メルマガ

VOL.1068 高い空腹時インスリンは要注意

2023年12月17日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.1068            2023/12/17
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:高い空腹時インスリンは要注意
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Dec. 2023_________________________________________

 高い空腹時インスリンは要注意
--------------------------------------------------------------------
女性の高い空腹時インスリンは不妊症リスクを増加させる可能性があることが、ノルウェー母子コホート研究のデータを用いた研究で示唆されました(1)。

インスリンは血糖値を下げるホルモンですので、遺伝的傾向や食生活や生活習慣などによる糖の代謝異常は、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)を招き、空腹時のインスリンが高値になります。

血糖値を急上昇させない食べ方や生活習慣が妊娠する力を低下させないポイントのなるはずです。

◎どんな研究だったのか?
耐糖能障害(空腹時の血糖値が高い状態・糖尿病予備軍)や心血管疾患リスク(脂質異常や高血圧)が不妊症に関係するかどうかを調べるための研究が、ノルウェー母子コホート研究のデータを用いてメンデルランダム化解析という研究手法で実施されました。

遺伝子型データが入手可能で、妊娠までに要した期間と体外受精を行なったかどうかの自己申告情報を提供した女性68 882人(平均年齢30歳、81 682件の妊娠に関与)とそのパートナー男性47 474人(平均年齢33歳、55 744件の妊娠)が対象とされました。

被験者カップルのうち12%が不妊症(12ヵ月以上妊娠を試みた、もしくは、妊娠するために体外受精を行なった)で、耐糖能障害や心血管疾患のリスクが高い遺伝子型と不妊症リスクとの関連が解析されました。

◎どんな結果だったのか?
女性では遺伝的な空腹時インスリン値の増加は、不妊症の増加と関連しました。一方、脂質や血圧は関連しませんでした。

この結果から、高い空腹時インスリン対策は女性の不妊リスクを低下させる可能性があることが明らかになりました。

◎糖代謝異常対策
糖尿病予備軍は妊娠しやすさの低下につながる可能性があるということになります。

そのため、空腹時血糖値が少し高めであれば、食生活と生活習慣を改善することで空腹時血糖値を下げることで妊娠する力を取り戻せるかもしれません。

また、そのことは、妊娠しやすさだけでなく、妊娠後の胎児の成育環境も改善されることになり、出生児の健康にもつながることになります。

空腹時高血糖は、もちろん、不妊症の原因であるということではありませんが、妊娠率低下のリスクファクターになり得ることがこれらの研究で示されたことになります。

そのため、妊娠を望まれるカップルにとって、空腹時高血糖や高血圧を招きにくいライフスタイルを心がけることが大切です。

製薬会社のノボノルディスクファーマは「高血糖を防ぐためのアクションプラン10」を推奨しています。

以下、サイトから抜粋します。

◎食事編
1)ベジタブルファースト
食事はまず野菜から。サラダや温野菜、野菜スティックがおすすめ。その後から 食べる糖質の吸収がゆっくりに。

2)糖質の重ね合いに注意
うどん+かやくご飯、パスタ+パンのような、糖質が主体のメニュー2 種を一度に食べるのは考えもの。野菜不足も心配。

3)食べ過ぎ、糖質の摂り過ぎに注意
目指すは「腹八分目」。糖質を控えめにしても、肉や揚げものなどから脂質をとり過ぎないように気をつけて。

4)食事は抜かない。夕食は早めに
欠食すると、次の食事で食後高血糖を起こしやすくなる。遅めの夕食は、寝ている間の高血糖と肥満のもと。

5)よくかんで、ゆっくり食べよう
満腹感が高まり過食が抑えられるとともに、かむことで腸からインスリン分泌 を促すホルモンが出てくる。

◎運動編
1)通勤時にひと駅分(20分程度)歩く
朝、ひと駅先まで歩くもよし、帰りにひと駅手前で降りて歩くもよし!

2)昼休みは「歩いて店へ→ランチ→歩いて会社へ」
ちょっと遠い店まで歩いて行ってランチを。帰りは自ずと"食後の運動"になる

3)「2up3down」までは階段へ
上りは2階分、下りは3階分までは、エスカレーターやエレベーターより階段で

4)出かけない日は掃除うあ片付けをがんばる
どこへも出かけない日は、家の掃除や模様替え、物置の整理整頓などにいそしんで!

5)歩数計をもとう(スマホの歩数計を見よう)
歩数計を身に着けるだけで「歩こう」というモチベーションが高まる

私たちには、血糖値や血圧などを適切な範囲内に維持する働きが備わっています。ホメオスタシス、日本語で言えば恒常性です。身体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず、身体の状態を一定に保つ働きのことです。

ところが、遺伝的な傾向や食べ方や不良な生活習慣によってホメオスタシスが追っつかなくなってしまている状態と考えられます。

あるいは、年齢によって、ホメオスタシスの働きが低下してしまいます。

そのため、年齢を重ねるにしたがって、食や身体活動のバランスを意識することは必須になります。

そのことによって、妊娠する力の低下を予防できるだけでなく、近い将来の生活習慣病の発症の予防、生活の質の維持や向上につながるはずです。

文献)
1)Hum Reprod 2023 Nov 8:dead234. doi: 10.1093/humrep/dead234. Online ahead of print.

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
-----------------------------------------------------------------------
東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

血糖値を急激に上げない食べ方や生活習慣が重要ですね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1068
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,512部
・まぐまぐ: 2,125部
・合計部数: 3,637部(12月17日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。