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VOL.1185 妊娠前の食事の質が腸内細菌を介して出生児の健康に影響を及ぼす

2026年03月15日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1185                2026/3/15
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:妊娠前の食事の質が腸内細菌を介して出生児の健康に影響を及ぼす
・編集後記


トピックス Mar. 2026________________________________________________

 妊娠前の食事の質が腸内細菌を介して出生児の健康に影響を及ぼす
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妊娠前にハンバーガーやフライドポテト、炭酸飲料など、糖分や脂肪分の多い食事を摂っていると、母乳の乳タンパク質の質が低下し、出生児の健康にマイナスの影響を及ぼす可能性があるという研究結果がイギリスのグループから発表されています。

近年の研究では、こうした影響の背景に腸内細菌叢の変化が深く関わっていることがわかってきています。

妊娠前の食生活は、妊娠のしやすさだけでなく、腸内細菌叢のバランスを通じて、妊娠後の胎児の発育、さらには出生後の子どもの心身の健康状態にまで影響が及ぶという研究報告が増えています。

今回は、妊娠前の食事の質が腸内細菌叢を介してどのように母子の健康に影響するのか、複数の研究からみていきます。

◎妊娠前のファストフードが母乳の質を低下させる
最初の研究は、妊娠前のファストフードが母乳の質や出生児の健康に及ぼす影響を調べたものです。

妊娠の3週間前から、マウスにファストフードのハンバーガー、フライドポテト、甘いソフトドリンクの栄養価を模倣するように設計・加工された餌を与え、体重の変化や脂肪・糖の代謝への影響を、通常の餌を与えたマウスと比較しました。

その結果、ファストフード食は母親や胎児の体重には影響を及ぼしませんでしたが、母親の乳腺の発達と乳タンパク質組成に変化が認められました。具体的には、ファストフードを食べた母親の母乳では乳タンパク質の質が低下していたのです。

乳タンパク質は新生児の発育に非常に重要な栄養素です。つまり、妊娠前のファストフード食は、たとえ短期間で、体重に影響がなかったとしても、母乳の質を低下させ、出生児の健康にマイナスの影響を及ぼす可能性があることがわかりました。

では、なぜ体重が変わらなくても、食事の質がこれほどの影響を及ぼすのでしょうか。その鍵を握るのが腸内細菌叢です。

◎ファストフードは腸内細菌叢を乱す
オランダのフローニンゲン大学の研究では、1,425人の被験者(炎症性腸疾患患者331人、過敏性腸症候群患者223人、健常者871人)を対象に、食生活と腸内細菌叢の関係が調べられています。

その結果、全粒穀物や野菜、果物、魚、ナッツ類の摂取量が多い人の腸内では、抗炎症作用のある短鎖脂肪酸を産生する細菌が全般的に多く存在していました。

一方で、ファストフードの摂取量が多い人では、食物繊維が不足し、短鎖脂肪酸産生菌が少なく、炎症を促進する腸内細菌が多く生息していることがわかりました。

この腸内環境の違いこそが、体重の変化がなくても食事の質が母子の健康に影響を及ぼすメカニズムの一つと考えられています。ファストフード中心の食事は、腸内に炎症を引き起こしやすい環境をつくり、それが全身の代謝や免疫機能、さらには乳腺の発達や母乳の質にまで波及する可能性があるのです。

◎腸内細菌叢は子宮内環境ともつながっている
最近、子宮内の細菌叢と着床環境の関連にも関心が高まっています。子宮内のラクトバチルス(乳酸菌)の割合が多いと妊娠に良好な影響を及ぼす可能性があるという報告がなされています。

重要なのは、子宮内の細菌叢は独立して存在しているわけではなく、膣内細菌叢も含めて、最も多くの常在細菌が生息する腸内細菌叢と相関していることです。

つまり、妊娠前の食事の質は、腸内細菌叢のバランスを変え、それが膣内や子宮内の細菌叢にも影響し、着床環境や妊娠のしやすさ、さらには出生児の健康にまで連鎖的に作用する可能性があるのです。

◎ファストフードと妊娠率の関係
腸内細菌叢への影響を裏づけるように、ファストフードの頻度と妊娠のしにくさの関連を示した大規模研究があります。

オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、英国の4ヶ国、6都市の妊婦5,598名を対象にした研究では、初めての検診時(妊娠14〜16週)に、果物、緑色野菜、魚、ファストフードの摂取頻度を質問票で調査し、それぞれの食べ物の摂取頻度と不妊症(妊娠までに1年以上かかったケース)との関係が調べられています。

その結果、果物の摂取頻度が少ない女性ほど、また、ファストフードを食べる頻度が多い女性ほど、妊娠までの期間が長くなり、不妊症の割合が高いことがわかりました。

果物や野菜が多い食事は腸内の善玉菌を増やし、ファストフードは炎症を促す菌を増やすという先ほどの研究結果を踏まえると、食事の質が腸内細菌叢を介して妊娠のしやすさにも影響していることが見えてきます。

◎妊娠前の食事の影響は腸内細菌叢を通じて長期で広範に
これらの研究を総合すると、妊娠前の食事の質が腸内細菌叢のバランスを左右し、その影響は次のように連鎖的に広がることがわかります。

食事の質 → 腸内細菌叢 → 全身の炎症・代謝 → 子宮内環境・妊娠しやすさ → 母乳の質 → 出生児の健康

理想的な食べ方のモデルは地中海食です。全粒穀物(玄米や全粒粉パン)に野菜や果物、魚中心の食事で、ナッツ類も習慣的に食べるというもの。これらの食品は腸内の善玉菌を育て、抗炎症作用のある短鎖脂肪酸の産生を促してくれます。

反対に、加工食品やファストフードは食事の中心に据えるのではなく、たまに食べる程度にとどめるのが無難です。

たとえ体重がキープできていても、関係ありません。多くの研究で重要なのは体重ではなく、食事の中身が腸内細菌叢の質を決め、それが妊娠から出生児の健康まで影響することが示されているからです。

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編集後記____________________________________________________________

食事の質が及ぼす影響は多彩で広範です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1185
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