メルマガ

VOL.1122 睡眠障害と不妊症

2024年12月29日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.1122              2024/12/29
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:睡眠障害と不妊症
・編集後記


最新ニュース解説 Dec. 2024__________________________________________

  睡眠障害と不妊症
──────────────────────────────────
女性の睡眠障害は、妊娠するまでに要する期間が長くなったり、不妊治療の治療成績の低下を招く可能性があることが中国で実施された研究で明らかになりました(1)。

研究はシステマティックレビューという手法によるもので、これまで睡眠障害と不妊症や不妊治療との関係を調査した研究を収集し、それらの結果を一定の基準で統合しています。

睡眠や生活リズムは生殖機能に密接に関係しているようです。

◎どんな研究だったのか?
2010年1月1日から2023年11月1日の間に発表された、睡眠パターンやあらゆる種類の睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群と女性の生殖機能との関連性を調査した研究をリサーチし、抽出しました。

その中から19件の研究が抽出されました。

◎どんな結果だったのか?
不妊症女性は睡眠の質が低い女性が多く、夜更かしすることが多いことがわかりました。

また、睡眠障害は不妊症と関連し、睡眠の質の低下や長い睡眠時間、短い睡眠時間は採卵卵子の数の減少や胚の質の低下、受精率の低下など、不妊治療成績低下と関連していました。

また、睡眠時無呼吸症候群、特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性で、不妊症で多く見られました。

◎日本人の睡眠の状況
厚労省による国民健康・栄養調査(令和4年版)によりますと、ここ1ヶ月間、睡眠て?休養か?十分にとれていない人の割合は30代で27.5%て?、40代で28.4%、平成21年からの推移て?みると男女とも有意に増加しています。

また、1日の平均睡眠時間は6時間未満の人の割合は、30代で30.7%、40代で32.7%でした。

このように30代、40代女性の睡眠の状況は決定よいとは言えません。

◎スマホとの付き合い方で睡眠の質が左右される 妊娠や出産に至るプロセスは、あらゆることが適切なタイミングで起こることが重要です。

不妊治療は、たいてい、カップルに適切な性交のタイミングを指導されることからはじまります。

また、ほとんどの女性の不妊検査しかり、治療が始まれば、あらゆる治療には施されるタイミングが決められています。

さらに、タイムラプスインキュベーターの普及で、培養器の中の胚の分割スピードの適切なタイミングがあること、遺伝子解析技術の進歩で胚移植に個々に適切なタイミングもわかるようになりました。

そして、このタイミングのベースになるのが女性の身体のサイクルです。

つまり、妊娠や出産は女性の身体が奏でるリズムが進めていると言えるわけです。

では、なにがこのリズムをつくりだしているのでしょうか?

答えは「体内時計」です。

この体内時計が、睡眠やホルンモン、神経活動、免疫など、さまざまな生理現象にリズムをもたらしているのです。性周期のない男性も同じです。

メインの体内時計は一つで、脳内の視交叉上核、すなわち、目の神経が交差する部分の上にある神経細胞の集まりに存在しています。

そして、メインの他に全身の細胞、一つ一つにもあります。

メイン時計の1日の長さは、24時間より長いのですが、朝に目から入る光によって調節されます。

ところが、夜間に光を浴びると時計が狂ってしまいますので、寝る前はテレビやスマホは見ないようにすべきです。

特に、スマホは、テレビなどに比べて、目(脳)に近いので、その影響は強力です。40歳以上の女性では体内時計の乱れが卵巣機能低下を促進するという研究報告がなされています。

また、スマホの夜間使用が精子の質を低下させるとの研究報告まであります。

夜間、そして、起床後すぐのスマホ使用は、女性でも、男性でも、妊娠する力を低下させます。

そして、スマホ使用を制限するだけでなく、以下の通り、生活リズムを意識して、体内時計を整えましょう。

1)夜は暗くする。
2)夜はスマホをみない。
3)早く(遅くとも12時までに)寝る。
4)朝は早く(決まった時間に)起きる。
5)目覚めと同時に自然光を浴びて、水を飲む。
6)朝食(タンパク質)を食べる。
7)午後3時以降はカフェリンを摂らない

体内時計を整え、年齢とともに分泌量が低下するとされているメラトニンの分泌量を維持することで、睡眠の質を維持する根本テーマになります。

朝食でタンパク質を食べることは体内時計のリセット効果が大きいことが知られていますので、体内リズムのメンテナンスに必須です。

朝食を食べる習慣はART成績の向上に寄与することが東京医科大学を中心としたグループの研究で明らかにされています(2)。

年が切り替わるこのタイミングに体内時計にメンテナンスに取り組んでみてはいかがでしょうか?


文献)
1)BMC Women's Health (2024) 24:643
2)Nutrition 2024; 127: 112555

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@partner-s.info


編集後記____________________________________________________________

よいお年をお迎えください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1122
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
企業サイト:https://partner-s.info/
情報サイト:https://www.akanbou.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,639部
・まぐまぐ: 1,988部
・合計部数: 3,627部(12月29日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。