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妊娠しやすいカラダづくり No.1141 2025/5/11
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今週の内容__________________________________________________________
・最新ニュース解説:腸内細菌によい影響を及ぼす食事と不妊症リスクとの関係
・お知らせ:不妊相談会
・編集後記
最新ニュース解説 May. 2025__________________________________________
腸内細菌によい影響を及ぼす食事と不妊症リスクとの関係
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腸内細菌叢によい影響を及ぼす食事をしているが女性は不妊症のリスクが低いという研究報告がなされています(1)。
研究は中国の江南大学のグループがアメリカの国民健康栄養調査のデータを用いて実施されたもので、これまでも腸内環境と妊娠しやすさの関係についての報告がなされていますが、この研究では腸内細菌の働きによる免疫調整や葉酸濃度上昇を介して不妊症のリスクが低下する可能性が示唆されています。
腸内環境は重要です。
◎どんな研究だったのか?
2013年から2018年のNHANES(全米健康栄養調査)の食事調査データから腸内細菌叢のための食事指数(DI-GM)を算出し、その関連性を解析しました。
また、リンパ球数(LC)と赤血球葉酸(RBC葉酸)がDI-GMによる女性不妊リスクにどのように媒介効果を持つかについても検討されました。
DI-GM(Dietary Index for Gut Microbiota)の算出方法は以下の通りです。
合計14の食品または栄養素が構成成分として特定されています。具体的には、アボカド、コーヒー、緑茶、クランベリー、発酵乳製品、ブロッコリー、ひよこ豆、食物繊維、大豆、全粒穀物が腸内細菌に有益な成分、その一方、加工肉、精製穀物、赤肉、高脂肪食(脂肪から得られるエネルギーが40%以上)は有害な成分としています。
食事調査(本研究では24時間思い出し法)で腸内細菌に有益な成分の摂取量が性別ごとの中央値以上であればスコア1が付与され、有害な成分については、摂取量が性別ごとの中央値または高脂肪食の場合は40%以上であればスコア0が付与され、それ以外の場合はスコア1が付与され、その合計をDI-GMとして算出します。本研究の24時間思い出し法では緑茶が含まれていないため、スコアは0から13になります。
このスコアが高いほど腸内細菌によい影響を及ぼし、低いほどマイナスの影響を及ぼす食べ方になります。
◎どんな結果だったのか?
1555名のうち311名が女性不妊と診断されており、DI-GMスコアが高いほど女性不妊リスクが低いことがわかりました。
また、DI-GMスコアで4つのグループに分けると、3番目に高いグループと最も高いグループは最も低いグループに比べて不症リスクが有意に低いことがわかりました。
腸内細菌叢によい影響を及ぼす食事をしている女性ほど不妊症になりにくいことがわかりました。
さらに、それらの関係には免疫反応に関わるリンパ球数と赤血球中の葉酸濃度は関わることも明らかになり、腸内細菌によい食事をすることで免疫が整い、赤血球中の葉酸濃度が上昇することが介している可能性が示唆されました。
腸には免疫細胞の約70%が集まっており、腸内細菌は免疫調整に深く関わっていますし、あまり知られていないかもしれませんが、腸内細菌は葉酸を合成しています。
◎腸内細菌叢によい食品
この研究では、腸内細菌叢のための食事指数が用いらています。
アボカド、コーヒー、緑茶、クランベリー、発酵乳製品、ブロッコリー、ひよこ豆、食物繊維、大豆、全粒穀物が腸内細菌によい食品で、加工肉、精製穀物、赤肉、高脂肪食(脂肪から得られるエネルギーが40%以上)は有害な成分とされれいます。
端的に言いますと、アボカド、コーヒー、緑茶、クランベリー、発酵乳製品、ブロッコリー、ひよこ豆、食物繊維、大豆、全粒穀物をしっかり食べて、加工肉、精製穀物、赤肉、高脂肪食は出来るだけ少なくするように食べることが腸内環境によいとくことになります。
腸内細菌は私たちが食べたものを餌として、生息していますので、食事内容が腸内細菌の種類を決めることになるというわけです。
◎色とりどりの野菜や発酵食品
最近、さなざまな種類の植物を摂取することが、腸内細菌叢の多様性の向上に大きく寄与するこという研究報告がなされています(2)。
普段、何種類の野菜を食べているでしょうか。
意識しないと、決まった種類の野菜になってしまいがちです。
ところが、野菜類は40以上の科に分類され、さらにそれぞれの科には何百種類も存在するそうです。
それだけ数多くの野菜が存在します。
これまでの報告では、出来るだけ多くの種類の野菜を食べることが理想とされています。
疫学研究では食事中の野菜類の種類を増やすことで、2型糖尿病やがんにかかりにくくなることがわかっています。
野菜に含まれるビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどがお互いに協働して、細胞内情報伝達経路を活性化したり、抑制したりしていると考えられています。
有用な成分の種類や含有量は、野菜によって大きく異なります。
そのため、多種多様な野菜類を食べることが全身性の炎症反応の低下と関連すると考えられているようです。
毎食、さまざまな種類の生野菜や調理した野菜を摂ることが理想です。
また、発酵食品の習慣的な摂取も重要です。
発酵食品を習慣的に食べることで腸内環境を整えることによる影響は、妊娠しやすさだけでなく、出生児の心身の発育にも良好な影響を及ぼすという研究報告も、最近、相次いでなされています。
その中の一つに、環境省によるエコチル調査という、母親の生活習慣と出生児の健康の関係を調べる研究があります。
それによりますと、発酵食品を習慣的に食べていた女性のお子さんは、そうでない女性のお子さんに比べて3歳時点の神経発達が良好であるというのです。
ヒトと共存している細菌による、宿主の心身の健康への影響のメカニズムは、決して単純なものではなく、直接的、間接的なものも含めて、極めて複雑です。
私たちに出来ることとしては、特定の食材や食品、サプリメントに偏ることなく、さまざまな種類の食材をバランスよく食べること、それに尽きます。
発酵食品の場合でも、馴染みのあるものだけでも30種類以上もあり、それぞれに異なる特徴があります。
チーズや納豆、味噌、ヨーグルト、乳酸菌飲料(サプリメント)、酢、ぬか漬け、キムチ、甘酒等、普段の食生活に組み入れて、習慣的に食べてみてはいかがでしょうか?
文献:
1)J Reprod Immunol 2024;163:103543.
2)mSystems 2019; 4: e00261
3)PLoS One. 2024 Jun 21;19(6):e0305535
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お知らせ__________________________________________________________
東京都調布市のウイメンズクリニック神野主催の第33回不妊相談会が2025年6月21日の土曜日に開催されます。
院長の神野正雄先生は、情熱をもって不妊治療、特に、高度生殖医療に取り組まれ、高齢による卵巣機能低下が原因の不妊症に対して、独自の考え方と方法で、高い実績を挙げておられる先生です。
当サイトのドクターに訊くでも、「質のよい卵を育むための生活習慣~高齢不妊との正しい戦い方」というテーマでインタビューさせていただき、記事にしています。
神野先生は、現代における不妊の主な原因は、晩婚化によって、お子さん望むようになったときには、女性は、既に、妊娠しづらい年齢に差し掛かっていることが多くなったこと。
また、現代に特有の不健康な生活習慣、すなわち、夜更かし、ストレス、歩かない生活、質の悪い食生活などが、インスリン抵抗性を招き、卵子や精子の質を低下させていることを指摘されています。
さらに、抗糖化機能性食品「ヒシエキス」が、ART反復不成功の高齢不妊患者さんの妊娠率を改善することを臨床試験により見出され、国内や海外の学会で発表され、論文にもなっています。
これまでの不妊相談会では、なぜ不妊になるのか、カップルで取り組むべきことはどんなことなのか、高度不妊治療とはどんなものなのかを解説しています。
個別相談も可能だそうです。
※先着28名まで。
◎第33回不妊相談会
日程:2025年6月21日(土)
時間:13:00~15:00
場所:ウィメンズクリニック神野
定員:28名
費用:無料
参加希望の方は下記あてお電話でお申込みください。
042-480-3105
・詳細はこちら
https://xs132599.xsrv.jp/setumeikai.html
・ウイメンズクリニック神野サイト
https://xs132599.xsrv.jp/index.html
編集後記____________________________________________________________
さまざまな種類の野菜と発酵食品で腸内環境を整えましょう。
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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.1141
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
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