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妊娠しやすいカラダづくり No.1154 2025/8/10
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:妊娠前からの葉酸サプリメントと受精後の胎盤成長
・編集後記
最新ニュース解説 Aug, 2025_________________________________________
妊娠前からの葉酸サプリメントと受精後の胎盤成長
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妊娠前の葉酸濃度が高いほど妊娠初期の胎盤成長が良好であり、また、妊娠前からの葉酸サプリメント開始は妊娠後の開始と比べても妊娠初期の胎盤成長が良好であることがオランダのロッテルダム周産期コホート研究で明らかになりました(1)。
妊娠前から葉酸をサプリメントで補充することで出生児の先天異常、具体的には二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症リスクが低くなることが知られていますが、妊娠前から葉酸サプリメントを開始しておくことは、妊娠の開始である胎盤の成長にも寄与することがわかりました。
胎盤は受精卵の着床後に子宮内で形成される臓器で、母体と胎児をつなぎ、胎児の成長に必要な酸素や栄養を供給する役割を担い、胎児から排出された老廃物や二酸化炭素を母体に戻す役割も果たします。
胎盤は、胎児が子宮内で成長するための基盤となる重要な臓器ですので、胎盤の成長は胎児の発育と密接に関わっています。
今回の研究はそこに葉酸が不可欠であることが確かめられました。
◎どんな研究だったのか?
2010年1月から2020年12月迄、妊娠初期に葉酸やビタミンB12の血中濃度を測定した480名の妊婦、及び葉酸サプリメントの開始時期が判明した875名の妊婦がロッテルダム周産期コホートに登録されました。
赤血球中葉酸濃度と血清ビタミンB12濃度は、妊娠初期の血液検査で測定され、濃度で4つのグループに分けられました。
また、葉酸サプリメントの使用開始時期は質問票を用いて調査されました。
さらに、胎盤体積は、妊娠7週、9週、11週に実施された連続的な3D超音波検査により測定され、母体の赤血球中葉酸および血清ビタミンB12濃度と妊娠初期の胎盤体積との関係が解析されました。
◎どんな結果だったのか?
赤血球葉酸濃度が最も低かったグループでは、最も高かったグループ群に比べ、妊娠7週時で18.7%、11週時で9.9%、胎盤体積が小さかったことがわかりました。
また、酸サプリを妊娠後に開始したグループは、妊娠前から開始したグループに比べ、7週で16.9%、11週で8.9%、胎盤体積が小さかったこともわかりました。
血清葉酸でも同様の傾向はみられましたが、RBC葉酸ほど明確ではありませんでした。
これらのことから妊娠初期の胎盤成長は、母体の十分な葉酸状態と妊娠前からの葉酸サプリ開始により促進される可能性があることがわかりました。
妊娠前からの葉酸サプリ摂取が推奨されます。
◎葉酸とは?
葉酸は、水溶性のビタミンB群の一種で、遺伝物質であるDNAの合成やアミノ酸の代謝、タンパク質の合成、ビタミン代謝に関与しています。
ほうれん草から発見されたという経緯の通り、植物に含まれてはいますが、実際には植物性食品だけでなく、動物性食品であるレバーなどにも多く含まれています。
葉酸は細胞が分裂、増殖する際に遺伝情報であるDNAが正しくコピーされるのに必要な酵素を助ける補酵素として働きます。
そのため、もしも、葉酸が不十分であると、細胞の分裂や成長、そして、DNAの形成がうまくいかなるなるおそれが出てきます。
卵子と精子が出会い、受精が成立した後は、細胞が最も活発に分裂が繰り返される時です。妊娠前から妊娠中には、受精卵や胚、胎児には葉酸が大量に蓄積されなければならないため、母体で葉酸が代謝されるスピードが早まり、葉酸の必要量が著しく(普段の約2倍に)増加します。これが、葉酸が妊娠、出産に最重要ビタミンとされる理由です。
葉酸は細胞が分裂、増殖する際に必須の働きをするわけですから、葉酸のサプリメント服用効果は、決して、先天異常の予防だけに留まりません。
これまで報告されている研究結果をみてみると、流産のリスクや早産、低体重出生児が生まれるリスク、さらには、口唇・口蓋裂や自閉症、重度の言語発達遅延、重度の先天性心疾患を予防することに関連するとの報告もなされています。
そして、生殖医療の治療成績にも良好な影響を及ぼすことを示唆する研究報告も増えてきたというわけです。
◎葉酸は妊娠前から必要量が倍増します
厚生労働省が日本人の食事摂取基準で定める葉酸の推奨量(ほとんどの人が必要量を満たす量)は、通常(非妊娠)時、妊娠計画時から妊娠3ヶ月、妊娠時、授乳時によって異なります。
特に妊娠計画時からは急増します。
通常時の推奨量は240μgで、妊娠計画開始から妊娠3か月まではサプリメントで1日400μg(食事からであれば1日に800μg)の補充が推奨されています。
推奨量は妊娠時に240μg、授乳時に100μg付加されますので、3か月以降の妊娠期間中は1日に480μgをめざして、葉酸を多く含む食品をバランスよく摂取することが大切です。
文献
1)Hum Reprod 2025; 40: 1485
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編集後記____________________________________________________________
暑い日々が続きますが、こんな時こそ、カラダが冷えやすなりますので、気をつけましょう。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1154
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