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VOL.1069 低フォドマップ食は子宮内膜症の痛みを軽減し、QOLを改善する

2023年12月24日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1069            2023/12/24
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:低フォドマップ食は子宮内膜症の痛みを軽減し、QOLを改善する
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Dec. 2023_________________________________________

 低フォドマップ食は子宮内膜症の痛みを軽減し、QOLを改善する
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低フォドマップ食や子宮内膜症改善食は子宮内膜症の女性の痛みの軽減やQOL(生活の質)の改善に有効であることが、オランダのアムステルダム大学の前向き研究で明らかにされました(1)。

子宮内膜症とは、子宮内膜が子宮の内側以外の場所(卵巣や卵管、子宮の周囲の組織等)で発生し、発育する病気です。女性ホルモンの影響で月経周期に合わせて増殖し、月経時の血液が排出されずにプールされたり、周囲の組織と癒着をおこしてさまざまな「痛み」をもたらしたりし、「不妊症」の原因にもなります。

原因については諸説あり、よく分かっていません。治療はホルモン療法や手術がありますが、どの治療法を選択しても将来的に再発する頻度が高いことから長期間のケアが必要です。

そのため、セルフケアが重要ですが、これまでオランダで提唱された子宮内膜症改善食(子宮内膜症の症状を悪化させる食品を避ける食べ方)がありましたが、その有効性は明らかになっていませんでした。

そんな中、過敏性腸症候群(IBS)の食事療法として開発された「低フォドマップ(FODMAP)食」が、子宮内膜症の症状の軽減にも有効かもしれないとの報告がなされています。

そこで、アムステルダム大学の研究グループは、低フォドマップ食や子宮内膜症改善食の有効性を検証すべく前向き研究が実施されました。

◎どんな研究だったのか?
2021年4月~2022年12月にアムステルダム大学病院の子宮内膜症センターで、手術や画像診断で子宮内膜症と診断された女性62名に、低フォドマップ食、子宮内膜症改善食、食事療法は受けないのいずれかを選択してもらい、管理栄養士の指導のもと6ヶ月間、実施されました。

その後、すべての痛み症状(排尿痛、膨満感、疲労感を含む)や生活の質(アンケートによる)が比較されました。

◎どんな結果だったのか?
低フォドマップ食を選択したのは22名、子宮内膜症改善食は21名、そして、食事療法を受けないことを選択したのは19名でした。

6ヶ月後、研究開始前の痛みスコアと比較して、低フォドマップ食や子宮内膜症改善食を選択した女性は6つの症状のうち4つで痛みが軽減され、11の生活の質(QOL)領域のうち6つでスコアが改善されました。

このことから低フォドマップ食や子宮内膜症改善食は子宮内膜症に伴う痛みの軽減や生活の質を改善する可能性が示されました。

◎低フォドマップ食とは?
低フォドマップ食とは、その名前の通り、フォドマップを控えた食事のことで、フォドマップ(FODMAP)とは「小腸では吸収されにくい発酵性の糖質の総称」で、以下の頭文字を並べています。

F→ fermentable:発酵性の糖質
O → oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖)
D → disaccharides:二糖類(ラクトース)
M → monosaccharides:単糖類(フルクトース)     
P→ polyols:ポリオール(ソルビトール、マンニトール、イソマルト、キシリトール、グリセロール)

上記の食品を控えるということなのですが、発酵食品やオリゴ糖は腸内環境を整えるのによい食品とされていますので、それを控えると言われえると疑問に思われるかもしれません。私もそう思いました。

ところが、そもそも、低フォドマップ食は過敏性腸症候群の改善食として開発されたもので、その考え方は以下の通りです。

いくらよいとされている食品でも、過度に取り過ぎると腸が過敏になったり、腹部の膨満感や痛み、下痢、便秘などを引き起こすことがあります。また、吸収されずに長く腸内に留まって発酵し、多量のガスを発生させる原因にもなります。

そのため、腸に病気がないのに腹痛や下痢・便秘が続く過敏性腸症候群の方には、上記のフォドマップの摂り過ぎがよくない影響を与えると考えられ、腸のための食習慣として考えられたのが、フォドマップを多く含む食品を抑える「低フォドマップ食」ということです。

◎低フォドマップ食の取り組み方
それぞれのカテゴリーの具体的な食品は以下の通りです。

オリゴ糖:納豆、きな粉、ごぼう、玉ねぎ、えんどう豆、にんにく、豆腐、小麦など
二糖類:牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなど
単糖類:はちみつ、果物など
ポリオール:シュガーレス菓子、プルーン、イチジク、マッシュルームなど

まずは、3週間、上記の高フォドマップ食品を遠ざけます。

その後、控えた食品を1つずつ食べ始め、お腹の調子が悪くならない確かめ、自分に合う食品と合わない食品を選別し、その後は合わない食品は控え、バランスのよい食事を心がけるようにします。

◎子宮内膜症改善食とは?
一方、子宮内膜症改善食とは、子宮内膜症の女性が経験的に子宮内膜症の症状を悪化させる食品をピックアップし、それらを控える食べ方です。

以下の食品です。

・赤身肉/牛肉、豚肉、羊肉、羊肉、子牛肉、馬肉、レバー
・グルテン/小麦、ライ麦、スペルト小麦、大麦
・乳製品/牛乳、チーズ、乳清ベースのソフトドリンク、アイスクリームなどに含まれる糖分。
・砂糖/精製糖、天然糖(蜂蜜、メープルシロップ等)、人工甘味料(アスパルテーム)
・エストロゲンを多く含む栄養素/大豆、アマニ、ゴマ、黒豆
・カフェインの制限(最大1日200mg)/コーヒー、紅茶、カフェイン添加ドリンク等

◎健康によいとされる食品も過剰になるとマイナスになる
低フォドマップ食は、馴染みのない食べ方で、自分で取り組むのは難しいと思います。

そのため、子宮内膜症で痛いなどの症状を食事で改善したいと思われる方は、消化器内科で低フォドマップ食による食事療法を提唱されている先生に相談されるのがよいかもしれません。

いずれにしても、たとえ、健康的とされている食品でも、そればかり摂り過ぎるとマイナスになってしまうおそれがあります。

意識して食べている食品でも、その効果が実感できない場合は、意識的に食べることをやめてみてもよいかもしれません。

極端な食べ方は、かえって、マイナスになってしまうかもしれません。


文献)
1)Hum Reprod. 2023; 38: 2433

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

なにごとも過ぎたるは及ばざるが如しですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1069
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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・自社配信: 1,513部
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・合計部数: 3,582部(12月24現在)
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