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妊娠しやすいカラダづくり No.1143 2025/5/25
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:妊娠前の睡眠の状況と流産や有害な妊娠転帰との関係
・お知らせ:不妊相談会
・編集後記
最新ニュース解説 May. 2025__________________________________________
妊娠前の睡眠の状況と流産や有害な妊娠転帰との関係
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妊娠前から早く就寝することは妊娠後の早産や妊娠合併症のリスクが低くなることに関連し、反対に生活リズムの乱れで生じる時差ボケ状態は妊娠後の妊娠合併症のリスクが高くなることに関連することが、アメリカの研究で明らかになりました(1)。
最近、睡眠と妊娠しやすさとの関係について、多くの研究報告がなされていますが、妊娠前の睡眠の状態が妊娠後の流産や妊娠合併症リスクにどのように影響を及ぼすのかについては、それほど調査されていませんでした。
今回の研究は、EAGeR試験という、流産歴にある女性に妊娠前の低用量アスピリンの有効性を調査したランダム化比較対照試験の二次解析として実施されました。
◎どんな研究だったのか?
2006年から2012年にかけて実施されたEAGeR試験に参加した流産歴のある女性1,228人を対象に、研究参加時の睡眠時間、就寝から入眠までの時間、就寝時間と起床時間の中間点となる時間、社会的時差ぼけ(平日と休日の睡眠時間に差が生じることによる生活リズムの乱れ)等の睡眠の状況と流産や早産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病のリスクの関係を調べました。
追跡期間中に797人の女性が妊娠し、188人が流産しました。
◎どんな結果だったのか?
妊娠前の睡眠の状況と流産リスクとは関連しませんでした。
ただし、妊娠前からの早い睡眠中間点、すなわち、早い就寝時間は早産や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の低いリスクと関連しました。
また、反対に1時間以上の社会的時差ぼけ、すなわち、生活リズムが乱れ、体内時計が1時間ずれることは早産や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の高いリスクと関連しました。
このように妊娠前の睡眠は流産のリスクと関連しませんでしたが、就寝時間は早産や妊娠合併症のリスクにマイナスの影響を及ぼす可能性があることがわかりました。
◎生体リズムを整える
今回の研究では、妊娠前から早く寝ること、また、平日でも休日でも同じ生活リズムを維持することが妊娠後の健康に良好な影響を及ぼすことが示唆されました。
ポイントは、早く寝て、早く起き、体内時計をリセットし、規則正しい生活リズムです。
私たち人間のさまざまな活動にはそれぞれのリズムがあり、お腹が空けば食べ、朝になると目が覚め、夜になると眠くなります。もっと詳しくみてみると、体温や血圧、ホルモンの分泌などにも、ぞれぞれに一定のリズムがあります。
たとえば、生殖に関連するところでは、女性には26日から34日の月経サイクルがあり、夜中の0時から2時にプロゲステロンが、10-14時に卵胞刺激ホルモンが、朝の4-8時に男性ホルモンの分泌量が多くなります。
要するに、人間の活動にはすべて適切な時(タイミング)があり、それらは、全て、私たちが意識するしないにかかわりません。
そして、それらの「時」は、生体リズムが奏でています。
いくつもの周期のリズムが備わっていますが、代表的なのは約24時間周期、すなわち、おおよそ1日周期なので、サーカディアン(慨日)リズムと呼ばれています。
そして、サーカディアンリズムをつくりだし、コントロールし、調整しているのが、前述の体内時計と呼ばれる、時計遺伝子です。
◎体内時計のリセット
体内時計のつくりだすサーカディアンリズムは、なぜか、24時間ではなく、24.5時間で、自然のサイクル(地球の自転リズム)よりも30分ずれているということになり、そのままにしておくと、24日で昼と夜が逆転してしまいます。
そのため、毎日、リセットして、体内時計をあわせてやる必要があります。
リセットの役割を担っているものはいくるかあるようですが、最も強力なのは、太陽の光を受けることです。
朝、起きて太陽の光を浴びることで、カチッと体内時計がリセットされます。
体内時計は光の影響を強く受けるので、深夜に明るい光を浴びたり、朝に太陽の光を浴びなければ、生体リズムは乱れてしまいます。
当然、睡眠の質や免疫力が低下したり、ホルモンのバランスが崩れてしまいます。生活のリズムが乱れると、体調を崩したり、病気を招いてしまう根本原因です。
積極的に体内時計を手入れし、ケアすることが妊娠、出産には大切です。
その具体的な方法です。
1)早く寝る:どんなに遅くとも23時迄には寝る。
2)早く起きる:起床後14-16時間後にメラトニンの分泌が始まります。
3)起床後太陽光を浴びる:出来れば45分以上散歩して。
4)朝食は必ず食べる。:起床後2時間以内に。
5)朝食にはバランスよく、タンパク質も必ず食べる:リセット効果が高まります。
6)以上のことを毎日同じ時間に行う:週末も同じリズムを維持します。
7)夜はスマホやタブレット、PCを見ない。
特に、早寝早起き、朝食、スマホが鍵になりそうです。
文献:
1)Hum Reprod 23 April 2025 Advance Article https://doi.org/10.1093/humrep/deaf074
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お知らせ__________________________________________________________
東京都調布市のウイメンズクリニック神野主催の第33回不妊相談会が2025年6月21日の土曜日に開催されます。
院長の神野正雄先生は、情熱をもって不妊治療、特に、高度生殖医療に取り組まれ、高齢による卵巣機能低下が原因の不妊症に対して、独自の考え方と方法で、高い実績を挙げておられる先生です。
当サイトのドクターに訊くでも、「質のよい卵を育むための生活習慣~高齢不妊との正しい戦い方」というテーマでインタビューさせていただき、記事にしています。
神野先生は、現代における不妊の主な原因は、晩婚化によって、お子さん望むようになったときには、女性は、既に、妊娠しづらい年齢に差し掛かっていることが多くなったこと。
また、現代に特有の不健康な生活習慣、すなわち、夜更かし、ストレス、歩かない生活、質の悪い食生活などが、インスリン抵抗性を招き、卵子や精子の質を低下させていることを指摘されています。
さらに、抗糖化機能性食品「ヒシエキス」が、ART反復不成功の高齢不妊患者さんの妊娠率を改善することを臨床試験により見出され、国内や海外の学会で発表され、論文にもなっています。
これまでの不妊相談会では、なぜ不妊になるのか、カップルで取り組むべきことはどんなことなのか、高度不妊治療とはどんなものなのかを解説しています。
個別相談も可能だそうです。
※先着28名まで。
◎第33回不妊相談会
日程:2025年6月21日(土)
時間:13:00~15:00
場所:ウィメンズクリニック神野
定員:28名
費用:無料
参加希望の方は下記あてお電話でお申込みください。
042-480-3105
・詳細はこちら
https://xs132599.xsrv.jp/setumeikai.html
・ウイメンズクリニック神野サイト
https://xs132599.xsrv.jp/index.html
編集後記____________________________________________________________
妊娠前からの睡眠の質は妊娠しやすさだけでなく、妊娠後の健康にも重要なようです。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1143
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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