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VOL.1078 妊娠中の食生活と子のアレルギー発症リスク

2024年02月25日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1078            2024/2/25
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:妊娠中の食生活と子のアレルギー発症リスク
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


トピックス Jan. 2024________________________________________________

 妊娠中の食生活と子のアレルギー発症リスク
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まもなく、憂鬱な花粉症の季節がはじまりますが、子どもの花粉症も、年々、増加の一途をだどっているようです。

ロート製薬による「子どもの花粉症」に関するアンケート調査で、0~16歳の子どもを持つ親の約4割が自分の子どもは「花粉症と診断された」、もしくは「花粉症だと思う」と回答したことがわかりました。

また、それは、10年前に実施した調査に比べて約10ポイントも増えたそうです。

小児ぜんそくも同様にこの30年間で約4倍に増えているという調査結果があります。

子どものアレルギー増加の背景にはさまざまな要因が考えられますが、早ければ、生後数週間で発症することから、母親の胎内の環境、主に栄養環境に発症を引き起こす原因が存在するのではないかとも考えられています。

そのため、母親の妊娠中の食生活と子のアレルギーの発症との関連を調べた研究が各国で実施、継続されています。

◎ビタミンDと子のぜんそく発症リスク
ビタミンDは免疫の働きを整える作用があることから胎児の免疫システムが形成される妊娠初期のビタミンD摂取が鍵になるのではないかと考えられています。

アメリカ(1)とデンマーク(2)で妊娠中の女性のビタミンDのサプリメント補充による子のぜんそくの予防効果を調べた二重盲検プラセボ比較対照試験の結果が報告されています。

いずれの試験でもビタミンDのサプリメントを補充していたグループのほうが子のぜんそくの発症率は低かったものの、統計的に有意な差ではなく、妊娠中にビタミンDのサプリメントを補充することによって子のぜんそく発症リスクが低下するか、明確な結論を導くことはできていません。

ところが、別のアメリカの研究(3)では、ビタミンDをサプリメントで摂取してもぜんそくの発症リスクが変わらなかったのに、同じ量でも食事から摂取すると低下したとの報告がなされていましす。

論文の筆者は、ビタミンDを豊富に含む魚介類やキノコなどに含まれるビタミンD以外の成分との相乗作用によるものではないかと述べています。

まずは、食事から摂取し、そして、サプリメントで補充することが大切なようです。

◎オメガ3系脂肪酸と子のアレルギー疾患
オメガ3系脂肪酸やオメガ6系脂肪酸は体内で合成されないため食事からとる必要がある「必須脂肪酸」と言われています。

必須脂肪酸は生理活性物質になりますが、オメガ6系脂肪酸からつくられる生理活性物質はアレルギー症状促進に働き、反対にオメガ3系脂肪酸からつくられるそれはアレルギー症状を緩和します。そのため、オメガ6を過剰に摂取し、オメガ3が不足するとアレルギー体質が促進されると考えられています。

そのため、妊娠中のオメガ3脂肪酸の摂取と子のアレルギー発症リスクとの関連を調べた研究もこれまで多く実施されています。

今年になって、これまでの研究を総括し、評価した研究結果(4)が発表されました。

それによると、妊娠中にオメガ3系脂肪酸を多く摂取するほど子のアレルギー疾患の発症リスクが低下するかもしれないけれども、研究結果にばらつきもみられることから、明確な結論は下せないとしています。

◎食事パターンと子のアレルギー
個々の栄養素や食品の摂取との関連では、なかなか、明確なことは言えない一方で、妊娠中の食事パターンと子のアレルギー発症リスクの関連研究が数は少ないものの行われています。

大阪母子保健研究では妊娠中の野菜や果物、抗酸化物質の摂取と子のぜんそくやアトピーとの関連を調べています(5)。

それによると、妊娠中の緑黄色野菜や柑橘類の摂取はアトピー性皮膚炎の予防効果があるかもしれないとしています。

また、同じ大阪母子保健研究で、妊娠中の食事摂取パターンとぜんそくやアトピーとの関連を調べた研究(6)では、西洋型食事パターンに近いほどぜんそくの発症リスクが低かったとして、それはαリノレン酸(オメガ3系脂肪酸)やビタミンEによるものと考えられると結論づけています。

さらに、スペインの研究(7)では、妊娠中に地中海食に近い食事パターンほど子のぜんそくやアトピー性皮膚炎の発症リスクが低かったと報告しています。

◎偏りのない食事+マルチビタミンミネラルがポイント
子のアレルギー発症の原因は胎児期の子宮内の栄養環境以外にも遺伝的な要因や出生後の環境等、多岐に渡り、予防が可能なものと不可能なものがあり、母親になる女性の食生活だけで子のアレルギーを防ぐことは難しいのは当然のことです。

ただし、妊娠中の食生活は、子の出生前の栄養環境を100%決定するものです。

それによって子の体質が決定することが生活習慣病胎児期発症説でも証明されつつあります。

子の健全な成育に求められるのは必要とされる栄養素(5大栄養素)の不足や過剰がないことであることは間違いありません。

そのためには、まずは、偏りなく(バランスよく)食べること、それに加えて、予防的に、ビタミンDや葉酸、鉄、亜鉛などが適正量配合されたマルチビタミンミネラルを補充することがポイントになるのではないでしょうか。

文献
1)JAMA. 2016; 315: 362-370
2)JAMA. 2016; 315: 353-361
3)J Allergy Clin Immunol 2016 ARTICLE IN PRES
4)Am J Clin Nutr 2016; 103: 128-143
5)Allergy. 2010; 65: 758-765
6)Pediatr Allergy Immunol. 2011; 22: 734-741
7)Thrax 2008; 63: 507-513

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

花粉症の症状や程度は、年や季節によって異なり、試行錯誤することになってしまいますが、十分な睡眠時間と睡眠の質も大切ではないかと個人的には思います。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1078
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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◎発行部数
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