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VOL.1067 ナッツ類の習慣的な摂取は精子の質を改善する

2023年12月10日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1067            2023/12/10
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:ナッツ類の習慣的な摂取は精子の質を改善する
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Dec. 2023_________________________________________

  ナッツ類の習慣的な摂取は精子の質を改善する
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ナッツ類の習慣的な摂取は男性の精子の質の改善に寄与する可能性があることがオーストラリアのモナシュ大学の研究グループのシステマティックレビュー&メタ解析(1)で明らかになりました。

アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオなどのナッツ類は、よい「油」として知られるオメガ3系脂肪酸をはじめ、ビタミンやミネラル、ポリフェノール、良質な植物性タンパク質、そして、食物繊維が豊富に含まれていることから、さまざまな健康効果が多くの研究で確かめられています。

生殖機能も例外ではないようで、男性の精子の質を改善することに寄与する可能性があることがシステマティックレビュー&メタ解析という研究手法により確かめられました。

◎どのような研究だったのか?
オーストラリアのモナシュ大学の研究グループは、ナッツ類の習慣的な摂取が生殖機能にどのような影響を及ぼすのかを調査すべく、システマティックレビュー&メタ解析を実施しました。

メタ解析とは同じ目的で実施された過去の複数の研究結果を統合するための統計解析のことです。

一つの研究よりも、複数の研究のほうが被験者数が多くなり、結果をより正確に評価することが出来るのではないかと考えられ、実施されている研究手法です。

今回、生殖年齢(18~49歳)にあるヒトを対象とした介入研究、もしくは観察研究で、食事からのナッツ摂取(最低3ヵ月)が妊孕能に及ぼす影響(または関連)を評価した論文を対象としました。

875人(男性646人、女性229人)が参加した4件の研究が抽出され、メタ解析が実施されました。

◎どんな結果だったのか?
健常男性を対象とした2件の無作為化比較対照試験(被験者数:223名)のメタアナリシスで、1日当たり60g以上のナッツの摂取は、対照グループと比較して精子運動率、精子生存率、正常精子形態率を増加させることがわかりました。

ただし、精子濃度には影響を及ぼしませんでした。

このことからナッツ類の習慣的な摂取は、精子の質の改善に寄与する可能性があることがわかりました。

◎ナッツにはどんな作用が期待できるのか?
ナッツを習慣的に食べることは、男女の妊娠する力にどのような作用を及ぼすことが期待できるのでしょうか。

この研究グループでは、次のような仮説を示しています。

まず、ナッツ類にはオメガ3系脂肪酸が豊富にに含まれていることから、卵胞液やと精子細胞膜の脂肪の成分の組成を改善し、抗炎症作用を高め、卵子や精子の質の維持に寄与するのではないかと考えています。

また、ナッツ類に含まれるセレンや亜鉛、ビタミンE、ポリフェノールなどは強力な抗酸化作用があり、卵胞液中の抗酸化力を高め、卵子の質の低下を予防し、良好胚の発育に寄与することが期待出来るかもしれない。

一方、精子細胞は精液中の酸化ストレスに非常に敏感であるため、抗酸化物質の濃度が高いと精子のDNA断片化(質の低下)が抑制されるというのです。

さらに、ナッツに含まれるタンパク質と食物繊維は、有益な腸内細菌叢の形成や満腹感の増強、耐代謝の改善をもたらし、これらはすべて、ナッツの高カロリーにもかかわらず体重増加抑制に関連し、ナッツの硬い食感も満腹感シグナル伝達に寄与しているのではないかとしています。

最後にナッツによるインスリン感受性の向上は、卵巣機能低下の予防と関連していることが考えられるとしています。

◎1日にどれくらいの量がよいのか?
この研究で有効だったナッツ類の摂取量は1日60グラム以上とされています。

具体的にはくるみが30グラム、アーモンドが15グラム、ヘーゼルナッツが15グラムで、くるみの30gは、粒の大きさにもよりますが、だいたい、10-12粒、アーモンドの15gは、だいたい、15粒、ヘーゼルナッツの15gは、だいたい、10粒のようです。

研究は海外で欧米人を対象にしていますので、日本人にとっての適量はもう少し、少ないはずです。

ナッツは食べ過ぎても、当然、よくないはずですので、難しいところですが、摂取カロリーから考えてみます。

厚生労働省によると1日に200kcal程度の間食が適量とされています。間食とは、朝・昼・夕の3食以外に食べるエネルギー源のことです。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-013.html

間食はナッツだけではないことを考え、ナッツの習慣的な摂取量を1日に100~150kcal程度と考えるのが無難かもしれません。

アーモンドで20~25粒、くるみで4~6粒、カシューナッツで12~18粒、ピスタチオでは25~35粒とされています。

ざっくりと片手の手のひらにのるくらいの量です。


文献)
1)Adv Nutr . 2023; 15: 100153.

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

毎朝、アーモンドやくるみ等をヨーグルトに混ぜると習慣的に食べることが出来るのでお勧めです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1067
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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◎発行部数
・自社配信: 1,510部
・まぐまぐ: 2,132部
・合計部数: 3,642部(12月10日現在)
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