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VOL.1074 3時間以内の連続射精はICSI成績を改善する

2024年01月28日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1074            2024/1/28
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:3時間以内の連続射精はICSI成績を改善する
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Jan. 2024_________________________________________

 3時間以内の連続射精はICSI成績を改善する
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3時間以内の2回目射精は、乏精子症男性の精子の質を改善し、ICSI治療の胚盤胞到達率に良好な影響を及ぼすことが中国の研究で明らかになりました(1)。

禁欲期間が短いほど、精子数は減るけれども、精子の質がよくなるという研究報告はいくつもなされています。

ただ、ICSIで禁欲期間が短い、それも、3時間以内に連続して射精して得られた精子を注入したほうが、その後の胚発育や治療成績が改善されることがわかりました。

◎どんな研究だったのか?
乏精子症の男性患者のICSI治療で、採卵当日に採精(2〜10日の禁欲期間後)し、さらに、3時間以内に2回目の採精を行い、1回目の精子と2回目の精子の精液検査結果、精子の質をあらわす精子DNA断片化指数、そして、ICSI後の胚盤胞到達率や治療成績を同じ周期に採卵した卵子で比較しました。

◎どんな結果だったのか?
2回目射精のほうが精子運動率や正常形態率、精子DNA断片化指数が有意に改善されました。

また、良好胚盤胞率(24.79%対14.67%)、移植可能胚盤胞率(57.56%対48.44%)ともに2回目射精群で有意に高いことがわかりました。

さらに、臨床妊娠率(59.09%対47.37%)、着床率(42.11%対32.35%)、生児獲得率(40.91%対31.58%)は有意な差はありませんでしたが、2回目の精子を注入した卵子で高い傾向が認められました。

◎禁欲期間と精子の質
3日間の禁欲期間後に射精した精液に比べて、その後3時間後に射精した精液中のほうが精子の質が高いという研究結果がカナダから報告されています(2)。

マクギル大学医学部の研究で、射精間隔の精液所見や精子の質への影響が調べられています。

大学病院でパートナーが不妊治療を受ける112名の男性に初めての精液検査の際に3日間の禁欲後に射精した精液と、その3時間後に再度射精してもらった精液を提供してもらい、精液所見と精子の質の目安とされている精子DNA断片化指数(DFI)を比較したところ、射精間隔が3日間のDFIが34.6%だったのが射精間隔が3時間では23.7%に低下し、精子の質が有意に改善されることがわかったというのです。

また、DFIが35%を超え、精子の質が不良だった男性の55%は、3時間後の射精で基準内に改善されたとのこと。

一方、精液量は3.1mlから1.9mlに、精子濃度は4100万/mlから3200万/mlに、いずれも有意に低下しましたが、前進精子運動率は57%から60%に上昇していました。

さらに、年齢が若い男性ほど、また、抗酸化サプリメントを摂取していた男性ほど、射精間隔を短くすることによる改善効果が高いこともわかったそうです。

射精間隔を3日間から3時間に短くすることで精液量や精子濃度は低下するものの、精子の質をあらわすDFIや前進精子運動率は改善されるようです。

◎抗酸化サプリメント+射精間隔短縮
射精間隔を短くすることが精子の質に改善に有効です。

考えてみれば、射精間隔を短くすることは、なんの治療も、コストもかからないにもかかわらず、妊娠、出産に寄与してくれます。

また、抗酸化サプリメントを摂取することで射精間隔の短縮化の効果が高くなることも、明らかになっています。

特に、パートナーの女性だけでなく、男性も年齢が高い場合は、その効果はより顕著です。

パートナーの女性が時間と費用をかけて、頑張って通院し、よい卵子を採卵しても、なにもしていない男性の精子の質が悪く、受精しなかったり、胚発育にブレーキがかかってしまったら、こんな理不尽なことはありません。

なぜなら、卵子に比べて精子の質を改善するのは簡単だからです。

まず、男性は禁煙し、深酒をやめ、ストレスをマネジメントし、バランスのよい食生活心がけ、睡眠の質に留意し、適度な運動を行います。

それらはすべて精子DNAの損傷に関わります。

そして、抗酸化サプリメントを摂取し、射精の間隔を短くします。

これがART治療を受けているカプルの男性が「取り組むべきこと」です。

繰り返しますが、男性が取り組むべきことは、パートナーの女性に比べて、本当に簡単でコストがかかりません。

文献)
1)Front Endocrinol (Lausanne). 2023; 14: 1250663.
2)J Assist Reprod Genet 2021; 38: 227.

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

精子の質をよくするのに最も有効なのは、射精の間隔を短くするという、本当に簡単なことです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1074
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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・合計部数: 3,578部(1月28日現在)
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