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VOL.1083 妊娠中のナッツの摂取は出生児のピアトラブルリスク低下に関連

2024年03月31日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1083            2024/3/31
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:妊娠中のナッツの摂取は出生児のピアトラブルリスク低下に関連
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Mar. 2024__________________________________________

 妊娠中のナッツの摂取は出生児のピアトラブルリスク低下に関連
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妊娠中にナッツを食べることは、出生児の5歳時点での仲間関係を育むことに障害になるリスク低下に関係することが出生前コホート研究「九州・沖縄母子保健研究」で明らかになりました(1)。

妊娠前から妊娠中の母親の食事内容は子供の発育と密接に関係することが知られています。

ナッツは栄養豊富な食品として注目されていますが、日本人ではナッツを習慣的に食べることは一般的でないことから、妊娠中に母親がナッツを食べることが出生児の行動問題のリスクとの関連を調べた研究はほとんどなされていませんでした。

今回、アレルギー疾患やうつ病、口腔疾患、低出生体重等のリスク要因を調査することを目的に実施されている出生前コホート研究である「九州・沖縄母子保健研究」で、妊娠中のナッツ摂取は出生児のピアトラブルのリスク低下と関連していたことがわかりました。

◎どんな研究だったのか?
九州・沖縄母子保健研究に参加した1199組の母子を対象に、食物摂取頻度調査票を用いて妊娠中食事内容を調査し、出生児の5歳時点の情緒的問題や行為問題、多動性問題、仲間問題、低い向社会的行動を専門の調査票(Strengths and Difficulties Questionnaire)を用いて評価し、妊娠中のナッツの摂取が出生児の仲間関係を育む能力にどのように影響しているかを調べました。

◎どんな結果だったのか?
妊娠中にナッツ類を食べていた母親の出生児は食べていなかった母親の出生児と比較して、仲間関係を育むことに障害があるリスクが有意に低いことがわかりました。

これは、たまたまではなく、統計学的に意味のある差で、また、仲間関係を育む力に関係する因子を統計学的に取り除いていますので、妊娠中の母親のナッツ摂取は独立した因子であると考えられます。

◎ナッツ摂取について
これまで妊娠中のナッツ摂取と出生児の神経心理学的発達の関係についての研究は海外では実施されていました。

2208組の母子を対象としたスペインの出産前コホート研究で、妊娠初期の母親のナッツ摂取量が多いほど、1歳半、5歳、8歳の子どもの神経心理学的発達が促進されることが明らかにされています。

九州・沖縄母子保健研究で実施された過去の研究では、妊娠中の母親によるナッツ類の主要栄養素である一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸、葉酸、ビタミンB6、カルシウム、マグネシウムの摂取と出生児の5歳時点の仲間関係構築トラブルのリスクとは関係しませんでした。

このことは、特定の栄養素でなく、ナッツに含まれている栄養素全体の相互作用による影響が関与しているということが言えるかもしれません。

この研究でのナッツの平均摂取量は0.6g/日であり、調査時の日本人女性(30-39歳)の平均摂取量(1.5g/日)の半分でした。

ナッツを食べない母親がいた理由としては、日本人一般にナッツを食べる習慣がないことが考えられるとしています。

2022年に全国の20~60代4700人を対象に実施された調査によると、栄養や食生活への関心は高く、特に野菜摂取に対する意識は59.5%と高い一方、ナッツを積極的に摂取していると回答した人は13.2%程度にとどまっています。

ナッツ類の健康効果は、一般的には、それほど知られていないのかもしれません。

◎ナッツ含有栄養素と男女の生殖機能への影響
ナッツを習慣的に食べることは、男女の妊娠する力にどのような作用を及ぼすことが期待できるのでしょうか。

まず、ナッツ類にはオメガ3系脂肪酸が豊富にに含まれていることから、卵胞液やと精子細胞膜の脂肪の成分の組成を改善し、抗炎症作用を高め、卵子や精子の質の維持に寄与するのではないかと考えられます。

また、ナッツ類に含まれるセレンや亜鉛、ビタミンE、ポリフェノールなどは強力な抗酸化作用があり、卵胞液中の抗酸化力を高め、卵子の質の低下を予防し、良好胚の発育に寄与することが期待出来るかもしれません。

一方、精子細胞は精液中の酸化ストレスに非常に敏感であるため、抗酸化物質の濃度が高いと精子のDNA断片化(質の低下)が抑制されます。

さらに、ナッツに含まれるタンパク質と食物繊維は、有益な腸内細菌叢の形成や満腹感の増強、耐代謝の改善をもたらし、これらはすべて、ナッツの高カロリーにもかかわらず体重増加抑制に関連し、ナッツの硬い食感も満腹感シグナル伝達に寄与しているのではないかと考えられます。

最後にナッツによるインスリン感受性の向上は、卵巣機能低下の予防と関連しているはずです。


文献)
(1)J Pediatr Gastroenterol Nutr 07 March 2024 https://doi.org/10.1002/jpn3.12177

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

春を迎えるこれからの季節、積極的に緑の中で過ごしたいですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1083
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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