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妊娠しやすいカラダづくり No.1142 2025/5/18
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:EPA・DHAはフタル酸エステルによる妊娠への悪影響を軽減するかもしれない
・お知らせ:不妊相談会
・編集後記
最新ニュース解説 May. 2025__________________________________________
EPA・DHAはフタル酸エステルによる妊娠への悪影響を軽減するかもしれない
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EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸を多く摂取してい女性は、フタル酸エステルによる妊娠への悪影響が軽減される可能性があることが、ハーバード大学の研究で明らかになりました(1)。
フタル酸エステルは、プラスチックなどを柔らかくするために、床材や壁紙、ホース、シャワーカーテンなどのビニール製品、医療機器、おもちゃ、文房具、香水、化粧品、接着剤、塗料、農業用フィルムなどに広く使われてきた化学物質です。
ところが、利便性は高いものの、健康や環境へのリスクが懸念されており、生殖機能への悪影響も懸念されています。
実際に、精液の質の低下や採卵数の低下、ART治療後の生児獲得率の低下、早産や流産リスクの上昇などが報告されています。
そのフタル酸エステルの生殖機能への悪影響が、魚に豊富に含まれるDHAやEPAを多く摂取することで軽減されるかもしれないというのです。
◎どんな研究だったのか?
2004~2017年にEARTH研究に参加し、体外受精を受けた351人の女性を対象に、血液中のEPA・DHAの量と尿中のフタル酸エステルの量を測定し、流産や生児獲得率などの治療成績との関連を統計的に分析しました。
年齢や体型、喫煙歴、不妊の原因、治療年などの影響は調整して解析しました。
尚、EARTH研究とは、ハーバード大学による研究で、マサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に、治療成績に影響する要因について調査が行われています。
◎どんな結果だったのか?
EPAとDHAの血中濃度が最も低かった女性では、フタル酸エステルの量が多いほど流産が増え、生児獲得率が下がる傾向がみられました。
一方、EPAとDHAの量が中から高い女性では、フタル酸エステルとの関連は見られませんでした。
たとえば、EPA+DHAが少ない女性の中で、フタル酸エステルの量が最も少なかったグループでは流産率は5%、最も多かったグループでは44%に上昇していました。
一方、EPA+DHAが多い女性では、同じようにフタル酸エステルが多くても、流産率は11%と大きく上昇はしていませんでした。
また、生児獲得に関しても同様の傾向が見られましたが、着床や妊娠成立そのものには明確な違いはありませんでした。
このことから、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸を多く摂っている女性では、フタル酸エステルによる妊娠への悪影響が軽減される可能性があることが示されました。
◎有害な化学物質とさまざまな栄養素との相互作用
フタル酸エステル以外にも有機塩素系殺虫剤・農薬のDDTやプラスチック容器から溶け出すビスフェノールA(BPA)、さらには、大気中の汚染物質であるPM10やPM2.5なども、妊娠や出産にマイナスの影響を及ぼす可能性が指摘されています。
そもそも、すべての化学物質は多少なりとも有害性がありますが、現代社会では、さまざまな化学物質が私たちの生活のあらゆる面で、なくてはならないものになっています。
今後は、もっと身近なものになることはあっても、少なくなっていくことは考えにくいところです。
であれば、その対策として化学物質が体内に入るのを神経質に避けても限界があります。
入れないことはもちろんのこと、私たちの身体に備わった、無毒化や排泄作用を高めることも大切なのではと思います。
それは、もともと私たちの身体に備わっている、あらゆる有害なものからの自己防御反応のことです。
たとえば、ビタミンB群にはDDTの生殖機能への有害性に対する抑制作用があります(2)。
ビタミンB12が充足している女性ではDDTレベルと妊娠率は関連しませんが、ビタミンB12が不足し、かつ、DDTレベルが高い女性では妊娠率が低く、ビタミンB群濃度とDDT、妊娠率との相互作用が確認されています。
また、大豆食品や葉酸にはBPAの生殖機能へのマイナスの影響を打ち消す作用があります(3)。
BPAは食器や容器などに使用され、そこから溶けだし、体内に取り込まれていると考えられていますが、大豆食品の摂取量が少ない、もしくは、葉酸濃度が低い女性ではBPA濃度が高くなるほど体外受精妊娠率が低くなる一方、大豆食品の摂取量が多い、もしくは、葉酸濃度が高い女性ではBPA濃度が高くなっても妊娠率は低下しません。
さらに、葉酸には大気汚染物質による生殖機能の低下を緩和するという報告までなされています(4)。
必須栄養素には、化学物質の生殖機能へのマイナスの影響を打ち消してくれる働きを有するものがあるようです。
加工食品を多量に食べることは、化学物質を取り入れやすくなる一方、栄養バランスが悪くなり、必須栄養素が不足するリスクが高くなります。
一方、新鮮な食材をメインにバランスよく食べることは、化学物質を取り入れたり、必須栄養素が不足したりするリスクの低下につながります。
いずれかが習慣化すると、マイナスとプラスの差の蓄積の影響は小さくはないかもしれません。
文献:
1)Environ Health Perspect . 2025 May 6. doi: 10.1289/EHP15942.
2)Am J Clin Nutr 2014; 100: 1470
3)J Clin Endocrinol Metab 2016; 101: 1082
4)Epidemiol. 2019; 188:1595
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お知らせ__________________________________________________________
東京都調布市のウイメンズクリニック神野主催の第33回不妊相談会が2025年6月21日の土曜日に開催されます。
院長の神野正雄先生は、情熱をもって不妊治療、特に、高度生殖医療に取り組まれ、高齢による卵巣機能低下が原因の不妊症に対して、独自の考え方と方法で、高い実績を挙げておられる先生です。
当サイトのドクターに訊くでも、「質のよい卵を育むための生活習慣~高齢不妊との正しい戦い方」というテーマでインタビューさせていただき、記事にしています。
神野先生は、現代における不妊の主な原因は、晩婚化によって、お子さん望むようになったときには、女性は、既に、妊娠しづらい年齢に差し掛かっていることが多くなったこと。
また、現代に特有の不健康な生活習慣、すなわち、夜更かし、ストレス、歩かない生活、質の悪い食生活などが、インスリン抵抗性を招き、卵子や精子の質を低下させていることを指摘されています。
さらに、抗糖化機能性食品「ヒシエキス」が、ART反復不成功の高齢不妊患者さんの妊娠率を改善することを臨床試験により見出され、国内や海外の学会で発表され、論文にもなっています。
これまでの不妊相談会では、なぜ不妊になるのか、カップルで取り組むべきことはどんなことなのか、高度不妊治療とはどんなものなのかを解説しています。
個別相談も可能だそうです。
※先着28名まで。
◎第33回不妊相談会
日程:2025年6月21日(土)
時間:13:00~15:00
場所:ウィメンズクリニック神野
定員:28名
費用:無料
参加希望の方は下記あてお電話でお申込みください。
042-480-3105
・詳細はこちら
https://xs132599.xsrv.jp/setumeikai.html
・ウイメンズクリニック神野サイト
https://xs132599.xsrv.jp/index.html
編集後記____________________________________________________________
栄養素には、相互作用を含めて、まだまだ、知られていない有用な働きがあるのかもしれません。さまざまな成分を偏りなく、摂取することは本当に大切ですね。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1142
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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