ見ぬお子さんの健康のために、さまざまなセルフケア法を考えているつもりです。もちろん、これさえ飲めば!とか、これさせ食べれば!、これさせやれば!なんていうような"魔法の杖"は存在しないのですが、妊娠する力を高め、母子の将来も含めた長期間の心身の健康を増進する、要するに、全てのテーマに共通して大きく寄与するのが、"油のとり方"です。

ただし、油の種類やその名前がややこしいということもよく聞かされます。確かに、油については、ややこしい、です。たとえば、妊娠前から妊娠3ヶ月迄、葉酸を1日400マイクログラム摂れば、お子さんの先天性異常のリスクが70%低下しますというのは、大変明解ですね。まあ、妊娠が判明した時点では遅くて、妊娠する前から飲んでおかないといけないとか、葉酸のサプリも何でもいいというわけではないのですが、"こうすれば、こうなる"という関係が単純です。

ところが、油の場合は、現実的には、油そのものを飲んでいるわけではなくて、毎日、食べる食べ物に入っていることから、油のとり方を変えることは、食生活全般を見直すことになるわけです。この辺りが、ちょっと、邪魔くさいというか、相当な覚悟が要るところかもしれません。

ただ、基本的な知識を身につけて、自分たちの食や生活習慣に応じて工夫して、正しい油の摂り方を習慣化することが出来れば、その恩恵は、とてつもなく大きいものです。

以下はこれまで報告されているもののほんの一例です。

→男女ともに、妊娠する力が高まります。
→妊娠異常や一部の流産を予防します。
→未だ見ぬお子さんの脳の発育が促進されます。
→未だ見ぬお子さんが、
  アトピーやぜんそく等のアレルギー疾患にかかるリスクが低くなります。
→母親の出産、育児ブルーのリスクも、また、低くなります。
→家族の将来のガンや心臓病にかかるリスクまが低くなります。

それほどに、毎日、摂取する油の"影響力"はとても大きいのです。それでは、本題に入ります。

正しく油をとるために

【鉄則1】油は摂りすぎてはいけない

これは、もう、ほとんどの方が知っていて、了解していると思います。

【鉄則2】油は正しい摂取バランスで摂らなければいけない

意外にも知られていないことのようです。"摂取バランス"というのはどういうことかと言いますと、
油には、いくつかの種類があって、それぞれの種類を正しい摂取バランスで摂りましょうということです。そのためには、油の種類を知ることから始めることが大切です。

【鉄則2の1】油の種類を知ることから始めましょう

大きく分けると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。

(1)飽和脂肪酸
肉の脂肪やバターなどに多く含まれます。
特徴は、常温では固体であるということです。

(2)不飽和脂肪酸
植物や魚に多く含まれます。
液体で存在します。

さらに、この不飽和脂肪酸は3つのグループに分けられます。

(2-1)オメガ6系脂肪酸(n-6系脂肪酸)
リノール酸など。コーン油、ゴマ油、大豆油、紅花油、ひまわり油、サフラワー油等。

(2-2)オメガ3系脂肪酸(n-3系脂肪酸)
アルファリノレン酸、EPA、DPAなど。魚の油、フラックスオイル(亜麻仁油)、エゴマ油、シソ油等。

(2-3)オメガ9系脂肪酸(n-9系脂肪酸)
オレイン酸など。オリーブオイル、菜種油、パーム油等。

【鉄則2の2】正しい摂取バランスで摂るために

  〔  オメガ6系脂肪酸:オメガ3系脂肪酸 = 3~4:1 〕

オメガ6系脂肪酸を3か4に対して、オメガ3系脂肪酸を1の割合で摂るのが、正しい摂取バランスだとされています。ところが、一般論として、現代の食生活の特徴として、リノール酸に代表されるオメガ6系脂肪酸を摂り過ぎていて、オメガ3脂肪酸が不足していると言われているのです。

そして、この摂取バランスの悪化が、さまざまな疾患や身体の不調、アレルギー疾患を招き、さらには、不妊の遠因になっているのではないかと考えられます。

さて、正しい摂取バランスを比率で示されても、あまり意味がありません。具体的な方法としては、まずは、摂りすぎているオメガ6系脂肪酸の摂取を減らし、不足しているオメガ3系脂肪酸の摂取を増やすことになります。

オメガ6系脂肪酸の摂取を減らすために

炒め物や揚げ物などの加熱料理に使う油をオリーブオイルやバターに変える

オメガ3系脂肪酸の摂取を増やすために

その1 魚を週に2回以上は食べる

※イワシ、アジ、サバ、さんま、かつお、サケ、まぐろ等。

その2 サラダのドレッシングにはフラックスオイル(亜麻仁油)を使う

【鉄則3】悪い油(酸化した油・トランス脂肪酸)を摂らない

最後は悪い油を摂らないように注意するということです。悪い油とは、まずは、酸化した油、古い油です。そして、今、何かと話題のトランス脂肪酸を摂らないようにすることです。トランス脂肪酸は排卵障害を招く可能性があると報告されています。このトランス脂肪酸という脂肪のことは、日本では、まだ、それほど知られていないかもしれません。

普通、植物油は、動物脂肪と違って、液体で、酸化しやすいのですが、マーガリンやスナック菓子などに使われているショートニングは、植物油であるにもかかわらず、半固形で、安定し、保存がききます。なぜかと言いますと、植物油に化学的な操作を加えて、加工しているからなんです。そして、その加工の過程で生じるのがトランス脂肪酸なのです。あと、高温下で抽出精製、脱臭されたり、あのエコナのような人工的に加工した油脂などにも、同じように、それぞれの行程で、トランス脂肪酸が生じます。

ですから、トランス脂肪酸は、マーガリン、ショートニングを使ったお菓子や食品、また、ファーストフードや加工食品、冷凍食品、さらには、人工的に加工した植物油などに含まれています。

ま と め と し て

簡単にまとめます。

★妊娠する力を高める油のとり方

→控えた方がよい油・・・飽和脂肪酸、オメガ6系脂肪酸

→もっと摂りたい油・・・オメガ3系、オメガ9系脂肪酸

→摂ってはいけない油・・・トランス脂肪酸、酸化した油

★そのために実践したいこと

→肉は少なくする

→加熱料理に使う油をオリーブオイルやバターに変える

→魚を週に2回以上は食べる

→サラダのドレッシングにはフラックスオイル(亜麻仁油)を使う

→外食は出来るだけ控える

→マーガリン、ショートニングを使ったお菓子や食品、
  また、ファーストフードや加工食品、冷凍食品は控える。
  さらには、人工的に加工した植物油は使わない。

いかがでしょうか?要は、バランスの問題です。油においても、バランスが命、なんです。正しい油の取り方を追求することは、結局、正しい食生活を実現することになり、それは、具体的には、バランスよく食べることに尽きるように思います。また、上記の具体策はほんの一例です。あとは、さらに勉強することで、それぞれの食生活に合った方法を考え、工夫し、実践してみて下さい。

最後に、もろもろのアドバイスとして

★よい油の見分け方

一言で言いますと、自然な状態に近いことになります。例えば、オリーブオイルでは、化学溶媒ではなく、自然に搾ったもの、そして、コールドプレスといって、低温下で製造していること。反対に、化学溶媒を使って、工場で大量生産している油は極力避けたいものです。たとえ、トクホと言えども、です。

★亜麻仁油(フラックスオイル)について

オメガ3脂肪酸が最も豊富に含まれているのが、亜麻仁油(フラックスオイル)です。ですから、オメガ3系脂肪酸を効率よく摂取するのは、最も適したオイルと言えます。まだまだ、知られていませんが、健康に敏感な方から、徐々に、注目されるようになりました。そのまま飲んでもよいのですが、
このオイルでサラダのドレッシングを作って食べるのがよいと思います。そのため、多少、煩わしいのですが、オイルをドレッシングとして使うことで、それまでのドレッシングに含まれていたオメガ6系のリノール酸を減らし、フラックスオイルをとることでオメガ3系を増やすことになります。

★魚油(EPA・DHA)のサプリメントについて

植物の場合は、その生産、栽培について、安全管理を徹底することが可能ですが、魚の場合の安全管理はどこまでもグレイな部分があるようです。要するに、汚染の問題です。いまや、北極海の魚でも水銀汚染は避けられないと報告されています。ですから、大量の魚から濃縮した油のサプリメントは避けて、実際に魚をたくさん食べるのが無難ではないかと考えています。魚油(EPA・DHA)のサプリメントはたくさん出回っていますが、実際に、原料の魚が、天然なのか、養殖なのか、また、いつ、どこで、どのように獲ったものかを、明らかにしている製品は、たとえ、大手の製品でもみたことはありません。わざわざ、リスクを負うことはありません。